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貴方の骸に花束を。  作者: 有野かおる
1章 君は何も悪くない
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3話

しばらくして息をゆっくりと吸い込む音がした。


「それでも…!人が死ぬのを待たなきゃ行けない生活なんて耐えられない…!!

それなのに、それなのに私は!

…私はまだ生きていたい……!」


一瞬の間を置いて吐き出された言葉は今の彼女の全てだった。


そして、何も間違っていなかった。


「…分かってるよ、全部、分かってる…」


言いながら僕は、自分の乗っていた車椅子の車輪を強く握って次の言葉を選んだ。


「ぶつかってきた相手が全部

…全部悪かったんだ。」


彼女は俯いたまま何も言わない。


「君は何も悪くない。」


僕は努めて冷静にそう言った。


やっぱり彼女は何も言わない。

言わない代わりにじっと、僕を見つめた。

それ以上言葉のない僕も、そっと見つめ返すしかなかった。


そこへ控えめなノックの音が聞こえた。


「川瀬さん、お薬のお時間ですよ。」


事故以来、幾度となくお世話になっている看護師さんの声がした。

ドアの前で紫乃さんが落ち着くのを待っていたんだろう。

その心遣いとタイミングが有難かった。


「紫乃さん、もう僕行くね。」


これ幸いと、僕は看護師に軽い会釈をして部屋を後にした。

彼女の顔は見えなかった。


「…ごめんね、本当に君はなにも悪くないんだ。」


思わず呟いたこの声が彼女に届いていたかは分からなかった。



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