閑話③
「神様!ありがとうございます!!ありがとうございます!!!」
私は深く頭を下げていた。
画面に映し出されているのは、顔を真っ赤にしてフリーズしているエルザとその両脇でバチバチと火花を散らすカイルとジャンの姿である。
「やっぱりこれですよね!私が求めていたのは!効率化された経営コンサルシミュレーターからついに!極上の恋愛ものへとアップデート!尊い!!」
私が感涙していると、隣で神様がえっへんとふんぞり返っている。
「感謝してくれて嬉しいよ」
「本当に!神様、やればできるんですね!なんで今までやらなかったんですか?才能の無駄遣いですよ!」
「…あれ?なんかそれ褒めてないよね?」
ちっ…うまく騙されなかったか。
しかし、そんなことはどうでも良い。
私はるんるんで画面を見て、うっとりとため息をつく。
「はぁ…やっぱりいつの時代も王子様は最高ですよね〜」
「え゛っ?」
…ん?
私は神様の方を振り向く。
なんだ今のカエルが踏み潰されたような声は。
神様は聞いてはいけないものを聞いてしまったかのような顔をして私におそるおそる尋ねた。
「…君、まさかだけど…カイルの方を応援してたりしないよね?」
「え? 当たり前じゃないですか!カイル派ですよ?ビジュ良し、金持ち、王道で甘い台詞ばんばん言ってくるのに普通の女が堕ちないわけないでしょ?」
「いや!甘いねぇ、実に甘いよ…これだから人生経験の短いおこちゃまは…」
神様はやれやれと言った様子で、私にそう言えば画面上のジャンを指差した。
「時代は断然ジャンでしょ!?ぽっと出の意味わからない王子様なんかよりヒロインであるエルザとのエピソードはもちろん、その距離感、エルザへの絶対的忠誠心なんて萌え要素しかないじゃないか!いつもは飄々としている彼がエルザへの気持ちに気付いて耳まで真っ赤にする…ヒロインからもらった自分専用にカスタマイズされた黒鉄銀の剣を握りしめて戦うなんて設定も最高に胸キュンじゃない!?」
神様がきらきらと瞳を輝かせて語る。
私はそこで悟った。
な、なんてこった…。
「ちょっと待ってください、神様!ジャンのことは認めますけど、あれはあくまで主従でしょ!エルザが意識してるのは紛うことなくカイルですって!」
「いやいや!主従関係なんて男と女へのジョブチェンジへの前触れみたいなものだから!二人で苦楽を共にしてきたエピソードある方がポイント高いから!」
私と神様はモニター越しに熱い論争を繰り広げた。
「カイルはぽっと出ではなくて、ミステリアスなところが魅力なんです!エルザの予測演算を唯一裏切る存在だからこそ、恋に落ちる説得力がですねっ!?」
「いやいや、ジャンは毎日エルザの隣で領地を支えてきたんだよ!信頼から生まれる愛が本当の愛なんだとAIの心を打ち破るのには強力で…!」
ただただ虚しく二人の討論が響き渡る。
しばらくして、言いたいことを言いたいだけ言って落ち着いた二人はお互いに顔を見合わせた。
「…はぁ、はぁ。これは埒が明かないですね、神様」
「そうだね…お互いに譲る気はないようだ…」
息を切らした私と神様は再び画面へ視線を戻した。
画面にはエルザがうつる。
「…でも、当のエルザがパニックになってるのが個人的には最高に面白いな」
「それは間違いないです!AIが三角関係っていう予測不能なスパゲッティコードに頭を抱えてオーバーヒートする姿は最高のエンタメ…!」
やっと意見が合った神様と私は顔を見合わせ、満足そうに笑いあった。
「よし、次の王都からの刺客イベントでどっちの男がよりエルザをきゅんきゅんさせられるかで勝負しない?」
「乗りました!カイルなら絶対的な勝利を勝ち取るはず!」
こうして、二人の話はより熱を帯びていくのだった。




