第13話 大群襲来の予兆
はじめヤメミア視点(あの口喧嘩の仲裁役の冒険者ね)で、◇ ◇ ◇の後から浴衣の1人称に戻ります。
[side:ヤメミア]
バヨエインの街を出発して、約一時間歩く場所。
そこが、私の主な活動場所だ。
私には、一つのユニークスキルがある。
それは超広域詳細探知というスキルだ。
このユニークスキルのお陰で、私は魔物の種類、強さ、自分の居場所からの距離と方位といったあらゆる情報を、広範囲に渡って取得できる。
それを利用し、最も効率の良いルートで日々狩りを行うことで、上位の冒険者へと上り詰めていったのだ。
酷い代償付きである場合が多い戦闘用ユニークスキルではなく、補助用のユニークスキルを持つことができたのは、却って気軽に多用できてありがたいことだと思っている。
私の戦闘面での実力は、まだBランク中位といったところ。
それでも、情報収集力のおかげで高ランク冒険者の臨時パーティー招集によく誘われることもあり、何とかAランクへの昇格が認められたのだ。
さあ、今日もしっかりと探知して、狩りに出ようか。
そう思ったのだが──。
「……な、何あの魔物の大群……。あれって、ヒョッとして……」
そう。
今日の探知で見つかったのは、異常な密度の魔物の群れだったのだ。
しかも、バヨエインの街は、ちょうど魔物たちの進行方向にある。
……これは、ここで狩りなんてしている場合ではないな。
急いで街に戻り、このことをギルドに知らせなくては。
◇ ◇ ◇
俺はロイゼンとヤメミアさんと一緒に、冒険者ギルドへと来ていた。
ロイゼンは旅立とうとしていたところだったが、ヤメミアさんがスタンピードの予兆を探知したとのことで、「ならここで帰るわけにはいきませんね……」という流れになったのだ。
ギルドに入るなりヤメミアさんは支部長を呼び出し、受付の人もそれにすぐ応じた。
詳しい話は、これから行われるそうだ。
「支部長、バヨエインの街から北に徒歩四時間くらいの地点に、魔物の大群が現れました」
「なんと……」
ヤメミアの話を聞いて、支部長は大きくため息をついた。
「ヤメミアが言うのであれば、それは『見間違えは絶対にありえない』ということ。どうやら、本気で腹をくくらねばならぬみたいじゃな……」
支部長は頭を抱える。
そんな中、次に声をあげたのはロイゼンだった。
「して、その大群がやってくるまでには何日かかる見込みだ?」
「魔物たちの目的が不明だから正確なことは言えないけど……最短なら、今日中にはここにたどり着いてしまうわ」
ヤメミアさんはここで一息つき、支部長に向かい会った。
そして、とんでもないことを言い出した。
「支部長。彼ら……ユカタとロイゼンに、特別依頼を出すことは可能ですか? 依頼内容は、魔物の大群の偵察。ついでに殲滅で」
一瞬、耳を疑った。
えーと……偵察の、ついでに殲滅?
『ついで』の規模がおかしくはないだろうか。
だが、支部長の考えは違ったようだ。
「当然じゃ。ただ……高等妖兵の水晶玉の件がある以上、相応の報酬を出すのは難しいかもしれん」
なんと。
この支部長、このとんでもない依頼内容を全肯定してしまったではないか。
相応の報酬が出せない、というのは、まあギルドの予算の問題だろうな。
俺は決して「報酬は少なくても、みんなを守るために働くんだ!」とか言い出す偽善者タイプの人間ではない。
しかし、自分の懐が温かいにも関わらず、報酬の安さを理由に人々を見捨てるほどアパシーなわけでもない。
だから、依頼に協力するのは全然構わない。
しかし、だ。
それを差し引いても、殲滅となると荷が重すぎるのではないか。
今まで、俺が主な戦場としてきたのは特殊空間。そうでなくても、敵(あるいは災害)は空中に浮かんでいた。
だから、周囲への被害は一切考えず、ただ単に大魔法をぶっ放せばよかったのだ。
これが地上の、それも多数の敵が相手となると、話は大きく変わってくる。
なんせ、俺の魔法はレベル一の時ですら海を蒸発させてしまうような代物だ。
もし魔物が広範囲に広がっていて、それを全部カバーする規模の魔法を撃ち込むとしたら──うん。本末転倒なくらいの迷惑が、あちこちにかかる未来しか見えない。
だが、支部長たちは話をどんどん進めていく。
「ロイゼン、ユカタ。お主たち、この依頼を受けては貰えぬか」
そして、
「いいでしょう。事態が事態のようなので、今すぐにでも行きます。報酬内容は、その間にでも考えておいてください」
……うん。
ロイゼンなら、そんなことを言う気がした。
まあ、しょうがないか。
土地条件なんかによっては、大魔法を撃てないと決まったわけじゃないんだ。
一点だけ確認しておいて、行くだけ行ってみるとするか。
「依頼失敗の際罰金が発生しないなら、俺も行くっす」
「こんな緊急事態で依頼に罰金をつける馬鹿なんぞ、支部長を即刻クビじゃわい」
……大丈夫なようだな。
「てなわけで、行くぞ、プヨン」
「よーし、がんばるぞー」
ひとまず安心した俺はギルドを出て、神剣を持つ手に力を込めた。





