028_夏祭り 2 【未羽目線】
前回の続き。
夏祭り編は次回で終わります。
「あれぇ~一人?俺らとフィーバーしよー??」
これナンパ?シメられるの?……って囲まれちゃったし!
恐怖で膝が震える。
誰か助けて、と心の中で叫んだ。でも声に出したら本当に殺されそうで何も出来ない。
「あれ?未羽ちゃん?」
イケメンボイスが私を呼ぶ。
通りかかった救世主は佐藤先輩だ。
そういえば佐藤先輩、声はめちゃくちゃイケメンなんだよな。声優並みに。
「は?このクソダサメガネの連れ?」
クソダサメガネ、酷いネーミングたとは思ったけど的確と言えば的確で笑ってしまいそうになる。
「こいつより俺らといた方が楽しいって~」
唾飛んできた。キモい。怖い。
「未羽ちゃんの相手俺じゃつとまらないって。ただ通りかかっただけ」
彼らの攻撃の矛先が佐藤先輩に向かいそうになる。
私にはどうしようも出来ないのが虚しい。
「あ゛??連れが迷惑かけてんのか??」
現れたのは、この男4人に引けをとらない程度にデカくてムキムキな人。上腕二頭筋が逞しい。
え、なに、この4人のボス?
4人はそのムキムキ男を目にした途端に怯んだ。
「チッ、一人でさみしそーだったから相手してやろーとおもったのによォ」
4人が退散した。
助かった。
そしてこのムキムキ誰?
「コースケさっすが~」
「お前が、未羽?」
自分より30センチ近く高そうな『コースケ』と呼ばれた人を見上げる。ドスのきいた声で、下の名前で呼ばれるのに果てしない違和感を感じた。
「そそっそそそそうですっっ!!!」
「コースケ、ビビらせてんぞ」
「お、俺こわくないよ~っ♡」
どうやら中身はヤバい人ではなさそうだ。佐藤先輩の友達、らしいし。
「えーと、こいつは松井 広祐。見た目ヤバいけど、中身は普通……ではないか。変人って意味ではヤバいけどさ、そんなヤクザとか不良とかじゃないぜ」
「よ、よろしくお願いしますっ」
「ほらー未羽ちゃん可愛いだろ」
「だねぇ」
彼らは孫に久しぶりに会った祖父母のように目を細めている。
そうだ、まだりんご飴の列にすら並べていない。
「じゃありんご飴買ってきますねっ」
「俺らもついてくよ、またさっきみたいになったら嫌だろ」
その威圧的な声質に似合わぬ優しい言動。
「コースケがいれば誰も寄ってこないよな」
「なんかあったとしても、俺さー人とか重い物を投げとばす能力に関してはこの会場にいる人の中で1番2番の自信あるぜ」
聞けば、彼は柔道有段者かつ陸上部で砲丸投げは県大会で入賞しているという。
「それより未羽ちゃん、今日は誰と来たの?」
「翔……先輩」
翔、なんて言ったら絶対怪しまれるに違いない。
「「デート?デート??」」
男女で遊ぶことについて異常な興味を示すあたり佐藤先輩もコースケ先輩も中学生とかとも大差ないよね、と内心思ってしまった。
「んん~、そうなのかな」
付き合ってないからデートじゃない気もするし、男女2人きりだからデートな気もする。
「ね、これどっちから誘ったの?」
「たぶん、翔」
「翔め……」
佐藤先輩が言えばただ嫉妬しているだけに見えるはずのセリフも、コースケ先輩が言うとそれこそ翔を殺しかねないように聞こえる。
「てかさ、名前呼び捨て?」
うぎゃっ。失言。
「あの、そのー、えっと」
「付き合ってるなら先輩後輩あんま関係ないんじゃね?」
「ああー、そっか」
彼らは勝手に納得してくれた。
「いつから『仮』やめたの?」
え、仮で付き合ってたの知ってたの?
まあ、仲良い人くらいには言うもんなのか。
「……今も仮、だよ」
現実を見させられた感じがして、事実なのに言うのが嫌だった。
少しだけ声のトーンが落ちているなと自覚する。
彼らは意外そうに少しだけ目を見開いてから
「未羽ちゃんは翔のこと……」
なんとなく聞きたいことは想像出来た。
「秘密ですっ」
少し顔がにやけてしまったかもしれない。バレたかな?
さらに追求されそうではあったが、ここでりんご飴販売の列の先頭にきた。
「りんご飴2つ!」
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次回予告☞夏祭り編最後!花火!




