第2話 センターの隣
数日後。
新曲のフォーメーション発表があった。
16人が鏡の前に並ぶ。
先生が一人ずつ立ち位置を指定していく。
「大山、中央」
「はい」
「松崎、右」
「はい」
私は自分の順番を待った。
そして――。
「中条、ここ」
先生が指差した。
「……え?」
そこは、センターのすぐ隣だった。
「私ですか?」
「そう」
胸がドキッとした。
センターの隣。
今までよりずっと目立つ位置だ。
嬉しい。
ものすごく嬉しい。
でも、その瞬間、別の気持ちも湧いてきた。
――目立たなきゃ。
センターの隣なんだから。
「よし……!」
私は拳を握った。
その日のリハーサル。
私は張り切った。
腕を大きく振る。
足を高く上げる。
ターンも大きく。
笑顔も全開。
「もう一回!」
先生の声。
もう一度。
さらに大きく。
そして曲が終わった。
先生がこちらを見る。
「中条」
「はい!」
「ちょっと頑張りすぎ」
「……え?」
「センターの隣だから目立たなきゃ、って思ってない?」
図星だった。
「……ちょっとだけ」
「その気持ちは分かる。でも、16人で踊ってるんだから」
先生は鏡を指差した。
「みんなが見えてる?」
私は鏡を見る。
16人が並んでいる。
それぞれの動きがある。
大山さんは全体を見ながら踊っている。
松崎さんは丁寧に振りを合わせている。
梅津さんは力強い。
春日さんは柔らかい。
瀬波さんは動きが正確だ。
木崎さんは一生懸命ついてきている。
私は自分ばかり見ていた。
「もう一度やろう」
先生が言った。
今度は、隣を見る。
自分が目立つことより、隣の人と動きを合わせる。
16人が一緒に動く。
音楽が終わる。
「今のほうがいい」
先生が頷いた。
私は息を吐いた。
センターの隣。
そこは、自分一人で輝く場所じゃない。
16人をつなぐ場所なのかもしれない。
レッスン後、私は大山さんに聞いてみた。
「大山さんって、センターにいるとき、何考えてるんですか?」
「私?」
「はい」
大山さんは少し考えた。
「みんなのことを見てるかな」
「自分じゃなくて?」
「もちろん自分も見るよ。でも、16人でステージに立ってるから」
そう言って、鏡を見る。
「一人だけ上手くても、グループにはならないでしょ?」
「……なるほど」
「みなみは、みなみらしく動けばいい。ただ、周りも見られるようになったら、もっと強くなるよ」
私は頷いた。
「分かりました!」
「その返事は元気だね」
「元気担当ですから!」
二人で笑った。
少しだけ、意味が変わった気がした。




