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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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貴族と仕事07

 調査に行くための荷物を導師にきいた。すると、導師が執事と共に必要な物を手配したらしい。なので、執事が頼んだ商人の持ってくる荷物を持てばいいだけだった。

 僕はカリーヌから借りている冒険者の本の内容を思い出す。しかし、必要な道具は物語の中では詳しく出てこない。なので、荷物の量や種類はわからなかった。

 後日、執事が頼んでいた道具が届いた。

 玄関先に商人が置いて行った荷車がある。

 導師はその荷物を選別する。そして、僕は渡された荷物を空間魔術の倉庫に放り込んだ。

 その光景に執事は驚いていた。

 食料以外は全て倉庫に消えた。

 執事には普通の光景ではないようだ。口を開けて驚いている。

「後は食料か。ロドリグ。凍らせておいてくれ。後で回収する」

 導師は荷物を片付けると執事に命令した。 

「……はいっ。わかりました」

 我に返った執事の挙動は変だった。


 約束の日になると、導師と僕。メイドのノーラの三人で出発した。

 家のことは全て執事に任せたようだ。

 門番を一人御者にして、馬車で正門を通って城下町を出る。そして、待っていた魔術師の作ったゲートに入った。

 僕は他人のゲートに入るのは怖い。一度の失敗でどこに飛ばされるのかわからないからだ。

 僕はゲートを通る一瞬は目を閉じていた。

「ほう。未開発地区にしては、人が多いな」

 導師の関心する声が聞こえた。

 僕は目を開けて窓の外を見る。そこは活気にあふれていた。

 何台もの荷馬車が止まり、荷物を下ろしていた。

 そして、大型テントが何十も建っている。そして、人が荷物を持って出入りしていた。

 大規模キャンプになると聞いていたが、ここまで大きくなるとは思いもしなかった。

「導師様。一週間で終わるのですか?」

 ノーラは心配していた。

「わからん。途中で、補給に戻るかもしれん。まあ、一週間は覚悟してくれ」

「はい。わかりました」

 馬車は止まった。そして、馬車のドアがノックされた。

「何の用か?」

 導師はいった。

「ラーズニチュカ伯爵の使いです。逗留場所は確保してあるので付いて来ていただけませんか?」

 導師はドアを開けた。

「どこになる?」

 導師は顔を見せた男にいった。

「あちらです。伯爵の横になりますがよろしいですか?」

「他に貴族はいるか?」

「男爵様が数人ほど」

「わかった。そこに行く。御者に伝えてくれ」

「わかりました」

 使いの男は馬車のドアをゆっくりと表から閉じた。

 僕は貴族の大変さを感じる。どこにテントを張るかでもめるからだ。


 僕とノーラと御者でテントを張った。

 導師は監督と貴族の建前を見せている。貴族が雑用に手を出したら、貴族として問題だからだ。

 テントを張ると、中にいすや机を配置する。そして、体面だけは出来上がった。

「貴族は寝る時は、どうするんですか?」

 僕は導師にきいた。

「お前の作った寝袋で寝るぞ」

「貴族としていいんですか?」

「私は公爵だ。貴族のテントの中を観察するようなバカはいないだろう」

 テントの頂点に旗がある。それには導師の家紋が飾られている。なので、よほどのことがない限り、勝手にテントの中を見ない。いるとしたら、バカか酔っ払いくらいだ。

「今日は準備で終わりだ。明日から仕事を始める。ノーラ。頼むぞ」

「はい」

 ノーラは元気よく答えた。

 御者は帰る時に来ると約束して帰っていった。


 翌日、朝食を食べると調査団と合流した。

 話し合っているのは冒険者なのだろう。軽装な防具を着て、手には斧や剣を持っていた。

「初めまして。調査協力を受けたザンドラ・フォン・ランプレヒトだ。よろしく頼む」

 一同の声が止まった。

「もしかして、伯爵様の親族ですか?」

「いや、違う。公爵だ」

 一同の顔色が変わった。

「公爵が来るなんて聞いてないぞ」

 ボソッと一人の男が声を漏らした。

「しっ。漏らすな」

 剣を下げている女傑はいった。

 漏らした男は口を手で隠した。

「気にしないで欲しい。私は依頼されたから来た。物好きな貴族と思ってもらえると助かる。それに一緒に仕事をする仲間だ。気軽に導師といって欲しい」

「それで、導師様の担当は何ですか?」

 意志の強そうな目をしている。身なりは防具で固めているが、体格からケンカは強そうだった。

 後で聞いたのだが、この男が冒険者のリーダーだった。

「魔術だ。それと魔道具も扱う。これでも、火帝級魔術師だ。もちろん、コネで取った階級ではないと弁明はさせてもらう」

 導師は挑発的な笑みを浮かべた。

「なるほど。どういう経緯いきさつかわかりませんが、頼もしい助っ人なのは変わらないですね。よろしくお願いします。それで、さっそくですが、遺跡の内部の安全確認をしてもらえますか? 私たちでは見落としもありますから」

「もちろん。そのために来たからな」

 リーダーは皆を見回した。一同は納得したのか、リーダーにうなずいた。

「今回は安全の確保だ。一度、捜索したが、見落としたトラップがあるかもしれない。だから、初めての遺跡と考えて捜索してくれ」

 導師を入れた一同は遺跡に向かった。

 僕も付いていこうとしたが、一人の男に止められた。

「シオン。テントで待っていろ。お前の出番は後だ」

 導師にも止められた。

 僕は仕方なくテントに帰ってノーラとお茶をすることになった。


 テントの外にイスと机を並べて紅茶を飲んでいると、一人の騎士らしい男が来た。

「こんにちは。うちの特産品のブドウを使ったクッキーです。シオン・フォン・ランプレヒト男爵様に食べてもらいたいと伯爵様にいわれました。どうぞ、お納めください」

「導師でなく、僕ですか?」

「はい。今は公爵様は遺跡で仕事をしていますから。後ほど、また持って来ます」

 騎士はいった。

「ありがとうございます。導師も喜ぶと思います」

 僕は包みを受け取った。

 騎士は一礼すると帰っていった。

「どんなお菓子ですか?」

 ノーラは今にでも食いつきそうな顔でいってきた。

 僕は包みを開ける。そこにはクッキーが並んで収めてあった。

「さっそくですが、いただきましょう」

 ノーラはいった。

「そうだね」

 僕はクッキーを皿に並べて紅茶と共に食べた。

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