1.カリンの宣言
俺は浦部裕輝。中学二年生。
つい最近まで自分でもうんざりするほどの、重度な『中二病』を患い、それが原因であり得ない行動を繰り返してきた黒歴史の持ち主だ。
今は、と言うと、『とある出来事』がきっかけで、無事に(?)中二病も治り、なんと彼女までできた。
彼女の名前は笠谷佳鈴。
クラスの中心人物の彼女は、いつも周囲に女子がいる。
存在感がゼロで、常にボッチな俺と比べれば、まさに月とスッポンというわけだ。
もちろんクラスの人たちには俺たちが付き合っている、なんて恥ずかしくて話せるはずもない。
俺たちのカンケイを知っているのは、俺にとっての唯一の親友で、学校のアイドルでもある常原玲二くらいなものだ。
そんなわけで今日の昼休みも俺は窓ぎわの席から、ぼけっと佳鈴の様子を眺めていた。
おしゃべりに夢中な彼女。
ひいき目なしで言って、周囲の女子たちと比べれば抜群にかわいい。
なんで俺みたいな何の取り柄もない奴と、彼女は付き合ってくれているのだろうか……。
ついつい自虐的な思いにかられてしまうのは、仕方ないと思うんだ。
そんなことを考えていると、彼女がちらりを俺を見る。
(裕輝くん!)
なんと誰にもバレないように、小さく手を振ってくれているではないか!
ドキドキと胸が高鳴り、顔はかーっと熱くなった。
俺もぎこちない仕草で手を振るが、どこからどう見ても壊れたロボットのようだったと思う。
再び彼女の視線が女子たちに移ったところで、俺は大きなため息をついた。
「はぁ……」
このままだと俺は彼女に愛想をつかれてしまう……。
どうにかかっこいいところを見せなければならないが、そうやすやすと自分を変えられるはずもない。
「どうしたらいいものか」
俺の不安は日に日に大きくなる一方だった。
……と、その時だった。
女子たちの話が耳に飛び込んできたのだ。
「ねぇ、知ってる? 最近、深夜に『みなみ公園』の横を通ると、すすり泣きが聞こえてくるんだってぇ!」
「ええーっ! うそー! 怖い!」
「噂によると、捨てられた子どもの幽霊が、母親を求めて泣き声をあげてるんだとか」
「まじーっ!? それ、めっちゃ怖いんですけど!」
「やめてよぉ! そういうの苦手なんだからぁ!」
うん、本当にやめて欲しい。
俺も幽霊とか怖い話とか、すごく苦手なのだ。
こうして聞きたくもないのに耳に入ってくるのは勘弁して欲しい。
しかし……。
次の瞬間、ありえないことが起こった。
すくりと立ちあがった佳鈴が、高らかと宣言したのである。
「なら、わたしたちが幽霊の正体を確かめてくるよ!!」
「ぶふぉっ!!」
思わず吹き出してしまった俺に、クラスの目が集中する。
俺は慌てて、天井を向いて口をとがらせた。
「こ、今年は花粉症がひどいなあ。あはは……」
鋭い視線が痛いほど突き刺さっている。
そうしてようやくクラスの雰囲気が元通りになったところで、俺は佳鈴の方へ目をやった。
彼女は隙を見て俺に視線を送るなり、ちろりと小さく舌を出している。
俺は眉を八の字にして、
(俺はイヤだよ!)
と視線を送る。
彼女は、
(お願いっ! 一緒に行こうよ!)
と手を合わせてきた。
ぐぬぬっ……。
彼女にそんな仕草をされてしまったら、もうこう答えるしかないじゃないか。
(今回だけだぞ)
と。
こうして俺たちは『みなみ公園の幽霊の正体をあばく』ことになったのだった――。




