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しょっぱい能力で滅ぼせ異世界  作者: 池金啓太
十八話「進む先に何があろうとも」

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0700:姉弟と友

「うぅ……終わった……疲れたぁ……」


「お疲れ様です殿下。とりあえずこれはベンゴール殿にお渡ししてきますね」


 ここ数年にわたる報告書の全ての作成が終わったアルヴィストは机の上に突っ伏して痙攣し始める。


 最終的にはメイレインやテルンにも手伝ってもらってようやく終わった書類の山に、アルヴィストは常日頃から行う書類整理は大事なのだと心底実感していた。


 王族、兵士、客人まで巻き込んだ文字通り総動員しての大仕事といえるだろう。どうして書類如きでここまで疲れなければいけないのかとアルヴィストは辟易していた。


 しかしそんなうんざりするような書類仕事から解放されたこの解放感たるや。今すぐに一風呂浴びてすっきりしたい気分だった。


「なんだって引っ越し前にこんな仕事を……あぁそうだ、まだ全然準備できてない」


「なら早く準備しなさい。入学の時期は待ってくれないわよ?早めに準備して、早めに学院についておかないと方々へのご挨拶もできないじゃない」


「うぅ、姉上の正論がしんどい……忙しさにかまけてた結果がこれかぁ……」


「しっかりしなさい。学院に行ったら私は手が出せなくなるんだから。テルンもポロンももういないし、誰もアルヴィストの助けにはなれないのよ?」


「……リカルドがいるでしょ?」


「リカルドは講師としての立場があるの。私たちだけを指導することなんてできないんだから」


 いくらアルヴィストが王族とはいえ、今後のフォローは誰かにやってもらうというわけにはいかない。


 王立学院は表向きは立場を無視した交友関係を作ることを目的としているのだ。もともと威張るつもりも偉ぶるつもりもないのだが、今まで以上に自分のことは自分でやらなければいけない日常がやってくる。


「アルも何年か学院に通うんだろ?」


「うん。ただ僕の場合王太子だからね。公務が入った場合は途中で抜けるってことは全然あり得るよ。何年学園に通えるかは、他の国の情勢次第ってところかな」


 今はイルス王国の中はおおよそ落ち着いているといっていい。


 しかし今後西方のエカンダ皇国の荒れ方によっては、この国もどのように変化が訪れるかはわかったものではない。


 あり得るとすれば難民問題がこちらにまで波及してくることだ。その前にシータには西方の難民たちを少しでも元の国に戻してやれるようにしてほしいところではある。


 学院生活を惜しむとかそういう話ではなく、王太子としての出番がないに越したことはないのだ。


 次の王太子としての公務が戴冠式などであればどれほど良いだろうか。そう簡単にはいかないだろうということはアルヴィストもよく理解できている。


 本当だったら学院など行かずに国内の諸問題解決のために動いていたいところだった。しかし貴族との繋がりを結ぶというのも重要なことである。


 目の前のことにとらわれ過ぎてそこから先のことが見えなくなるというのもよくない。一度足を止めることが必要だという事もよくわかっていた。


 とはいえ、もどかしさは消えない。もう少しで何か掴めそうなところまで来ているというのに、なかなかその先に進めない。


「アルの場合王太子だぞ?学院でも仕事しろとか言われるんじゃね?」


「どうだろう?僕の場合結構な確率で面倒ごと押し付けられそうな気がするけど……」


「面倒ごとってなんでだよ?王太子にそんなことするか?」


「だって、姉上が結構やらかしたでしょ?」


「…………あぁ……」


 アルヴィストとテルンの視線が近くにいるメイレインの方に向かう。


 最後のあたりはお淑やかになったとはいえ、それまでの間の話は王都にまで届いていたほどだ。


 彼女の活躍、もとい暴れっぷりはおそらく学院の中では伝説と化しているだろうことは想像に難くない。

 となればその弟のアルヴィストも似たようなことをするのではないかという先入観ができてしまっていても不思議はない。


 まったくもって迷惑な話だと、アルヴィストはため息を止められなかった。


「入学初っ端に喧嘩売られるんじゃねえか?喧嘩と言わなくても剣で挑まれるかもしれねえな」


「まったく、困った姉上を持つと苦労するよ。僕は争いごとは嫌いなのに」


「人が争いが好きみたいな言い方をするのはやめていただけるかしら?酷い言い分じゃないの」


「男子全員剣でなぎ倒したなんて話が伝わってる時点でお察しだよ。それともテルン、あれは尾ひれがついた根も葉もないうわさだったの?」


「いいや?嘘偽りのない事実だったぜ。俺が生き証人だ。末代まで語り継いでやるよ。第一王女は同級生先輩後輩一切合切加減せずに斬り捨てたってな」


「面白いことを言うじゃないテルン。貴方を末代にしてあげても構わないのよ?」


「おぉ怖。アル助けてくれ、王族からの圧を受けたら俺みたいな平民は平伏するしかなくなっちまうよ」


 どの口が言うのやら、テルンは飄々とアルヴィストを盾にしながら笑っている。王族を前にここまで堂々と軽口が言える平民というのは珍しい。いや、テルン以外にはそうそういないのではないかと思えるほどだ。


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