↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20年後に会った元カノ、昨日別れた元彼。  作者: 逢坂 遥
第二章 八月 得恋と失恋
29/77

029_夏祭り 3

夏祭り編最後。今回は翔視点。

 「翔~っ!」

「おー、遅かったな……あれなんで佐藤とコースケがいるんだよ」

 未羽がりんご飴を買いに行ってからかなり時間が経っている。

 俺は、もうすっかり冷めてしまった焼きそばを啜っている。


 「なんでお前は女一人で買い物に行かせるんだよ」

 コースケの、元々低く重みのある声をさらに1オクターブほど下がった声に震え上がりそうになった。


 「未羽ちゃん、コースケみたいの4人にナンパされかけてたんだぞ」

 「あ、でも大丈夫だった、佐藤先輩とコースケ先輩いたからっ」


 マジかよ。

 確かに未羽みたいな可愛い女の子ひとりで行かせてしまったのは無責任だった。

 焼きそばを食べるのをやめ、立ち上がった。


 「ごめん」


 謝ってから、俺は未羽の頭に手をおいた。何回も。

 柔らかい髪に触れるだけで心臓がうるさくなる。

 頭ポンポンしてみたかったとかいう下心もないことはないけど。


 佐藤たちは吐き捨てるように、お幸せに、とか言って人ごみへ吸い込まれていった。


 いつまで続けていていいのだろうか。あんまりやりすぎるとうざいよな……。


 「飴なめよっか」

 と言って俺は座った。隣に座るように促し、未羽も並んでちょこんと座った。

 

 俺はおしゃべりか無口かで言えば、無口だと言いきれる。

 それでも今日は、途切れ途切れにはなりながらも日が沈む頃まで話し続けていたらしい。


 今まで、恋愛に関する話は一切出てこなかった。というか、意図的に避けていた。


 しかし、未羽は聞いた。

 「好きな人、いるんですか」


 目をそらしてしまった。顔が赤くなっているのは、あらゆるものが赤や黄色に染まるこの時間帯のせいに出来ないだろうか。


 俺の目は泳ぐ。

 「あーっ、いるんだ」

「いや、別に」

「綾さん?」

「下倉ではない」

 やっぱり下倉だと思われちゃうのかなぁ。はぁ。


 「み、未羽はどうなんだよ」

 話を無理やり未羽の方にねじ曲げた。


 「えー、まあ、いるけどっ」


 は、ははは……。

 告白計画台無しだな。ていうか仮関係もやめたほうがいいのかもしれないな、マジで。


 「そ、そうなんだ、仲良いデスか?」

「んー、まあ仲良い方じゃないかなっ」

「デートとかあ、ああるんですか」

 自分でも噛んだり片言になったり動揺が隠せていないのが分かる。ああ俺バレバレだな。敗北。


 「まあ、夏休み入ってから、してる」


 俺の今の顔を端的に表すと、ムンクの叫び、あの絵の表情そのままだ。

 

 「そいつかっこいい?」

「うん、超イケメンっ」

「知り合ったのいつ?」

「高校入ったタイミングで」

「好きなところは?」

「えーっ、どこだろうなぁ」


 未羽は誰かさんを思いながら少しにやけている。ええ。こんなことあるのかよ。


 「ハハ、ソウデスヨネ」

 何かを通り越して俺は無になりかけている。目の焦点があっていない。


 綺麗な夕暮れになってから日が沈むのはあっという間。もう暗くなり始め、花火が打ちあがるのもあと僅か。

 こ、こんな気分になるとは思ってもいなかったなぁ。太陽が見えなくなった空の色よりも濃いブルー。

 

 「もうすぐ花火あがるねっ」

「ソ、ソウデスネ」

 魂が抜けている。未羽にバレてるだろうなとは思う。もう隠しても無駄だ。

 とはいえ、この場で好きだと叫ぶような勇気は持ち合わせていないがな。


 「私さ、誰とでも遊びに行ったりはしないよ」


 俺の浴衣の裾をつままれた。こういう行動にいちいちキュンとしてしまう自分が馬鹿馬鹿しい。


 「花火なんか……好きな人としか観に行かないからっ」


 俺は未羽の言っている言葉の意味が理解できなかった。


 「きっ、期待してたんだけどなぁ、ちょっと」


 花火が打ちあがったことに音で気づいた。しかし俺も未羽も花火なんか見てはいなかった。


 2発目があがった頃だ。それが合図になったのか、それともお互いの本能か分からない。


 空中で花火が弾けるのと同時。


 俺の唇を、未羽のそれに触れさせた。


 体感時間は、永遠にも、一瞬にも思えた。


 花火の綺麗な光が未羽の顔を照らす。

 「ちゃんと言ってよ、花火で誤魔化すの禁止ねっ」


 「好き」


 「……やっと言ってくれたねっ」

 未羽は笑う。まさか。まさかまさかまさか。

 

 「言ったから返事しろよ」

 「これでゴメンナサイだったら?」

「ちょっとあそこの高台から川に頭から飛び込んでくるわ」

 それはない。マジで死んでくるぞ?

 

 「てか、好きなのは分かったけど……それ『ありがとう』しか言えないんだけど」

「あ゛ーーーー!!!」

 花火が一段落したが俺の顔は赤いままだ。


 「付き合って下さい」


 ほとんど投げやりな口調だった。こんな真剣なシーンでも振り回す未羽って一体。


 「……はい」

 

 今度はぎゅっと抱きしめた。未羽の、細い細い身体を。


 「今日花火まだちゃんと見てないよね」

「だな」

「見よっか」


 ずっとくっついていたかったような気もするけど、とりあえず花火を見ることにした。


 赤、青、緑、橙、白。綺麗。

 だけどやっぱり隣の人にそわそわしてしまう。


 手を繋ぎたかった。でも繋ぎ方が分からなかった。


 「不器用だねっ」

「今の段階で慣れてるよりはいいだろ」

「ピュアだね~っ」


 「彼女いない歴17年を馬鹿にしてるのか??」

「ごめんごめんっ」

「未羽こそあるのかよ」

「……正直に言えば、中学の時」

「ふぅん」


 平然を装っているが、少しだけ残念だった。過去は変えられないからしょうがないし、隠される方が嫌だから良いんだけどさ。


 結局未羽の方から俺の手に指を絡めてくれた。

 そのまま、夜空の花火を見ては綺麗だねと呟いた。

 そのうちの6割くらいは、未羽の瞳経由で見ていたわけだが。


 この後、30分は打ち上げていたはずなのに、一瞬で終わってしまったような気がする。


 俺らは元来た道を歩いていく。

 今日来たときと違うのは、俺が未羽と手をつないでいることだ。

お読みいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。


次回予告☞要約しづらい内容……。詳しく言うとネタバレになるし。

とりあえず綾視点の話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。