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3.聞こえてきたすすり泣き


 俺は今、『リア充』である!

 

 真夜中の公園の中を、彼女と仲良く手をつなぎながら歩いているのだから、そう胸を張ってもおかしくない。

 

「ははは! 楽しいなぁ!」


 先ほどまでの恐怖など、まるでなかったかのように明るくふるまう俺を見た佳鈴は、最初は不思議そうな顔をしていたが、すぐに屈託のない笑顔に変わった。

 

「ははは、裕輝は頼もしいね!」


「おう! 今の俺はなんにも怖くない!」


 強がりでもなんでもなく、本心からそう思っていた。

 

 幽霊でもなんでもこい!

 俺が佳鈴を守るんだ!

 まぎれもなく俺は『ヒーロー』なんだ。

 

 ……と、痛々しいほど調子に乗っていたわけだ。

 

 しかし、それは突然聞こえてきたんだ――。



 

 

「ううっ……。ひっく、ひっく」


 

 誰かがすすり泣く声……。

 

 俺たちはピタリと足を止めて、顔を見合わせた。

 

「ね、ねえ、今聞こえたよね……?」


「ああ……」


 佳鈴が顔を青くしている。

 きっと俺の顔色は青を通り越して、灰のように真っ白になっているに違いない。

 だが、それで終わらなかった。

 


――ガサガサッ!



「今、なにか音しなかった?」


 確かになにかが地面を這うような音がしたような気がした。

 その次の瞬間。

 

――ガサガサッ!


 再び音がした。

 しかも今回はすぐそばで!

 

「きゃっ!」


 佳鈴が飛び跳ねて俺に抱きつく。

 柔らかな彼女の感触に、思わず鼻の下が伸びてしまったのは内緒だ。

 

「下! 下になにかいる!」


 佳鈴が青い顔をしながらそう言った。


「下……」


 ゴクリと唾を飲み込みながら、俺は視線をゆっくりと下へ向けていった。

 黒い木々から徐々に湿った土が視界に入っていく……。

 そうしてついに地面だけが目に映ったその時だった――。

 

 なんと白い服をきたナニかが、四つん這いになっていたのである!

 

「ううっ……。ひっく、ひっく……」


 しかもすすり泣いているではないか!!

 

「ぎゃあああああ!!!」

「きゃあああああ!!!」


 俺と佳鈴は同時に叫び声をあげて飛び跳ねた。

 そして急いでナニかから背を向けた。

 だが、そこに白い光に浮かび上がった女の顔が目の前に現れたのである。

 

「ぎゃあああああ!!!」

「きゃあああああ!!!」


 再び森に響く俺たちの絶叫。

 だが、同時に女の顔も大声をあげたのだった。

 

「で、で、出たあああああ!! 幽霊カップル!!」



 



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2019年3月8日刊行『ボクは絶対にひっかからない!』(ポプラ社)をよろしくお願いします!
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