エピローグ
うわぁ!!!
業界内では底辺っぽいとは言え、魔術師なんて言う知的エリート層の人間が目撃者もいる外で問答無用に殺戮能力のあるような攻撃魔術を放ってくるとは。
まあ、隠れてこっそり狙い撃ちされるよりマシだけど、どちらにせよ攻撃を受けちゃった時点で詰んでる。
私の異世界転生生活もこれで終わりかぁ。
そんなことを考えていたが。
あれ?
《《考えている》》?
霊になって体から浮いている訳ではなく、普通に体の中で考えてるね。
灼熱の光が消えたら、目の前のあたおか魔術師は信じられないと言う顔をして私の事を見ていた。
私の方が信じられないよ。
殺され掛けた事も、生きている事も。
きょろきょろと自分の周りを確認して、やっと収納ブレスレットに浮かんでいた淡い光が消えかけているのに気付いた。
そう言えば?!
最初に来た時に、『物理的攻撃に対してほぼ完全防御』と『魔術的攻撃に対してほぼ完全防御』を自分とダールに対して掛けたんだった。
生体の掛ける術って定期的に掛け直さないと発動しなくても消えちゃうので、ダールの首輪と私の収納ブレスレットに防御の術を移したんだった!!
いやぁ、今まで防御の術が必要になる場面なんて無かったから、忘れてたわ〜。
術が切れてないかの確認もして無かったのだ。ヤバかった。
これからは定期的にダールの首輪と収納ブレスレットの術を確認して、魔力が抜けかけてたら補充しないと。
取り敢えず。
まずはこのあたおか魔術師を拘束しなくちゃだね。
私を殺せないからと、フィルスビを次に攻撃されたら不味い。
『魔術師を拘束・無力化』で探すが、焦っているせいで大量に出てきた検索結果に目が滑る。
「何をする!」
あわあわしながら術を探していたら、隣に立っていたフィルスビが立ち直って、あたおか魔術師の鳩尾に強烈な蹴りを入れて吹き飛ばした。
おお〜。
意外と物理ですね。
これで鍬とか持っていたら、あたおか魔術師は串刺しになっていたのかな?
それも良いかもと言う気もしないではないが、取り敢えず拘束して、国か魔術院に任せよう。
落ち着いた事でやっと欲しい術を見つけられた私は、『魔力を封じる術』と言うのを収納ブレスレットに入っていた縄(空飛ぶ絨毯に荷物を積む時の固定用)に付与し、呆然と地面に尻餅ついたまま動いていないあたおか魔術師を縛り上げた。
腕を体の後ろで合わせて手首をぐるぐるした後に体ごと縛り、ついでに足首も纏めて縛っておいて、更に縄を細く変形させて親指だけ繋げて拘束するような形に結んでおく。
なんかこう、本とかドラマで知ったような情報を手当たり次第に活用した縛り方になったが、まあこのヒョロっとした不健康そうな魔術師ならこれで動けないだろう。
多分。
魔術院との通信用の札を手に取り、魔力を通す。
『フジノさん?
どうしました?』
依頼振り分けの担当部署に魔術師から連絡が入ることは珍しいのだろう。
驚いたような声で聞かれた。
「すいません、今魔術師に問答無用で殺され掛かったのですが、この場合って王宮に訴え出れば良いのでしょうか、それとも警邏? もしくは魔術院?
王宮のカルダール氏にお知らせする前に、一応魔術院に確認しておこうと思いまして」
絶句の沈黙ってなんかこう、色があるね〜。
単なる会話の間の呼吸みたいな間とは明らかに違う沈黙のあと、慌てた相手の返事が返ってきた。
『只今直ぐに上に確認しますから、少々お待ち下さい』
はいは〜い。
取り敢えず、フィルスビにも話を聞いておくか。
◆◆◆◆
「殺人未遂と言う事で、ケベルス《《元》》魔術師は二十年の禁固刑、その後も魔術封じを受ける事になりました。
基本的にこれからはずっと魔石作りをしていく生涯になるでしょうね」
数日後、私の元に訪れてきたカルダールが教えてくれた。
私の立場を鑑みてか、あの後は王宮と魔術院で協力してあのあたおか魔術師の問題は早急に対処された。
流石に殺され掛ける経験は何も無かったとは言えどもショックだったのか、暫くは何かをしようとすると手が震えたので、部屋で休んでいたら家まで来てくれたのだ。
そろそろ落ち着いたし、フィルスビのところにでも顔を出した後に魔術院にでも行って新しい防御用の魔道具でも開発しようかな〜と考えていたところの訪問だった。
「鉱山労働じゃないんですね」
勝手に想像として、中世っぽい王権国家だったら二十年も禁錮されるような罪人は鉱山労働で使い潰されるのかと思っていた。
普通に閉じ込めて魔力を搾り取るだけだったら二十年後に無事に出所しそうだが、魔術を封じているのだったら報復も心配しなくて良いだろう。
多分。
少なくとも、直接的な暴力は。
放火とかで焼き殺そうなどと企まないよう、防火用の術や魔道具に関してちょっとこれから研究しておくと良いかも知れない。
「魔術師なんて身体強化の術を支えなければ、一般人以下のひょろひょろで非力な存在ですよ?
鉱山で使うなんて折角の資源の無駄遣いです。
ただし、殺されそうになった被害者として刑罰に不満があるのでしたら、裁判所へ異議を申し立てるのは可能です」
カルダールが付け足した。
「いえ、そこまで拘りはないので。
一応、彼が解放される際に知らせてもらうことは可能ですか?
報復に備えておきたいので」
地球では模範囚人だと仮釈放という形で早期に解放されることもある国も多かった。
海外では先進国でも刑務所が一杯だからとかなり良い加減な基準で囚人が仮釈放されて問題になったと言う記事も読んだことがある。
「しっかりあの元魔術師の記録に紐付けて注意事項としておきます」
カルダールが約束して、軽く雑談した後に出て行った。
私が襲われたショックから立ち直れているかの確認も兼ねてたのかも。
さて。
是が非とも欲しかった冷蔵庫(とそれを使った美味しいスイーツを売る店)と主食と冬の野菜と言った食生活はほぼ満足できるレベルになった。
収入も安定している。
後は気ままに仕事をしつつ、時々遠方での魔術院の結界補修依頼でも受けて、国内旅行にも行っても良い。
うん。
大体、異世界での生活は順調に軌道に乗った感じかな。
自助努力が実を結んで良かったわ〜。
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これでこの話は終わりです。
かなり昔になろうの方で書いていた話なのですが、途中でエタってしまった作品です。ちょっと気になっていたので、今回のカクコムコンで出品するついでに書き足し、何とか終わらせてみました。
何かご希望があったら番外編みたいのも書くかも知れません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




