貴族と仕事01
僕は七歳になった。
導師は初めて誕生会を開いてくれた。
ケーキに七本のろうそくを立てて火を点け、僕はそれを吹いて消した。
拍手が起きる中で、僕は恥ずかしくもあるが嬉しくもあった。
「おめでとう」
カリーヌにいわれた。
他にもカリーヌの父であるジスラン・ラ・ヴィアルドーとその妻であるロズリーヌ。レティシアと父親のケヴィン・ディ・ローランサンと妻のアルメルがいた。
皆が拍手してくれた。
そして、ノーラがケーキを切り分けてお茶と共に楽しんだ。
「変わった誕生日パーティーだね」
ジスランは導師にいった。
「ああ。シオンは死んだ母親にしてもらったらしい。母親は他国の文化を知っていたようだ」
「そうなのかい? ろうそくを吹き消すような誕生日パーティーは知らないよ」
「なら、知らない国だったんだろう。気にするな。ちょっとした儀式の違いだ」
導師はしれっといって紅茶をすすった。
事の発端は僕のマメ知識を導師に披露したからだった。
七五三という祝い事がある。それは、七歳になると神の子でなくなり、幼いゆえの病気で死ぬことはなくなると教えた。
それで、導師は七歳になる時に誕生日パーティーを開くといって、僕が知るカリーヌとレティシアの家族を呼んだのだ。
本当なら神社に参らないとならないのだが、ここには神社はない。その代わり、教会はあった。
「やあ。シオン君。おかげで事業は成功しているよ」
ジスランのいう事業とは公的の博打だろう。カジノを開いたと聞いていた。
「それはよかったです。ですが、自殺する人とか出てませんか?」
ジスランは気まずい顔をした。
その顔を見ると、死んだ人がいるようだ。カジノにはありがちな話だからだ。
「……でている。大負けした客が自殺するんだ」
「それなら、負けて死にそうな人をなぐさめてくれる人を雇うといいですよ。死にそうな人は側に寄り添って、なぐさめてくれる人がいると救われますから」
「そうなのかい?」
「ええ。カジノ街にはそういう人が必要ですよ」
「わかった。何人か雇ってみる。……それより、個人でできる遊びはないかな? 他人と関わらない気楽な遊びが欲しいみたいだ」
「それなら、スロットですね。魔道具の遊びです。でも、魔力の貯蓄は禁忌なので、魔力を流す人が必要になりますよ」
「それでもいい。試作品を作ってくれ」
「いいですけど。時間がかかりますよ。魔道具の知識はまだ初心者ですから」
「それでもいい。頼む」
「はい。でも、時間をください。僕は貴族として学ばなければならないことが多いですから」
「うん。それでいいよ」
ジスランに押し切られた。
「おい。シオンは忙しいんだ。仕事を振るな」
導師は怒った。
「貴族のたしなみなら、君の養子になった時に終わっているだろう? 公爵の子を笑う貴族は少ない。それに社交界デビューをするには幼すぎる。笑う方がバカにされる」
ジスランは堂々といった。
なぜ、こんな時は堂々としているのかわからない。
「確かにそうだが、たまには自分で考えろ。シオンの知識を当てにするようだと、シオンに嫌がられるぞ」
導師はクギを刺した。
「わかっているよ。だから、トランプの特許はシオン君の名義にしたんだ」
僕は知らないことだった。
「どういうことですか?」
僕はジスランにきいた。
「あれ? 知らなかったのかい? トランプ本体の特許は君に。トランプでの遊び方は僕にしたんだ。だから、トランプが売れれば、君の懐にお金が入るはずだよ?」
僕のお財布は導師が管理している。なので、初めて聞いた話だった。
導師を見ると、導師はコホンとセキをした。
「確かに金は入っている。だが、子供が使う金額ではない。だから、いわなかった」
導師はいいにくそうにいった。
「もしかして、それで精神感応金属であるノクラヒロを買えるんですか?」
僕はきいた。
「少量だけどな……。だから、いいたくなかったんだ。お前は興味には使う金額を考えないからな」
僕は興味だけで動いたつもりはない。だが、使えるお金があるのなら、魔術の触媒などを買いたい。
「魔道具とか触媒を買いたいです」
僕は導師にいった。
「今はまだ早い。それに金額を知らないからいえる言葉だ」
魔道具などの道具は高いようだ。
「この子にはお金の使い方を教えた方がいいね。おこづかいは必要だよ」
ジスランに援護された。
「貴族の買い物は、まだ早い。商家とのやり取りを知らん。無理な注文だ」
導師はいった。
「まあね。でも、いつかは必要になる。早めに教えた方がいいよ。この子は考えがおよばない発想をするから」
「わかっているよ。これからは商家とのやり取りにつき合わせる」
「うん。まあ、仕方ないね」
ジスランはあきれたように笑っていた。
レティシアの父親であるケヴィンはジスランに話しかけていた。
どうやら、悩み事があるようだ。だが、僕は聞かない振りをした。
問題の中身はレティシアのことだからだ。
レティシアは貴族でありながら貴族を嫌っている。それが親として問題視しているようだ。
それで、ジスラン経由で僕に相談したかったようだ。
なぜ、僕に相談したいのかわからない。だが、ケヴィンの顔は不安を浮かべていた。
父であるケヴィンの判断は間違っている。貴族のことは僕より導師が適任だった。導師は公爵である。生まれの苦労をよく知っているはずだ。
僕は父親二人がこそこそ話しているのを見た。
ジスランは僕を見た。
『レティシア様が貴族嫌いなのは知っています。でも、相談相手は導師が適任だと思います。公爵ですから』
僕はジスランにコールの魔術で伝えた。
ジスランは僕を見てうなずいた。
その後はジスランはケヴィンを説得して、後日に導師に相談するように勧めた。
ジスランは今日が僕の誕生日をわかって配慮してくれたようだ。
ケーキを食べ終わると、遊戯室に移動した。
そして、ジスランが仕切りで、バカラやブラックジャックをしてはしゃいで楽しんだ。




