↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/7

1.カリンの宣言


 俺は浦部裕輝(うらべゆうき)。中学二年生。

 つい最近まで自分でもうんざりするほどの、重度な『中二病』を患い、それが原因であり得ない行動を繰り返してきた黒歴史の持ち主だ。

 今は、と言うと、『とある出来事』がきっかけで、無事に(?)中二病も治り、なんと彼女までできた。

 彼女の名前は笠谷佳鈴(かさやかりん)。

 クラスの中心人物の彼女は、いつも周囲に女子がいる。

 存在感がゼロで、常にボッチな俺と比べれば、まさに月とスッポンというわけだ。

 もちろんクラスの人たちには俺たちが付き合っている、なんて恥ずかしくて話せるはずもない。

 俺たちのカンケイを知っているのは、俺にとっての唯一の親友で、学校のアイドルでもある常原玲二(つねはられいじ)くらいなものだ。

 

 そんなわけで今日の昼休みも俺は窓ぎわの席から、ぼけっと佳鈴の様子を眺めていた。

 おしゃべりに夢中な彼女。

 ひいき目なしで言って、周囲の女子たちと比べれば抜群にかわいい。

 なんで俺みたいな何の取り柄もない奴と、彼女は付き合ってくれているのだろうか……。

 ついつい自虐的な思いにかられてしまうのは、仕方ないと思うんだ。

 そんなことを考えていると、彼女がちらりを俺を見る。

 

(裕輝くん!)


 なんと誰にもバレないように、小さく手を振ってくれているではないか!

 ドキドキと胸が高鳴り、顔はかーっと熱くなった。

 俺もぎこちない仕草で手を振るが、どこからどう見ても壊れたロボットのようだったと思う。

 再び彼女の視線が女子たちに移ったところで、俺は大きなため息をついた。

 

「はぁ……」


 このままだと俺は彼女に愛想をつかれてしまう……。

 どうにかかっこいいところを見せなければならないが、そうやすやすと自分を変えられるはずもない。

 

「どうしたらいいものか」


 俺の不安は日に日に大きくなる一方だった。

 ……と、その時だった。

 女子たちの話が耳に飛び込んできたのだ。

 

「ねぇ、知ってる? 最近、深夜に『みなみ公園』の横を通ると、すすり泣きが聞こえてくるんだってぇ!」


「ええーっ! うそー! 怖い!」


「噂によると、捨てられた子どもの幽霊が、母親を求めて泣き声をあげてるんだとか」


「まじーっ!? それ、めっちゃ怖いんですけど!」


「やめてよぉ! そういうの苦手なんだからぁ!」


 うん、本当にやめて欲しい。

 俺も幽霊とか怖い話とか、すごく苦手なのだ。

 こうして聞きたくもないのに耳に入ってくるのは勘弁して欲しい。

 しかし……。

 次の瞬間、ありえないことが起こった。

 すくりと立ちあがった佳鈴が、高らかと宣言したのである。

 

「なら、わたしたちが幽霊の正体を確かめてくるよ!!」


「ぶふぉっ!!」


 思わず吹き出してしまった俺に、クラスの目が集中する。

 俺は慌てて、天井を向いて口をとがらせた。

 

「こ、今年は花粉症がひどいなあ。あはは……」


 鋭い視線が痛いほど突き刺さっている。

 そうしてようやくクラスの雰囲気が元通りになったところで、俺は佳鈴の方へ目をやった。

 彼女は隙を見て俺に視線を送るなり、ちろりと小さく舌を出している。

 俺は眉を八の字にして、

 

(俺はイヤだよ!)


 と視線を送る。

 彼女は、


(お願いっ! 一緒に行こうよ!)


 と手を合わせてきた。

 

 ぐぬぬっ……。

 彼女にそんな仕草をされてしまったら、もうこう答えるしかないじゃないか。

 

(今回だけだぞ)


 と。

 

 こうして俺たちは『みなみ公園の幽霊の正体をあばく』ことになったのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2019年3月8日刊行『ボクは絶対にひっかからない!』(ポプラ社)をよろしくお願いします!
j33p1j77hhzoe9jf3563gs8wgqmk_tnk_6r_a3_5
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。