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しょっぱい能力で滅ぼせ異世界  作者: 池金啓太
十八話「進む先に何があろうとも」

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0705:真実の愛と義務

「話を戻しましょう。殿下が貴族の子女と接触するのはあくまで向こうからの声掛けを待ってください。そうしないと余計な不和が生まれます」


「なんだかなぁ……僕そんなにシャイじゃないよ?近い歳の女の子と話すくらい全然平気なのに」


「そういう話ではないのです。ご理解ください」


 結局のところアルヴィストから話しかければそれだけ貴族間の不和が大きくなってしまう。立場のあるものは自ら動くことなく、周りが動くのを待てばいい。


 理屈はわかる。立場のあるものが軽々しく動けばそれだけ安く見られることだってあるのだ。


 こういうところで王族としての立ち回り方を学ぶのもまた必要なことだとアルヴィストも理解はしていた。納得するのはまだ難しかったが。


「わかった、待ちに徹するよ。そういうやり方は性に合わないけどね」


「でしょうな。殿下の気性からそれが難しいのは理解しております」


 まるでどんどん勝手に動き回るのが常だとでも言いたげなベンゴールに、アルヴィストは少しむっとする。


 しかし客観的に見てそのように思われても仕方がないと、自分自身の行いを省みて何も言い返すことができなかった。


「とりあえず、候補に挙がってる人の情報頂戴。特に学院に通ってる……あるいは僕が在籍してる間に入学しそうな子たち」


「承知いたしました。しかし、それら全てに目を通す必要はないのではないでしょうか?殿下が知るために尽力する必要もなく、相手の方が知ってもらうために尽力すると思われますが」


「それはそれだよ。僕の将来の相手になるかもしれない人たちなんだ。相手がどうこうっていうのはあくまで相手がそうしたいからってことでしょ?最終的には僕がその人を決めるんだから。知っておかなきゃ」


「……殿下ご自身で、お相手を決められると?」


「今までずっと決めてこなかったのは陛下で、今こうして、これから僕にそれを決めさせようとしてるんでしょ?それとも陛下、今からでも僕の許嫁を決めていただけるのでしょうか?」


「ん……んん……難しい話だ。こちらで決めたとして、お前はそれに従うか?」


「王命とあらば従いましょう。僕は王太子です。陛下の御意のままに」


 皮肉たっぷりに深々と頭を下げる実の息子を見てヴィルクリフ王は複雑な表情をする。賢い息子ではあるが、こういう生意気なところは誰に似たのだろうかと思わずにはいられなかった。


 もしそのように問われたら、この場のアルヴィスト以外の全員が父親に似たのだと断言することだろう。

 知らず気づかないのは本人たちばかりである。


「…………そのような言い方はするな。生涯の相手を強制しようとは思わん。お前が思い、添い遂げたいと思うものを探すがよい。ただし、お前はこの国の次代の王になる。そのことを念頭にいれ、相手を選ぶのだ。あまりにも……不適格な相手を選ぶようなら、その時はこちらとしても対応せねばならん」


「承知しております」


 要するにある程度格式のある相手を選べと言っているようなものだ。自由に選べる立場ではあるものの、その中に自由はない。


 男としては魅力的な立場ではあるものの、それを素直に喜べないのが実情だった。


 女性に言い寄られるという経験は少ない。はっきり言ってアルヴィストの周りにいる女性はほとんどが兵士か女中か兄弟弟子だったのだ。身近にいる歳の近い女性はセレネイアしかいないため、女性に囲まれる生活というものが想像できない。


 花の学院生活、といえば聞こえはいいのだろうが、男子生徒からの嫉妬の視線がとんでもないことになりそうだと今からため息が止まらない。


「あまり嬉しそうではないな」


「ぁ……申し訳ありません。権力を背景にした色恋というものにはあまり良い印象はなくて……物語などで言うところの真実の愛というものはなさそうだったので」


 アルヴィスト自身は前世まで換算してもそこまで女性経験が豊富というわけではない。色恋沙汰となればなおのことだ。


 そこに権力が付きまとうとあまりいい予感はしない。前世でみたドラマなどのドロドロとした関係を想像してしまい、気が進まなかった。


「真実の愛などあるものか。最初は借り物でも、紛いものだったとしても、互いに想い、敬い、真実に変えていくのだ。それが我ら王族の婚姻の、使命であり義務だ」


 ヴィルクリフ王の言葉にアルヴィストは目を丸くする。それは王としての言葉でありながら、夫であり、父としての言葉だった。


「アルヴィスト、我らの婚姻というものは他のどのような者のそれとも違う。平民は当然ながら、貴族のそれとも異なるのだ。それでも、我らは必ず番い、後継を残さねばならぬ。それは義務だ。絶対になさねばならぬことだ」


 王族として血を絶やすことは許されない。時には正室だけではなく側室を取ろうとも、必ず後継者を作らなければならない。人の道理から外れようと、それを成さねばならないのが王族の義務だ。


「その義務に女性を付き合わせるのだ。その分、相手に報いることを忘れるな。我らの重責の多くを相手に背負わせるのだ。その相手への労わりを忘れるな。初めから存在する真実の愛を探すのではない。お前はどのような相手であろうと、真実の愛とやらを作り出さねばならぬのだ。それを間違えるな」


 その言葉には重みがあった。彼自身が自らの妻を心の底から愛し、敬っていることがよくわかる言葉だった。


 アルヴィストは一人の男として、目の前の王を、父を、心の底から尊敬した。


「父上の言葉、しかと心に刻みました。ありがとうございます」


 言いたいことは言ったのだろうが、ヴィルクリフ王は少しだけ気恥しそうにしている。息子への助言だったのだろうが、あまりにも気持ちが乗ってしまったからだろうか、隣にいるベンゴールにも薄く笑われている。


 この人が父親でよかった。アルヴィストは心底そう思っていた。


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