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クラス転移した異世界で、俺だけハーレム冒険者  作者: 猫野 にくきゅう
第二章

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第71話 覚醒の儀式と、導かれた最適解

 風呂から上がり、共同浴場のハーブと温湯の余韻を纏ったまま、俺たちは『銀貨の止まり木』亭の自室へと戻っていた。


 防音性に優れた厚い石壁が外の喧騒を完全に遮断し、部屋の燭台が柔らかな橙色の光を投げかけている。

 木製のテーブルにある備え付けのお茶を煎じ、各自一口含んで呼吸を整えると、室内に静謐で心地よい安らぎが満ちていった。


 アキラの明るい茶髪から漂うかすかな柑橘の香りと、ルミの濡れた髪が放つしっとりとした匂い。

 『遊び人』の職に身を置いている影響か、二人の細かな吐息の揺らぎや肌の朱の差し具合まで、恐ろしいほどの解像度で俺の知覚に飛び込んでくる。


 俺はベッドの縁に深く腰を下ろし、表情を引き締めて二人へと視線を向けた。


 * * *


「これから、二人の能力を覚醒させる。いいな?」


「う、うん」

「お願いします」


 突然の切り出しに室内を一瞬の緊張が走り抜けたが、二人は真剣な面持ちで力強く頷いた。


「まずはアキラから、こっちに来い」


 俺が自分の膝の上をトントンと叩いて促すと、アキラは少し照れくさそうにはにかみながら、静かに歩み寄ってきた。


 俺は膝の上に彼女を正面から跨がせるようにして座らせ、その華奢な腰に両腕を回して深く抱き寄せた。


 正面から抱き合う形になり、俺の手は薄い衣類越しにアキラの背中の熱を感じ取っていた。

 システム上の操作だけを行うのであれば、このように身体を密着させる必要性は全くない。

 だが、人間というものは視覚や触覚における『特別な儀式性』を挟むことで、与えられた能力の重みと絆を深く心に刻み込む性質がある。


「前に言っていたボーナスポイント、それを使ってアキラの能力を開花させるぞ」


「わ、わかった」


 耳元で俺が低く囁くと、アキラは上ずった声を漏らし、俺の首元に両手を回してしがみついてきた。


 * *


 俺はアキラを【鑑定】し、彼女の深層ステータスをチェックする。


【アキラ(渡辺 明楽)】

 ボーナスポイント:35pt


 画面上に提示された取得可能能力のリストを素早く精査し、現在のパーティにおける移動力とユーティリティの補強を最優先事項として比較検討を開始した。


 まずは移動魔法の真骨頂とも言える二つの高位ユーティリティスキルをピックアップする。


 一つ目は【フィールド・テレポート】。

 効果は「一度訪れたことのある人里・集落の入り口へ一瞬で移動する(※戦闘中不可)」。


 二つ目は【ダンジョン・テレポート】。

 効果は「到達したことのあるダンジョン階層の入り口へ一瞬で移動する(※戦闘中不可)」。


 どちらも10ポイントで取得可能なスキルだ。


(この二つは確定だな)


 移動にかかる膨大な時間と路上のリスクを完全にカット・短縮できるこの二つの能力は、俺たちにとって替えの利かない生命線となる。


 続いて魔法使いとしての純粋な能力を底上げするための装備品へと意識を向ける。


 取得する装備品は、『賢者の錫杖(しゃくじょう)』(消費pt:10)を選ぶことにした。

 ステータス補正は「魔力(+6)」、そして装備効果として「【魔法の極意】(魔法の消費MPを半減する)」が付与されている。


 これが良いだろう。


 移動魔法を含め、高位の魔法は総じてMP消費が激しい。

 消費MPが常時半減されるという恩恵は、長期探索や連続移動において絶大なアドバンテージをもたらすはずだ。


 アキラにはこれで30ポイントを消費し、あと5ポイント残っている。


 そのうちの3ポイントを使い、【魔力操作向上】というパッシブスキルを取った。

 魔法の構築・展開速度を向上させ、詠唱の中断や失敗を減らしてくれるらしい。

 実戦での咄嗟の判断において、魔法の発動速度と安定性はそのまま生存率に直結する。


 残りの2ポイントは今後の予備として残しておくことにした。


 ポイントの配分を確定させると、俺の腕の中でアキラの身体がかすかに光を帯び、彼女の体内に新たな魔力の奔流が馴染んでいくのが伝わってきた。

 そして、アキラと俺の目の前に、装備品『賢者の錫杖』が出現した。


「……すごい、トオル君……! 頭の中がとっても冴えて、体に力が満ちてくるのがわかるよ……! この杖を持つと、もっと凄い……なにこれ」


 アキラが感動に瞳を潤ませながら俺の顔を見つめてくる。

 俺はその頭を優しく撫で、膝から降ろしてやった。


 * * *


「次はルミだ」


 彼女は真っ赤になりながらも、俺の膝の上に躊躇なく乗る。

 大人しいわりに思い切りのいい女だ。


 好感度と隷属度がともに100へ達している影響もあるのだろうが、俺に対する無条件の信愛がその一挙一動から伝わってくる。


 俺は手を背に回し、その小柄で華奢な身体を抱きしめる。

 肌の温もりを感じ合いながら、彼女の深層ステータスと既存スキルを精査し始める。


 彼女が元々持っていた付与魔法のスキルは、『プライム・エンハンス』だ。

 効果は「戦闘中、対象の最も高いステータスに+1の補正を与える魔法」というもの。


 俺に使えば、現状では最も高いステータス『技量』が上昇することになる。


(剣士の時は敏捷、戦士の時は耐久を上げて欲しいのだが)


 上昇させる能力を状況に応じて自由に選べないのは、前衛をサポートするのにやや使い勝手が悪い。


 ルミのボーナスポイントは30。


 まずはアキラと同様に詠唱の安定を図るため、【魔力操作向上】を3ポイントで取得する。


 * * *


 次に気になった能力は二つあった。


【レジスト・バリア】(消費pt:10)。

【エンチャント・アルケミー】(消費pt:4)。


 三つで、合計17ポイントとなる。


 【レジスト・バリア】は分かりやすい。

 暑さや寒さといった環境負荷を軽減してくれるだけでなく、なんと魔法攻撃の威力も一律で半減させてくれるらしい。


 過酷なダンジョン攻略や魔法を使う魔物との戦闘において、これは確実な当たりスキルだ。


 そして【エンチャント・アルケミー】という名の錬金術だが、魔導石(アメジストの原石)と魔物素材を用意し、対象の装備品と合成すると、新たな能力が付与されるらしい。

 武具のカスタマイズ性が高まる魅力的な効果だ。


 ただし、合成には失敗することもあり、失敗を防ぐには『幸運』の数字が高い方がいいようだ。


(と、なると……)


 ルミの『幸運』数値を引き上げ、失敗率を抑えつつ魔法効果を高める装備品の組み合わせが最適解となる。


 俺は残りの13ポイントを注ぎ込み、二つの装備品を選択した。


 『祝福の杖』(消費pt:10)。

 ステータス補正は「魔力(+3)」、そして「幸運(+10)」。


 『慈愛のロザリオ』(消費pt:3)。

 ステータス補正は「幸運(+10)」、装備効果として「【女神の祝福】(回復、結界系の魔法の効果が上昇する)」が付与される。


 この二つが最適解だろう。


 合計30ポイントを寸分の狂いもなく使い切り、ルミの潜在能力を最大限に活かす結界・錬金に適した「幸運特化型」の構成が完璧に完成した。


「んっ……あふぅ……っ」


 能力の付与が完了した瞬間、ルミはうっとりとした甘い吐息を漏らし、俺の胸元にぐったりと体重を預けてきた。


 その瞳は熱っぽく濡れ、身体の奥底から溢れ出す圧倒的な『加護』の感覚に心ゆくまで浸っているようだった。


「よく頑張ったな、ルミ」


 頭を撫でてやると、ルミは幸せそうに目を細め、俺の衣服の裾を小さな手で愛おしそうに握りしめた。


 それから、出現した装備品を受け取った。


 能力覚醒を果たした二人を引き寄せながら、俺は明日以降の冒険と装備強化の算段を立て、静かに満足の笑みを漏らすのだった。

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