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3話
しばらくして息をゆっくりと吸い込む音がした。
「それでも…!人が死ぬのを待たなきゃ行けない生活なんて耐えられない…!!
それなのに、それなのに私は!
…私はまだ生きていたい……!」
一瞬の間を置いて吐き出された言葉は今の彼女の全てだった。
そして、何も間違っていなかった。
「…分かってるよ、全部、分かってる…」
言いながら僕は、自分の乗っていた車椅子の車輪を強く握って次の言葉を選んだ。
「ぶつかってきた相手が全部
…全部悪かったんだ。」
彼女は俯いたまま何も言わない。
「君は何も悪くない。」
僕は努めて冷静にそう言った。
やっぱり彼女は何も言わない。
言わない代わりにじっと、僕を見つめた。
それ以上言葉のない僕も、そっと見つめ返すしかなかった。
そこへ控えめなノックの音が聞こえた。
「川瀬さん、お薬のお時間ですよ。」
事故以来、幾度となくお世話になっている看護師さんの声がした。
ドアの前で紫乃さんが落ち着くのを待っていたんだろう。
その心遣いとタイミングが有難かった。
「紫乃さん、もう僕行くね。」
これ幸いと、僕は看護師に軽い会釈をして部屋を後にした。
彼女の顔は見えなかった。
「…ごめんね、本当に君はなにも悪くないんだ。」
思わず呟いたこの声が彼女に届いていたかは分からなかった。




