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1章26話『炭鉱夫』

「それじゃあ一回寮に戻って、ゼロが回復してから素材集めと行くか」


 ゼロは申し訳なさそうに「ごめん」と呟いた。


「気にすることねぇよ、どうせこの借りは返してくれるんだろ?」


 ゼロはフッと小さく笑って


「当たり前でしょ」


 と言いながら、髪をくるくるいじり始めた。


「あぁ、そうだ。レインボージュエルを採取するには許可証がいるんだ。ラピセロさんの所に申請しに――――」


「いや、ギルドマスターに直接言いに行こう」


 ティリタは驚きと困惑を同時に見せた。


「今回の一件、アオイさんに伝えたほうがいい。許可証ついでに、報告しに行こう」


 が、俺にはもう1つ目的があった。


「それに……確認したいこともある」


 ティリタは「わかった」とだけ言ってくれた。


 その後俺達は歩いて寮に戻った。

 ゼロもなんとか歩けるくらいには回復していたため、時間はかかったが寮にたどり着いた。


 その後、ティリタはゼロの回復に専念する。

 ベッドに横たわったゼロの体は薄い緑色に光っていた。


「どうだ?」


「まだ体内に光幻素が残っている。これが継続的にゼロのHPを削っていたんだ」


 ベルダーの魔法は体内に幻素が残るほどの威力があるのか。


「あとどれくらいかかる?」


「治療自体はすぐ終わるけど、ゼロは安静にしていたほうがいいだろう。アオイさんの所には、僕達2人で行こう」


「…………いや、俺1人で大丈夫だ。ゼロについてやってくれ」


「わかった。失礼のないようにね」


 俺は頷き、部屋を出た。


 エスクードさんにその旨と今回の一件を告げると、彼女はすぐにアオイさんに連絡を取ってくれた。


「ちょうど今空いてるから来ていいって。さっきの話、一刻も早く伝えてあげて」


「ありがとうございます」


 俺はアオイさんの下へ急いだ。


 コンコンと2回扉をノックし、ゆっくりと開けた。


「失礼します」


「グレンさん、ごきげんよう。エスクードさんからお話は聞いております」


 アオイさんは読んでいた本を閉じて机の上に置き、前の大きなテーブルに出てきた。


「どうぞおかけください」と促された俺はそのまま椅子に座る。同時にアオイさんも反対側の椅子に座った。


「それで、どうしても私に伝えなければいけないこととは?」


 俺は一度心を落ち着かせ、

 ベルダーのこと、ベルダーに負けたということ、そして『彗星』のことを全てアオイさんに伝えた。


「なるほど……そんな事があったのですね」


 アオイさんは終始白い本に何かを書き込みながら俺の話を聞いていた。

 内容をメモしているのだろうか。


「とにかく、今許可証を発行しますので少々お待ちください」


 アオイさんは引き出しから1枚の紙を取り出し、名前を書いた。


「レインボージュエルを採取した後、この許可証とレインボージュエルを持ってマスターズギルドに向かってください」


 俺は許可証を受け取った後、もう一つの目的を果たした。


「時にアオイさん…………あなたにとって、生命とは何ですか?」


 アオイさんはしばらく悩んだ末、答えを出した。


「『本』、でしょうか……」














「ティリタ、許可証貰ってきたぞ」


 俺はティリタの机の上に許可証を置く。


「ありがとう。これでレインボージュエルを採取できる」


「具体的にどこで採るんだ?」


「キングスポートの北の丘が一番レインボージュエルの質がいい。そこに向かうつもり」


 キングスポートは何かと自然資源が多い。

 漁業が最も盛んな街だが、他の第一次産業も活きている。


「明日あたり行こうか。モンスターの素材もいるから、そっちの準備もいるし」


「そうだな、そうしよう」


 そういえば、『彗星』を作るのに必要なモンスターの素材って、何のモンスターなんだ?


 ふと気になって、ティリタに聞いてみた。


「なぁ、『彗星』を作るのにレインボージュエルが必要なのはわかったけど、他に必要なモンスターの素材って、一体何なんだ?」


「うーん…………まだ秘密にしておこうかな」


 秘密?なんで?


「とにかく、明日は重労働になる。明日に備えて体を休めよう」


 鉱石掘るんだもんな。

 ツルハシぶっ放してるだけでもかなり疲れるだろう。腰もやりそうだし。


「で、ゼロは大丈夫なのか?」


 そういえばゼロの姿が見えない。


「もう大丈夫だと思うよ。部屋で寝てると思う」


「そうか……ならいいんだ」


 いらぬ心配だとはわかっていたが、やはり気になってしまうものだ。













 次の日、早朝から俺達はツルハシを振っていた。

 キングスポートの北の丘に今は使われてない採鉱所があって、そこでもレインボージュエルは出るはずだし、貸し切りになるから、ここに入ろうと提案した。


 しかし、現実はそんなに甘くはない。


「だーーっ!!」


 俺は体を後ろに反らせて叫んだ。

 俺の叫び声は辺りに反響して山びこのようになった。


 それにしても全ッ然出ねぇ!

 え、こんなに出ないの!?


「2人とも、そっちはどうだ」


 遠くの方で掘っているゼロは、


「石炭と鉄しか出てこないわ」


 同じく遠くで掘っているティリタも、


「僕も全然ダメ。掘り方を間違えているのかな?」


 掘り方か。確かに考えてなかったな。

 今までは横にずっと掘っている感じだったが、試しに少し傾斜をつけてみよう。


 俺はPOWは致命的に低いが、逆にSTRはアホみたいに高い。

 採鉱をしている以上ツルハシは武器ではなく道具という判定なので、デメリットは発動しない。

 よって、一気にエゲツない範囲掘れる。


「そらよっと!」


 俺がツルハシを振り下ろすと、石の壁が一気に削り取られた。

 砂煙が上がり、ガラガラッという音と共に空間が現れた。


「ちったぁ斜めになったか?」


 反動で尻もちをつく。

 ちなみにだいたい3m先くらいまで掘れたが、レインボージュエルは出てこない。


「にしても暗いな…………」


 砂煙立ってるけど、さすがに粉塵爆発とかしないよな?粉の石炭とか混ざってないよな?

 俺は壊れたツルハシの柄の部分に小さめの石炭をくくりつけ、壁に設置した。


 そして右手に手袋をはめ、力を込めた。


「フレイム!」


 俺はフレイムを放たず、手の上に維持させた。

 最近覚えた技術だ。

 俺は壁に設置した棒もとい松明にフレイムを近づけ、火をつけた。


「これでマシになっただろ」


 そう思っていた矢先、あることが起きた。

 この時の俺は本当にツイていた。


 フレイムが消えかけていたからもう一度撃つ。

 その発動の瞬間にそれは発生した。


「今……なんか光ったか?」


 石の壁の中に一瞬、赤く光る点をみた。

 特に確証はなかったが、壁を掘ってみると、


「…………これは」


 俺はそれを持って来た道を戻っていった。


「2人とも!あったぞ!」


 俺の手には7色に輝く宝石があった。


 ゼロとティリタはすぐに駆け寄ってきた。


「ほら、これ見ろよ」


「あっ、ホントだ………………いや」


 ティリタが申し訳なさそうに言った。


「これはレインボージュエルのなりかけ。この透明な部分に本来は光幻素が溜まっている」


 確かにティリタの言う通り、他の属性を思わせる色は全て存在するのに、光だけがなかった。


「そっか……残念ね」


 ゼロはそう言って宝石を手にした。


 すると、


「熱っ!」


 ゼロが手を瞬時に放した。

 俺が反射的に宝石を見ると、そこには本当の7色で輝くレインボージュエルがあった。


「…………そうか!ゼロの体内には光幻素が残っていたんだ!それが宝石に流れて、足りない部分を補ったんだ!」


 これで正真正銘、レインボージュエルになったわけだ。


「いや〜長かった」


 俺はその場に座り込む。


「あとはモンスターを狩るだけね」


 ゼロがそう言ったので、俺は改めて聞いた。


「結局、俺達が狩るべきモンスターってなんなんだ?」


 ティリタは少しもったいぶっていたが、その名を言った。


「アルコン」

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