主人公たちのステータス 番外編、VS奴隷商『もう一つの戦い』
47話終了時点のステータス
主人公のステータス。
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名前:トオル・トキワ(常盤 透)
剣士 レベル:7 ( 戦士 レベル:5)
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HP:65 / 65 MP:35 / 35 (+10)
筋力:18 (+3) 耐久:14 (+3)
敏捷:15 (+6) 技量:22 (+7)
魔力:12 (+3) 幸運:10
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固有スキル:
【鑑定】 【アイテムボックス】
【女たらし】 【奴隷使い】
スキル:
【剣術:Lv.8】
称号:
【オルト村の英雄】 【バザルの卑劣漢】
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装備:
『疾風の剣』(常時:【斬撃付与】) 装備時:敏捷(+3)
『風のマント』 装備時:敏捷(+3)
『精神の指輪』装備すると魔力(+3)MP(+10)
『大地のブーツ』装備すると耐久(+3)
革の胸当て・兜、木の丸盾
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ボーナスポイント:10
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【アイテムボックス】
傷薬(塗り薬): 3個
下級ヒールポーション: 2個
探索道具一式:(食料、水、松明、テント、聖水、解毒草、包帯、煙幕弾、ロープなどを複数所持)
『薄汚れた硬貨の袋』:(財布 / 残金:金貨: 10枚 銀貨: 69枚 銅貨: 79枚)
避妊薬(瓶1個分)
魔導石(アメジストの原石)1個
【パーティメンバー】
渡辺 明楽 (魔法使い レベル:1)
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名前:アキラ・ワタナベ (渡辺 明楽)
職業:魔法使い レベル:1
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HP:30 / 30 MP:55
筋力:10 耐久:10
敏捷:12 技量:18
魔力:18 幸運:23
固有スキル:【アイテムボックス】
スキル:【移動魔法:Lv.1】
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名前:ルミ・タカハシ (高橋 瑠美)
職業:魔法使い レベル:1
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HP:35 / 35 MP:50
筋力:08 耐久:09
敏捷:10 技量:17
魔力:14 幸運:21
固有スキル:【鑑定】
スキル:【付与魔法:Lv.1】
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番外編 VS奴隷商『もう一つの戦い』
(佐藤翔太の視点)
冒険者ギルドの重厚な木造の扉を抜けた瞬間、肌を刺すような湿った冷気が全身を包み込んだ。
俺たちの前後を塞ぐように歩くのは、顔に深い傷跡を刻んだ三人の厳つい男たちだ。
革の胴当てるからは鍛え上げられた分厚い肉体が覗き、腰に下げた太い大剣の鞘が、歩くたびに金属音を立てて硬い石畳を叩いている。
転移して間もない俺が思い描いていた「主人公として無双する異世界生活」の幻想は、この容赦ない圧迫感の前にあっけなく瓦解しかけていた。
冷や汗が背筋を伝い、喉の奥がカラカラに干からびる。
俺のすぐ後ろを歩く健一も、普段の爽やかな笑顔をすっかり消し去り、青ざめた顔で固直していた。西村と三木に至っては、男たちの威圧感に怯えて下を向いたまま足をガタガタと震わせている。
* *
ギルドの建物の陰、路地の薄暗い物陰には、一人の異様な雰囲気を纏った男が待ち構えていた。
小さな背丈に、光を吸い込むような不潔な黒ずくめの服。
額から頭頂部にかけて薄く剥げ上がった頭皮からは、不自然に長い白髪が肩まで伸びている。片目を不気味に閉じたその顔は常に歪んでおり、生ゴミのような酸っぱい匂いを漂わせていた。
「そいつらが例のガキどもか。手際が悪いぞ、早く案内しろ」
吐き捨てるように発せられた男の声は、掠れた笛のように不快な音となって耳に障った。
この不気味な小男こそが、奴隷商会の人買い担当――
モルダー・リーという男らしい。
* * *
男たちの無言の促しに従い、俺たちは石畳の路地を重い足取りで歩き出した。
少し後ろからは、今回すべての元悪であるD級冒険者のモリッチさんが、どこかうさん臭いニヤけた笑みを浮かべながらついてくる。
到着したのは、ギルド系列の薄汚れた安宿だった。
湿気とカビの匂いが立ち込める廊下を進み、俺は一人で女子たちの割り当てられた部屋の前に立った。
震える手指で、立てつけの悪い薄い木枠のドアをノックする。
「おかえりー、翔太! ねえねえ聞いて、私たちが街を歩いて探してきたんだよ。結構いい条件の働き口がありそうでさ――」
扉を開けて顔を出したのは、能天気な声を張り上げる竹沢麻利絵だった。
明るい笑顔で俺を迎えた彼女の言葉を、俺は冷たく遮る。
「悪い、麻利絵。その話は後だ。女子全員、身支度して表に出てくれ」
「え……? 翔太、どうかしたの? すごい怖い顔してるけど……」
少し怯えたような、麻利絵の声――
部屋の奥から、他の女子六人の視線が一斉に俺へと注がれた。
ベッドに腰掛けていた上里火美子や、渡辺、高橋たちも、俺の異様な空気感を察して不審そうに眉をひそめている。
俺は何も答えず、ただ「いいから早く来い」とだけ言い残して背を向けた。
* *
部屋から出てきた女子七人は、安宿の外へ出た瞬間、息をのんで足を止めた。
薄暗い路地に待ち構えていた黒ずくめの不気味な男と、威嚇するように立ちふさがる三人の巨漢の男たち。
そして、その隅で身を縮めている俺たち男子四人の姿を目にして、彼女たちの顔から一気に血の気が引いていく。
「えっ? なに、その人たち……」
「ちょっと翔太、いったい何なのよ?」
数名の女子が金切り声を上げ、警戒心剥き出しで俺を詰問してくる。
しかし、モルダー・リーは彼女たちの問いかけなど端から意に介していなかった。
不気味に歪んだ顔の単眼をギラリと光らせ、集まった女子七人をまるで競り市に出品された家畜のようにじろじろと見回し始める。
屈強な三人の借金取りが、逃げ道を塞ぐように静かに足取りを動かし、女子たちの背後へと回り込んだ。
「ひっ……!」
異変を感じ取った女子たちが身を寄せ合い、怯えの声を漏らす。
「ふむ……まずはお前からだな。この中で一番の上玉だ」
モルダー・リーの濁った視線が留まったのは、上里火美子だった。
学校でも誰もが認める一番の美人であり、寡黙で滅多に口を開かない彼女は、クラスでも常に女王様のように周囲から敬われていた存在だ。
だが、そんな上里すらも、モルダー・リーの狂気的な眼光に見つめられ、短い悲鳴を上げて一歩後退った。
「ひっ! な、なに……? 近寄らないで……!」
「名前は、ヒミコか。変わった名だな。ほう……火属性魔法の使い手とは。これはこれは、だが小僧共を相手に、それを考慮してやる必要はないな――魔法の価値を差し引いても……こいつは、銀貨50枚。最上級の上玉だ」
モルダー・リーの目が怪しく光っていた。
恐らく、対象の能力や詳細を見抜く『鑑定』スキルを使っているのだろう。
教えてもいないのに自身のプライベートな情報を言い当てられ、上里は顔を蒼白にして震え上がった。
* * *
モルダー・リーの冷酷な査定は、止まらない。
「こちらの二人は……ふむ、悪くない。共に銀貨45枚。こちらの女は銀貨40枚といったところか」
彼が指さしたのは、高橋と渡辺、そして麻利絵だった。
容姿や体型、魔法適性などの条件によって、人間としての価値が刻一刻と数字に置き換えられていく。
「あとは……こっちは25枚、そっちは15枚、こいつは20枚といったところだな」
残りの女子三人にも、容姿に応じた容赦のない値段が付けられていく。
四人の高額な女子を足すと180銀貨。残りの三人で60銀貨。合計で240銀貨。
ここに至り、女子たちも自分たちが置かれた絶望的な状況を完全に理解したようだった。
自分たちが「商品」として査定されている事実に恐怖し、責めるような激しい怒りの視線を俺へと叩きつけてくる。
* *
「すまん、皆……。冒険者のモリッチさんから借りていた金だが、実はそれはドノヴァンって人の商会の金だったらしい。借金の期日は今日で、その取り立てにこの人たちが来たんだ」
俺は必死に声を振り絞り、状況を説明した。
「なによそれ!?」
「ふざけないでよ! なんで私たちがこんな目に遭わなきゃいけないのよ!」
「――ていうか、なんで私が一番値段が低いのよ!?」
「そんなお金、私たちが返す必要なんて最初からないじゃない!」
怒号と悲鳴が嵐のように俺へ浴びせかけられる。
だが、ここで弱気を見せれば俺自身の身が危うい。俺は彼女たちの批判を強引に遮り、言葉を重ねた。
「手つかずで残していた銀貨30枚がここにある! 後の銀貨70枚を払うために、何人かには犠牲になって欲しい! でも心配はいらない、絶対に俺たちが冒険者として金を稼いで、買い戻すから! 俺たちを信じて、今は耐えてくれ!」
自分でも勝手すぎると分かっていたが――
これ以外に、この場を凌ぐ手立てはない。
* *
「信じろって言われても、無理だよそんなの! どうやってそんな大金稼ぐのよ!?」
真っ先に生意気な口答えを返してきたのは、渡辺だった。
その生意気な態度に、俺の脳内の冷徹な損得勘定がカチリと音を立てて切り替わる。
「よし、じゃあ犠牲になる最初の一人は渡辺だ。これで残り25枚だから……」
俺が冷静にそう言い放った瞬間、それまで騒いでいた女子たちが一斉に絶句し、静まり返った。
下手に感情的になって口答えをすれば、次に指名されるのは自分だという恐怖が、彼女たちの口を固く閉ざさせたのだ。
(そうそう、分かればいいんだ。リーダーに逆らえばどうなるか)
俺は頭の中で必死に計算を巡らせる。
残り25枚の欠損を埋めるために、誰を差し出すのが最もパーティにとって合理的か。
容姿の劣るブス二人を合わせて売れば、銀貨35枚になって10枚のお釣りが戻ってくる。
あるいは、そこそこの容姿を売れば銀貨25枚ぴったりになり、犠牲者は二人だけで済む……。
(今後の俺たちの生活を維持するためには……)
俺が冷酷な決断を下し、切り捨てる女子の名前を口にしようとした、その時だった。
* * *
「何を勝手なこと言っておる、小僧」
モルダー・リーが不快そうに顔を歪め、閉じていた片目を半開きにして俺を睨みつけた。
「貸した金には利息が付くのを知らんのか? お前の育った田舎での、知り合い同士の金の貸し借りじゃないんだぞ? 貴様らが今日返済すべき金は、利息込みで銀貨270枚だ。この七人の女は全員連れて行く。それと……これでちょうどだな」
言うや否や、モルダー・リーは俺の腰から銀貨30枚の入った革袋を素早く奪い取った。
(な……なんだと……!?)
俺の思考が完全に凍りついた。
利息が銀貨170枚!?
こんな短期間でそんな狂った利息がつくわけがない!
しかも、女子七人の査定額(240銀貨)と俺の持っていた銀貨30枚を合わせると、ぴったり270銀貨になる。
そんな仕組まれたような偶然が存在してたまるか!
(誰がどう見ても、査定してから利息をつけ足しただろ!)
ハメられた。
最初から、俺たちはこの奴隷商にハメられていたのだ。
猛烈な怒りが頭を駆け巡り、「ふざけるな!」と叫び出そうとした。
しかし、俺の視界に入ったのは、腰の剣に手をかけ、冷酷な光を瞳に宿した三人の用心棒たちの姿だった。
一言でも文句を言えば、この場で叩き斬られて命を落とす。
自分の命の軽さと、異世界の冷酷な現実を突きつけられ、俺の「主人公としての誇り」は無残に砕け散った。
俺はただ青ざめた顔で唇を噛み締め、一言も反論できずに沈黙するしかなかった。
「……ひっ! 翔太! 助けて! 翔太ぁっ!」
「嫌! 離して! 触らないでよ!」
逃げ惑う女子たちが、巨漢の男たちによって次々と捕縛され、革の首輪をつけられ連行されていく。
教室で俺に気があるそぶりで言い寄っていた麻利絵が怯えて蹲っていて、涙を流して救いを求める視線を向けた。
だが、俺は目線を地面へと落とし、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
* *
心が、暗闇に覆われていく――
その時、モリッチさんがへらへらしながらモルダー・リーへ近づいていった。
「旦那、約束の分け前を……」
「……ほれ」
モルダー・リーからジャラリと手渡された銀貨20枚の袋を受け取り、モリッチさんは満足そうに頬を緩めた。
そして、絶望に打ちひしがれる俺の元へ歩み寄ると、ポンポンと軽く肩を叩いてきた。
「まあ、悪く思うなよショウタ。これも立派な人生経験だ。今度この金でいい酒でも奢ってやるから、元気出せ。な!」
悪びれる様子も一切なく、モリッチさんは浮かれた足取りで、夕闇の迫る街の雑踏の中へと消えていった。
残されたのは、静まり返った暗い路地と、呆然と立ち尽くす俺たち男子四人だけだった。
(俺は……俺たちは……)
自分が何一つ成し遂げられない愚者であることを思い知らされ、俺はただ冷たい風が吹き抜ける路地で、爪が食い込むほど強く拳を握りしめていた。




