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しょっぱい能力で滅ぼせ異世界  作者: 池金啓太
十七話「課題は多く、しかし先行きは明るく」

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0675:護衛するなら必須品

「まったく、あれをやれこれをやれと言っておきながら、今度は呼び出しとはどういう了見だ」


「我らだけではなくユニまで招集をかけるとは。相当な事態なのだろう?」


 夕方、和平たちは合流して件の街の近くで作戦会議を行っていた。


 今回の事態はさすがに緊急も緊急。村の方には手隙のホムンクルスに対応してもらって、こちらは精鋭を集めるという形で決着した。


「とりあえず何が起きたのかだけ報告する。あの街に、勇者がいる」


 勇者。


 その単語に反応したのはユニステラだ。そしてトゥーも眉を顰める形で視線をその町の方向に向ける。

 勇者。魔王の天敵。和平の大敵。倒さなければいけない相手。


 和平の直系の魔物であるユニステラはともかく、トゥーはざっくりとした事情しか聞いていない。


 だがそれでも警戒するに越したことはないと考えているのか、和平の敵であるという認識を持ってくれているのか、僅かに威圧感が増していた。


「とりあえず、あいつらの目標がアルルゴウン、アルル大橋であると仮定する。そのうえでトゥーにはこの周辺の地形を調べてほしい。どういうルートで移動しそうとかそういうの。相手は馬車で移動してた。ある程度大きな道を使うはずだ」


「わかった。では行ってくる」


 トゥーが飛び立つのを確認してからユニステラは小さくため息をつく。


「こんなところで勇者に遭遇するとは……運がいいんだか悪いんだか……大体、主殿はなぜこんなところを徘徊していたのじゃ?東側で宗教を流行らせたいとか言っていたではないか」


「いやそうだったんだけど、思わぬ拾い物をしてさ。でっかい人型の魔物」


「人型の大きな魔物……亜巨人か?」


「あー、そうかも?とにかくそいつを操っていろいろやってたんだよ。周りに魔物を引き連れさせたり、周辺の魔物扇動したり……んで、結果あの街にたどり着いたら、その魔物を勇者っぽいのが討伐しちゃってさ」


 本当だったらあの魔物はもっと有効活用したかった。しかしこうなってしまったら話が変わる。


 勇者にここで遭遇することができた幸運か奇運に感謝するべきだろうと思い込み、話を先に進めることにする。


「ここからは断定してないけどほぼ大体確定してる仮定も含めて話を進めていく。勇者はイルス王国の王子である」


「ほう?あの国の王子か」


「そうそう。んで、普段は王都にいるんだけど、どういう訳かアルルゴウンかアルル大橋の方に向かってる。今日の日中にあいつらはあの街に入った。たぶんあの街で準備と休息含めて一泊するはず。明日出発するところに先回りしてちょっかい出したいなと、今の流れはそういう事だ」


「大まか理解した。しかし、ちょっかいとは具体的にはどうするのじゃ?主殿のことじゃ。勇者相手に本気で事を構える気はないのじゃろう?」


「よくわかってらっしゃる。流石に俺も今事を構える気はない。というか戦おうとしたところで普通に負けると思う。えっと?俺がこの世界に来た時と同じタイミングで生まれたとして……十歳か。十歳児に負けるとは思いたくないけど、たぶん普通に負けるだろうな」


 和平がこの世界に来て十年。和平だっていろいろな経験をしてきたが勇者の加護を前にすればその程度の変化は誤差のようなものだ。


 はっきり言って戦いにもならないのではないかと思える。少なくとも、もっとしっかりとした準備をしなければ勇者に対して有効な攻撃はできないだろう。


 だからちょっかいをかけるというのは、具体的なことを言えば相手の行動を妨害してその時にどういう行動をとるかが知りたいという情報収集の観点が強い。


「十歳……イルス王国の王子……アルルゴウン……あぁ、なるほど、連中の目的が分かったぞ」


「え?マジで?」


「昔儂はイルス王国にも行ったことがあると言ったじゃろう?その時に聞いた。イルス王国の王族は十歳になるとアルルゴウンにある女神教の大聖堂で本洗礼を受ける習わしがあるとか」


「へぇ……本洗礼って……あれか?宗教のお偉いさんが……こう……大々的に祝福する的なやつか?」


「だいぶ大雑把な認識じゃが、恐らくは間違っていまい。ともかく、それをするためにわざわざ王都から出てきたのじゃろう。護衛には魔導師もいたと言っていたのう?」


「あぁ。最低でも二人。腕利きがいる」


「なるほど……そうか」


 ユニステラは少しだけ嬉しそうに街の方を眺める。


 彼女からすればいろいろと思うところがあるのだろう。イルス王国に行ったことがあると聞いていたし、その時に王族に喧嘩を売った的な話も聞いた。


 しかし具体的な内容についてはさすがに聞くべきか迷っていた。


「生半可なことでは崩れんと思ったほうが良いじゃろうな。王族の護衛を任されるとなれば、それ相応の精鋭を当てるはずじゃ」


「だろうと思ってる。だからこそちょっかいなんだ。あと、俺たちが絶対にばれないってのも条件に追加だな」


「一定範囲内に近づけば、まず間違いなく感知されると思ったほうが良いじゃろうな。そういう意味では街に入らなかったのは賢明じゃ」


「街の中に入っただけでもダメか?」


「相手の力量にもよるがの。高位の魔導師ならばそのくらいはわかっても不思議はないじゃろう。良い判断だったと思うぞ」


「まぁ、偶然で死にたくなかったっていうのもあるんだけどな」


 保身的な考えかもしれないが死ぬよりはましだという考えに救われたともいえる。


「すまん、待たせた」


 そんなことを話しているとトゥーが上空から戻ってくる。このあたりの周辺地形を丸ごと確認してきたために相当急いで調べてきてくれたのだろう。やや息が荒い。


「お疲れトゥー。どうだった?」


「馬車が通れそうで、なおかつ国境の街まで行けそうな道はいくつかある。しかしその一つは土砂崩れが起きていたな」


「マジで?どのあたりだ?」


「このあたりだ。道が丸ごとふさがっていた」


 和平が取り出した地図にトゥーは爪で位置を示す。確かにそれは今いるこの街からアルルゴウンに向けて続く街道の一つ。その中でも大きいものの一つだ。


 この街から向かう上で、馬車が行ける道としては唯一の道といってもいい。


「ここが使えないとなると……遠回りのルートをとるか。遠回りルートの中だと、一番マシなのはこっちか」


「馬車を使わないというのであれば、細い道程度であれば見つけられたぞ?そちらの方を使えば最短とまではいかんが遠回りはしなくてもよいのではないか?」


「ここで馬車を捨てるか?いやだって……急ぐならまだしも……ユニ、その洗礼って急ぎなのか?」


「いいや?そこまで急ぎのものではないと記憶しているが……」


「クーラン、護衛の観点から言えば、馬車を捨てるのって選択肢に入るか?」


「いいえ。考慮にも値しません。先の行動を見た限り、あの小柄な人物が護衛対象に入るのでしたら、あの人物の動きを制限するという意味でも馬車があったほうが良いかと。あの人物は、護衛という観点から言えば危険です」


 危険。


 護衛という特殊な観点で言えばという前提を置いたうえでのクーランの評価に和平は少しだけ不思議な感覚だった。


 彼女は戦闘特化型のホムンクルスの中でも護衛という特殊な行動にさらに特化させたタイプだ。彼女の中には常に和平を守ることを前提とした考え方を持っており、その考え方は周りとは少しずれている部分がある。


「守らなければいけない相手が、好き勝手に動いて危険に飛び込んでいく。守る側からすればこれほど守りにくい存在はありません。守られているという自覚のない存在は厄介なのです」


「なるほど。あの護衛たちの指示を出してるのが小柄な……勇者(仮)だとしたら、どうなる?本人が馬車じゃなくてもいいって言いだしたら?」


「それでも馬車は必要でしょう。あの馬車には必要な装備、そして道具などが積み込んであるようでした。全員が馬に乗っている十人程度の護衛とはいえ食料なども考えれば物も載せられる馬車は捨てがたいかと」


 馬車を捨てるという選択肢は考え難い。やはり馬車に虫をつけておいたのは正解だったかと、和平は満足そうにうなずく。


「馬車を相手が使って、なおかつ最短でアルルゴウンに向かうとすれば、使う道は……ここか。遠回りにはなるけど、確実に進める」


 和平が確認するその道は、確かに遠回りにはなるものの、確実にアルルゴウンに馬車で向かう事の出来る道だ。


 この国の王子と思われる存在が、馬車を捨ててわざわざ馬で移動する、徒歩で移動するなどということは考え難い。


 食糧や装備を積んで移動するだけでなく、馬車を残していった後の帰りのことだってあるのだ。この場でそれを放棄するとは考え難い。


「待てよ……?トゥー、さっき言ってた土砂崩れってどのくらいのものだった?」


「どのくらいというと?」


「魔法とかを使えば開通できるレベルか?今回相手には優秀な魔導師がいるだろ?魔導師たちを使って強引に最短距離を進むって考えられないか?」


「なるほど……我が見た形だと……こんな感じで崩れていた」


 トゥーは地面に簡単に絵を描いてくれる。大きめの道が土によって埋まっているところを書いてくれるが、その範囲はかなり広いように見える。


 道幅の全てに覆いかぶさる土。それが十数メートルに至るまで続いている。


「何人かの行商人や兵士の姿も見えた。おそらくこの情報は既に伝わっているのだろう。土砂を撤去しようとしている者もいたが……時間がかかりそうな印象だ」


「……どうだユニ。お前基準の優秀な魔導師なら、この土砂撤去することはできると思うか?」


「魔導師にも種類がいる。覚えている魔法によっては容易じゃろうな。しかも話を聞く限りその護衛には最低二人の魔導師がいるのじゃろう?」


「あぁ。それを踏まえて、この道を使う可能性はあるか?」


「十分あり得る。遠回りをする道を行くより、この土砂を撤去する時間の方が短いかもしれんからな。儂なら半日もかからんくらいじゃろうかの?」


 具体的な土砂の量がわからないために多めに見積もったが、ユニステラで半日かかる作業となると、他の魔導師、それも優秀で、なおかつ二人いる状況ならどれくらいでどけられるだろうか。


 しかし、遠回りすれば追加される日数は数日では済まないかもしれない。


 一度どかしてしまえば帰り道も使えることを考えればどかすだろうか。


 それを考えればどちらの可能性も十分にあり得る。


 どちらかといえば国の為にもなる土砂をどかす方向だろうか、和平は地図とにらめっこしていた。


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