主人公ステータスと番外編:『身の程知らずの踏み出し』
33話終了時点のステータス
主人公のステータス。
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名前:トオル・トキワ(常盤 透)
剣士 レベル:7 ( 戦士 レベル:5)
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HP:65 / 65 MP:35 / 35 (+10)
筋力:18 (+3) 耐久:14
敏捷:15 (+6) 技量:22 (+7)
魔力:12 (+3) 幸運:10
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固有スキル:
【鑑定】 【アイテムボックス】
【女たらし】 【奴隷使い】
スキル:
【剣術:Lv.8】
称号:
【オルト村の英雄】
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装備:
『疾風の剣』(常時:【斬撃付与】) 装備時:敏捷(+3)
『風のマント』 装備時:敏捷(+3)
『精神の指輪』装備すると魔力(+3)MP(+10)
革の胸当て・ブーツ・兜、木の丸盾
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ボーナスポイント:10
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【アイテムボックス】
傷薬(塗り薬): 3個
下級ヒールポーション: 2個
探索道具一式:(食料、水、松明、テント、聖水、解毒草、包帯、煙幕弾、ロープなど、消耗品は複数所持)
『薄汚れた硬貨の袋』:(財布 / 残金:金貨: 7枚 銀貨: 55枚 銅貨: 88枚)
避妊薬(瓶1個分)
魔導石(アメジストの原石)1個
古代王国の金貨5枚
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番外編:『身の程知らずの踏み出し』
(佐藤翔太の視点)
荷馬車の揺れと、木輪が石を擦る不快な音がずっと耳に障っていた。
行商人ルークの馬車に揺られながら、俺――佐藤翔太は、膝の上でぎゅっと拳を握りしめていた。
あの悲惨な最初のクエスト。
半数ものクラスメイトが死に果て、生き残ったのはわずか十七名。
そのうちの一人、常盤の野郎は仲間を犠牲にして自分だけ手柄を立てやがった。
あんな卑怯な奴は当然ハブだ。俺たち十六人は常盤を捨て、オルト村から南西に位置する『バザルの町』へと向かっていた。
高校のサッカー部でキャプテンを任されていた俺には、自分ならこの異世界で主役になれるという自負があった。
仲間をまとめ、レベルを上げ、いずれはこの世界の英雄になる――本気でそう思っていた。
だが、胸の奥で渦巻く冷たい焦燥感を消し去ることはできない。
クラスメイト達の死を見て、この過酷な世界の現実を思い知った。
そして、盗賊退治の報酬として得た金は、ルークさんに払う馬車の賃料でほとんど消えてしまっていたからだ。
* * *
バザルの町に到着した俺たちは、吸い込まれるように冒険者ギルドへと足を運んだ。
そこでの手続き中、俺たちが既に冒険者として登録されているという事実を知ったものの、財布の中身は絶望的だった。
受付の女性に頼み込むようにして事情を話すと、ギルド系列の格安の宿を紹介された。
古びて薄暗く、十六人が雑魚寝のように押し込められる狭い部屋だったが、残りの僅かな銅貨でなんとか拠点を確保することができた。
拠点となる部屋を確保した俺は、バスケ部で活躍していた木村健一を引き連れ、再び冒険者ギルドへと向かった。
大人数でゾロゾロと歩けば悪目立ちする。
少数で情報を集めるのが、リーダーとしての合理的な判断だ。
だが、ギルドの壁に貼られた掲示板の前に立った瞬間、俺は息を飲んだ。
紙に書かれた文字が、まるで奇妙な記号の羅列にしか見えなかったからだ。
言葉は日本語で問題なく通じるのに、文字までは翻訳されないという不都合な現実に直面し、俺と木村は呆然と立ち尽くすしかなかった。
* * *
「おや、困っているのかい? 新顔だな。文字が読めないんだろ?」
声をかけてきたのは、薄汚れた革鎧を纏ったD級冒険者のモリッチだった。
話しやすい雰囲気の男だったので相談することにした。その道の先駆者と仲良くなっておくに越したことはない。
「ああ――俺たち、この町に来たばかりでさ」
俺は持ち前のコミュニケーション能力を発揮し、明るい態度でモリッチとの距離を縮めた。
状況を説明し、資金難で困っていることを口にすると、モリッチはニヤリと口角を上げた。
「そうか、そいつは災難だったな。よし、俺が金を貸してやろう。銀貨百枚だ」
「ひ、百枚も……!? 本当にいいのか?」
「なあに、将来ある若者への投資さ。出世したら返してくれればいい」
モリッチはギルドの受付で何やら手続きをして、すぐに戻ってきた。
その間に俺は健一と相談した。
「なあ、いくらなんでも怪しくないか?」
「いや、あれはきっと“お助けキャラ”だ。この世界に俺たちを転移させた神様か何かが、この窮状を見かねて手助けしてくれたんじゃねーかな」
「そう言われてみれば、そうかもな。何かこの世界、ヘルモードが過ぎるしなー」
「そうそう、異世界転移の主人公と言えば、このくらいの優遇は当たり前なんだって」
「銀貨百枚って言っても、十六人で割れば一人当たり銀貨六枚ちょっとの借金だ」
「レベルを上げれば、あっという間に返せる額じゃん」
そうした打ち合わせの末、楽に返せると判断し借りることに決めた。
「ほれ、受け取りな」
「ありがとうございます」
あっさりと手渡されたズシリと重い袋。
俺は自分のコミュ力の高さと運の良さに、内心で歓喜の声を上げていた。
借りた銀貨百枚を握りしめ、俺たちはすぐさま武具店へ向かった。
戦力となる男子四人分――俺、木村、西村、三木の武具と、お調子者の松井のための手頃な盾を購入する。
残りの金は全員の当面の生活費として残しておく計算だ。
* *
宿に戻り、揃えた装備を披露すると、皆から安堵の混じった歓声が上がった。
そんな中、疑問を呈する者もいる。
「ちょっと、それを買うお金はどうしたのよ?」
「冒険者ギルドで借りたんだ」
「借金かー、やだなー」
「でもまあ、きちんとしたところで借りたんだったら」
「だよねー、現状手詰まりだし、しゃーないだろ」
「そんなことより、今後の方針を決めるぞ」
俺は全員を集め、冒険者ギルドで得た知識をもとに今後の作戦を提示した。
「いいか、みんな。この世界では戦闘に参加していなくても、パーティを組んでいれば経験値が入るらしい」
「まずは十六人全員で安全にレベルを上げて、基礎戦力を底上げする。ある程度強くなってから、グループに分かれて本格的な活動に入ればいい」
俺の提案に、誰もが納得の表情を浮かべた。
自分が主導権を握り、全員を導いているという万能感が、胸の奥の焦りを完全に塗り潰していった。
* * *
翌朝、俺たちは町の東側に広がる平原へと繰り出した。
ギルドの情報によれば、この東の平原にはホーンラビットやグリーンスライム、小型のゴブリンといった最弱レベルのモンスターが出るそうだ。
東門を抜け、青々とした草が生い茂る街道を少し外れた平原を進む。
隊列の先頭を歩くのは、盾を持たせた松井だった。
「ヘイトは俺が全部引き受けてやるよ! 後ろからバシバシ倒してくれよな!」
お調子者の松井は、木の盾を大袈裟に叩いておどけてみせた。
松井が敵の攻撃を引き付けている間に、装備を整えた俺たち四人で一気に叩く――完璧な作戦のはずだった。
ガサリ、と前方のアザミの茂みが大きく揺れた。
「出たぞ! スライムか、ウサギか!?」
松井が意気揚々と腰を落とし、盾を構える。
俺も腰の剣の柄に手をかけ、一歩踏み出そうとした。
だが、茂みを押し分けて姿を現したのは、俺たちの甘い予測を根底から砕く異形の怪物だった。
大型のハイエナを一回り大きくしたような禍々しい体躯。
その背中から後頭部にかけては、光を吸い込むような漆黒の鱗がびっしりと覆っている。
額には短い角が生え、歪んだ顎からは粘り気のある緑色の毒液がぽたぽたと滴り落ちていた。
ヴァイパーハウンド――毒角犬。
「ひっ……あ……!」
松井の口から、情けない悲鳴が漏れた。
全身の毛穴が総立ちになり、氷水を直接脳に流し込まれたような恐怖が俺の身体を一瞬で麻痺させる。
最弱のモンスターが出現する平原――しかし、出現率は低いが、それ以外にもモンスターはいる。
ギルドの情報で存在は把握していたが、実際に目の前にすると恐怖と嫌悪感が桁違いだ。
(いきなりこんな奴が出るなんて、くそっ)
思考が凍りついた、ほんの一瞬の間だった。
黒い影が弾けた。
* *
「ガアアッ!」
凄まじい脚力で地を蹴ったヴァイパーハウンドが、一直線に松井へ飛びかかった。
松井が構えた盾ごと押し倒され、生臭い風が吹き抜ける。
「ぎゃあああああっ! 助け……っ!?」
次の瞬間、バキリと肉と骨が砕ける不快な音が平原に響き渡った。
ヴァイパーハウンドの鋭い牙が、松井の首筋を深々と噛み千切っていた。
噴き出した鮮血が鮮やかな緑の芝生を汚し、松井の体が痙攣するように跳ね上がる。
「ま、松井……!?」
木村の声が裏返る。
助けに入ることすらできず、俺たちはただ圧倒的な生殺与奪の光景に打ちのめされていた。
ガサ、ガサガサッ。
絶望に染まる俺たちの耳へ、容赦なく次の絶望が届く。
茂みの奥から、さらに一匹のヴァイパーハウンドがぬっと姿を現した。
緑の毒液を滴らせた二匹の角犬が、血の匂いに興奮した瞳で俺たちを睨みつける。
(首を噛み千切られたら一撃で殺される。かすり傷でもヤバい。感染症とかになるんじゃないか? 爪で引っ掻かれても終わりだ。攻撃を受けないように戦わないとって――ムリムリ、相手は二匹もいるんだぞ)
だめだ。
勝てるわけがない。
レベル1の俺たちが、こんな化け物に立ち向かえるはずがない。
「逃げろっ!」
喉を引き裂くような叫び声を上げ、俺は松井の死体を置き去りにしたまま、なりふり構わず背を向けて走り出していた。




