主人公のステータス 番外編:『敗北者の選択と、忍び寄る取り立て』
42話終了時点のステータス
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名前:トオル・トキワ(常盤 透)
剣士 レベル:7 ( 戦士 レベル:5)
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HP:65 / 65 MP:35 / 35 (+10)
筋力:18 (+3) 耐久:14 (+3)
敏捷:15 (+6) 技量:22 (+7)
魔力:12 (+3) 幸運:10
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固有スキル:
【鑑定】 【アイテムボックス】
【女たらし】 【奴隷使い】
スキル:
【剣術:Lv.8】
称号:
【オルト村の英雄】 【バザルの卑劣漢】
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装備:
『疾風の剣』(常時:【斬撃付与】) 装備時:敏捷(+3)
『風のマント』 装備時:敏捷(+3)
『精神の指輪』装備すると魔力(+3)MP(+10)
『大地のブーツ』装備すると耐久(+3)
革の胸当て・兜、木の丸盾
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ボーナスポイント:10
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【アイテムボックス】
傷薬(塗り薬): 3個
下級ヒールポーション: 2個
探索道具一式:(食料、水、松明、テント、聖水、解毒草、包帯、煙幕弾、ロープなどを複数所持)
『薄汚れた硬貨の袋』:(財布 / 残金:金貨: 10枚 銀貨: 69枚 銅貨: 79枚)
避妊薬(瓶1個分)
魔導石(アメジストの原石)1個
古代王国の金貨5枚
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番外編:『敗北者の選択と、忍び寄る取り立て』
(佐藤翔太の視点)
交易都市バザルの外に広がる乾燥した平原は、俺が思い描いていた異世界冒険の舞台とは程遠く、ただ乾いた風が吹き抜けるだけの場所だった。
高校ではサッカー部に所属し、それなりに運動神経にも自信があった俺は、クラスごと異世界に転移した時、胸の奥で密かに歓喜していた。
「俺がこの世界の主役になるんだ」
――そんな浅はかで楽観的な全能感が、確かに身体を満たしていたのだ。
あの辺鄙な村の広場では、確かにそう思っていた。
だが、バザルへ辿り着いた十六名でパーティを組み、レベル上げのために町の外へ一歩踏み出し、一時間もしないうちに、その甘い幻想は無惨にも叩き潰された。
* *
最初に遭遇した魔物――『ヴァイパーハウンド』。
背中から後頭部にかけて黒い鱗で覆われた毒角犬は、背丈ほどの草むらから飛び出すなり、地響きを立てて俺たちへ突進してきた。
俺が事前に立てた作戦では――
お調子者の松井に安値で買った木の丸盾を持たせ、前衛で敵の攻撃を受け止めさせ、残りの男子四人で獲物を仕留めるはずだった。
しかし、迫り来る魔物の凄まじい速度と圧迫感は、高校生の拙い計算など軽々と凌駕していた。
「――ガッ!?」
生々しい打撃音とともに、松井の構えた盾ごと押し倒し、鋭利な牙が容赦なくその首を深く貫いていた。
一瞬の出来事だった。
鮮血が空中に吹き出し、松井は言葉にならない絶叫を漏らしながら泥の上に倒れ伏した。
「ひっ……!?」
「うわあああっ!?」
血の匂いと肉の潰れる音に、後衛の仲間たちはパニックに陥り、俺たちの陣形は一瞬で瓦解した。
前衛を失い、死の恐怖が背筋を駆け上がる中、俺は喉を引きつらせて大声を張り上げた。
「逃げろっ!」
俺の悲鳴じみた撤退指示に促され、全員が蜘蛛の子を散らすようにバザルの城門を目指して泥を跳ね上げながら足を動かした。
* * *
何とか街の中に逃げ帰り、頑丈な石造りの門を背にして荒い息を吐き出す。
肺が焼けるように熱く、膝の震えがどうしても止まらない。
「はぁ……はぁ……ねえ、亮子たちは……!?」
肩を揺らして息を整えていた女子の一人が、青ざめた顔で周囲を見回しながら叫んだ。
その声にハッとなって人数を確かめると、あまりの少なさに心臓が凍りついた。
バザルへ辿り着いた十六名のうち、元々十一人いたはずの女子が、わずか七人に減っていた。
目の前で殺された松井の死に加え、四人の女子の姿がどこにもない。
(追いつかれたのか……)
足の遅い者から順番に、あの凶暴な毒角犬に追いつかれ、牙と角の犠牲になったのだと察するのに時間はかからなかった。
* *
「逃げ遅れたんじゃないの……!?」
「大変、助けに行かなきゃ!」
「もう無理だよ! 行っても死んでるに決まってるって!」
「まだ、分かんないじゃん! 疲れて休んでるだけかもしれないでしょ!?」
「私は絶対外に出たくないわよ! 助けたいなら行きたい人だけで行って!」
門の前で、生存者たちの険悪な議論が激しく交錯する。
パニックと責めるような熱を孕んだ視線が、リーダー気取りだった俺の全身に痛いほど突き刺さる。
ここで「助けに行く」と言えば格好がつくだろう。
だが、脳裏には松井の喉から噴き出した鮮血の光景が焼き付いて離れない。
俺は引きつった唇を開き、プライドを殺して言葉を絞り出すしかなかった。
「残念だが……今の俺たちでは、あの魔物に勝てない」
その一言で議論は途切れ、冷ややかな失望と絶望がその場を支配した。
俺たちは失意のまま、這うようにして暗い宿へと帰り、泥のように眠るしかなかった。
* * *
次の日からの現実は、さらに容赦なく俺たちの首を絞めかかった。
仲間を五人失ったショックに打ちひしがれている余裕など、微塵もなかった。
俺たちの前には、この町にやってきた初日に背負わされた「銀貨百枚」という膨大な借金が重くのしかかっていたのだ。
金を稼ぐためにバザルの町中で日雇いの仕事を探したが、現実はどこまでも甘くなかった。
重労働の肉体作業を一日やっても、もらえるのは銀貨一枚。
俺たちの場合は日雇いだから、それよりも安値で、しかも毎日仕事があるわけでもない。
食費と宿代を差し引くと、一日に手元に残る手持ちは銅貨二、三枚ずつ増えるのが限界だった。
このペースでは、借金を返すどころか数年経っても首が回らない。
* *
俺たちが寝泊まりしているのは、一人一泊銅貨二枚という割安な冒険者ギルド系列の宿屋だ。
だが、この宿に泊まるためには、「冒険者としての実績」をギルドに示し続けることが絶対条件となっていた。
そのために、俺たちは定期的に町の外に出て、薬草を採取する任務をこなす必要があった。
しかし、生き残った女子七人の大半は、二度と町の外に出ようとしなかった。
目の前で仲間が襲われた惨劇がトラウマになり、彼女たちの心を完全に砕いてしまっていたのだ。
結局、薬草採取に向かうのは俺と木村を含めた男子四人だけだった。
薄暗い草むらを歩きながら、俺たちの神経は研ぎ澄まされ、胃が痛むほどの緊張感に苛まれていた。
道中でスライムやホーンラビットといった弱小の魔物を見かけるたび、俺たちは迷わず全力で逃げ出した。
男子四人で戦えば勝てる相手であることは、頭では理解している。
だが、万が一にも戦闘で負傷すれば、それで俺たちの生活は終わりだ。
擦り傷一つでも感染症にかかれば、何日も床に臥せることになる。
致命傷でなくとも、怪我を負って満足に動けなくなることは、即ちこの過酷な異世界での死を意味していた。
ぎりぎりの生活を続けている俺たちに、負傷した足手まといを養う余裕など存在しない。
誰もはっきりと言いはしないが、全員がその冷酷な現実を深く察していた。
勝てる勝てない以前に、「怪我をすれば即アウト、逃げるのが最善」という現実的な対処だけが俺たちを支配していた。
* * *
そんな綱渡りのような日々を過ごしていたある日――薬草の納品を終えて冒険者ギルドのホールに立ち尽くしていた俺たちに、一人の男が近づいてきた。
俺たちに金を貸してくれたD級冒険者、モリッチさんだ。
話しやすい人柄で、人のよさそうな笑みを浮かべた彼が、俺の肩に馴れ馴れしく手を置いた。
「そろそろ、貸した金を返してもらえるか?」
その軽い口調とは裏腹に、眼光には冷徹な取り立て屋の色が宿っていた。
俺は心臓が口から飛び出しそうなほどの恐怖を覚えながら、必死に頭を下げた。
「銀貨三十枚は手つかずで残してますが……返せるのはそれだけで、もう少し待ってもらえませんか?」
喉をカラカラにしながら懇願する俺に対し、モリッチさんは困ったように首を横に振った。
「いや、それは俺の金じゃなくて、ドノヴァンさんとこの『商会の金』だから、俺が待ってやることはできないんだ」
モリッチさんが少し脇へ退くと、その背後から威圧感を放ついかつい男たちが三人、すっと前に進み出てきた。
使い込まれた革鎧を纏い、肉厚の剣を腰に差した男たちの瞳には、感情の欠片も浮かんでいない。
こっちは戦闘経験の浅い男子高校生四人だ。
身構えることすらできず、力づくで抵抗したところで到底勝ち目がないことは明白だった。
「……案内しな」
いかつい男の一人が、地響きのような低い声で吐き捨てる。
俺のプライドも、主役になれるという自惚れも、すべては泡となって消え去っていた。
俺たちは青ざめた顔でお互いを見合わせ、恐ろしい借金取りに急かされて、女子たちが待つ薄暗い宿へと重い足取りで歩き出すしかなかった。




