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「……お姉様、いくつか質問してもよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ」
「どうして自身で私の手を取ってつけてくれたんですの?」
「(猫耳はノアがつけてくれたからお返しに)私がつけてあげたいなと思って」
「どうして左手の薬指なんですの?」
「(ノアがその指が好きみたいだから)贈るならそこしかないと思って」
「どうして指輪を贈ってくれたんですの?」
「ノアに私の(日頃の感謝の)気持ちを伝えたかったからだよ」
「そう、ですか。お姉様」
「えっと、どうかな。もし嫌だったら、無理に受け取ってくれなくても……」
「いいえ! とても、とても嬉しかったですわ。お姉様の気持ち、確かに受け取りました」
「そっか、よかったあ」
「行き先は決めておりますの?」
「行き先? 何の?」
「またまた、お姉様も分かっておりますでしょ? 私は北の国か、南の島か、遠い東の国なんていうのもいいと思いますの。特に遠い東の国は、私が前世にいた国とよく似ていたはずですわ」
「それは気になる。行ってみたいね」
「では、そこにしましょう。日程は式も含めて一週間……いや、二週間程は欲しいですわね。先生にお願いしたらきっと休みにしてくれますわ」
「えっ、すぐ行くの? 夏季休暇の時でもいいと思うけど」
「お姉様、私そんなに待てませんわ」
「そっか、それなら仕方ないかな」
「ありがとうございます、お姉様。その時までに、私は必ずお姉様の気持ちに答えるための物を用意しておきますわ」
「(お礼は嬉しいけど)そんなに凄くなくてもいいからね?」
……というのが、先日の私とノアの会話である。思えばこの時、会話が若干すれ違っていた気がする。
勘違いは早めに正しておくべきだ。重い純白のドレスを着て頭にはヴェールを乗せた私は強くそう思った。
目の前には、両親を含め親類や関係者などが沢山並んでいる。急いで集めたのでこれでも少ない方らしい。
「その健やかなる時も、病める時も、富む時も、貧しい時も、互いを尊び、助け、導き、そして愛することを誓いますか」
ここまで来てしまったら後戻りはできない。私の意思を追い越して、結婚式は進んでゆくのだ。
「「誓います」」
私達は向き合い、誓いの口付けをする。いつも通り、思考にもやがかかり足が地から離れるような感覚がした。
ノアの頬も上気しており、それを見ていると動悸が激しくなる。私達はしばらく抱き合っていたが、やがて名残惜しそうに離れた。
「リリン・プロムナードとノア・プロムナードの結婚を神の名のもとに認めましょう。おめでとうございます」
「お姉様……」
「ノア……」
「これは、きっと夢ですわ。私が夢にまで見た景色が、今目の前にありますの」
そう言ってノアは涙を流す。そんなに幸せそうにされたら、流されるのも悪くないと思ってしまう。
「夢じゃないよ、ノア。私はずっとノアの隣にいるから」
再度、愛を確かめるように抱き合う。ノアは、耐えきれずに私の胸で泣き出してしまったようだ。
来賓の方々はそれを微笑ましそうに見ていた。
「お姉様、先程のもう一度やって下さいまし」
ノアが泣き止んでから、私達は来賓の人達に挨拶回りをしていた。今は私達のご先祖さまであるトワ先生の前にいる。
「さっきのって?」
「お姉様のほんのりお胸で包み込んでくれるやつですわ。先程は取り乱してしまって、匂いを堪能する暇がありませんでしたの」
「ノア、先生の前なら何やっても大丈夫だと思ってない?」
ノアの調子も戻ってきたようで何よりだが、式中ぐらいは真面目でいてほしかった。
「私は真面目に申し上げておりますの」
「余計悪いよ」
「お主ら、わしのこと忘れとらんか?」
「「いやいや、そんなことは」」
「仲が良くて何よりじゃ。それで旅行のことなんじゃが、三日待ってくれんか」
旅行は新婚旅行のことだ。やっと先日の会話の意味が分かった。
「三日?」
「三日後に運動大会があっての」
魔法学院なのに?
「魔法使いにも体力は必要であるという意識を促すという名目じゃ。ほぼ祭りのようなものだが、一応参加した方がいいじゃろう」
「分かりましたわ。では、四日後から一週間程お暇を頂きたいですの」
「うむ、承知した。土産を楽しみにしておるぞ」
先生との会話の後は、最後に両親の元へ向かう。
お父さんは豪快に笑って、お母さんは微笑んで私達を迎えてくれた。
「結婚おめでとう、可愛い娘達よ! 意外と早く二人がくっついてくれて父は安心したぞ、娘に手を出す輩の死体を処理しなくて済むからな」
「おめでとう、リリン、ノア。少し気になったのだけれど、夜遊びの時はどちらが上なのかしら?」
……こういう両親だ。ノアの変態性は前世のものだと言っていたけど、お母さんからの影響もかなりあると思っている。
私がまともなのは身近に三人も反面教師がいたからだろう。幼少期の頃からこうはなるまいと常々思っていたし、今も思っている。
「ありがとうございます、お父さん、お母さん。事件は起こさないでね」
「ありがとうございます、お父様にお母様。お姉様が上ですわ」
私達はそう返して、しばらく家族の時間を過ごす。夏季休暇までは帰らないと思っていたので、思わぬ所で両親と再開できたのは嬉しかった。
「お姉様、これが私からの贈り物ですわ」
「綺麗な指輪だね、ありがとう。そういえば、左手の薬指に指輪を贈るのって何か意味があったの?」
「えっ。……お姉様、まさか知らずに贈りましたの?」
「うん、前ノアが言ってたから贈ったんだ」
「お姉様……」
「ご、ごめんね。もしかして、大変なことだった?」
「無知純粋お姉様最高ですわあああ! ずっとそのままでいてくださいまし!」
「……あっ、はい」




