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戦略級魔法使いの日常  作者: 氷河久遠
第一部

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37/52

貴族と仕事01

 僕は七歳になった。

 導師は初めて誕生会を開いてくれた。

 ケーキに七本のろうそくを立てて火を点け、僕はそれを吹いて消した。

 拍手が起きる中で、僕は恥ずかしくもあるが嬉しくもあった。

「おめでとう」

 カリーヌにいわれた。

 他にもカリーヌの父であるジスラン・ラ・ヴィアルドーとその妻であるロズリーヌ。レティシアと父親のケヴィン・ディ・ローランサンと妻のアルメルがいた。

 皆が拍手してくれた。

 そして、ノーラがケーキを切り分けてお茶と共に楽しんだ。

「変わった誕生日パーティーだね」

 ジスランは導師にいった。

「ああ。シオンは死んだ母親にしてもらったらしい。母親は他国の文化を知っていたようだ」

「そうなのかい? ろうそくを吹き消すような誕生日パーティーは知らないよ」

「なら、知らない国だったんだろう。気にするな。ちょっとした儀式の違いだ」

 導師はしれっといって紅茶をすすった。


 事の発端は僕のマメ知識を導師に披露したからだった。

 七五三という祝い事がある。それは、七歳になると神の子でなくなり、幼いゆえの病気で死ぬことはなくなると教えた。

 それで、導師は七歳になる時に誕生日パーティーを開くといって、僕が知るカリーヌとレティシアの家族を呼んだのだ。

 本当なら神社に参らないとならないのだが、ここには神社はない。その代わり、教会はあった。

「やあ。シオン君。おかげで事業は成功しているよ」

 ジスランのいう事業とは公的の博打だろう。カジノを開いたと聞いていた。

「それはよかったです。ですが、自殺する人とか出てませんか?」

 ジスランは気まずい顔をした。

 その顔を見ると、死んだ人がいるようだ。カジノにはありがちな話だからだ。

「……でている。大負けした客が自殺するんだ」

「それなら、負けて死にそうな人をなぐさめてくれる人を雇うといいですよ。死にそうな人は側に寄り添って、なぐさめてくれる人がいると救われますから」

「そうなのかい?」

「ええ。カジノ街にはそういう人が必要ですよ」

「わかった。何人か雇ってみる。……それより、個人でできる遊びはないかな? 他人と関わらない気楽な遊びが欲しいみたいだ」

「それなら、スロットですね。魔道具の遊びです。でも、魔力の貯蓄は禁忌なので、魔力を流す人が必要になりますよ」

「それでもいい。試作品を作ってくれ」

「いいですけど。時間がかかりますよ。魔道具の知識はまだ初心者ですから」

「それでもいい。頼む」

「はい。でも、時間をください。僕は貴族として学ばなければならないことが多いですから」

「うん。それでいいよ」

 ジスランに押し切られた。

「おい。シオンは忙しいんだ。仕事を振るな」

 導師は怒った。

「貴族のたしなみなら、君の養子になった時に終わっているだろう? 公爵の子を笑う貴族は少ない。それに社交界デビューをするには幼すぎる。笑う方がバカにされる」

 ジスランは堂々といった。

 なぜ、こんな時は堂々としているのかわからない。

「確かにそうだが、たまには自分で考えろ。シオンの知識を当てにするようだと、シオンに嫌がられるぞ」

 導師はクギを刺した。

「わかっているよ。だから、トランプの特許はシオン君の名義にしたんだ」

 僕は知らないことだった。

「どういうことですか?」

 僕はジスランにきいた。

「あれ? 知らなかったのかい? トランプ本体の特許は君に。トランプでの遊び方は僕にしたんだ。だから、トランプが売れれば、君の懐にお金が入るはずだよ?」

 僕のお財布は導師が管理している。なので、初めて聞いた話だった。

 導師を見ると、導師はコホンとセキをした。

「確かに金は入っている。だが、子供が使う金額ではない。だから、いわなかった」

 導師はいいにくそうにいった。

「もしかして、それで精神感応金属であるノクラヒロを買えるんですか?」

 僕はきいた。

「少量だけどな……。だから、いいたくなかったんだ。お前は興味には使う金額を考えないからな」

 僕は興味だけで動いたつもりはない。だが、使えるお金があるのなら、魔術の触媒などを買いたい。

「魔道具とか触媒を買いたいです」

 僕は導師にいった。

「今はまだ早い。それに金額を知らないからいえる言葉だ」

 魔道具などの道具は高いようだ。

「この子にはお金の使い方を教えた方がいいね。おこづかいは必要だよ」

 ジスランに援護された。

「貴族の買い物は、まだ早い。商家とのやり取りを知らん。無理な注文だ」

 導師はいった。

「まあね。でも、いつかは必要になる。早めに教えた方がいいよ。この子は考えがおよばない発想をするから」

「わかっているよ。これからは商家とのやり取りにつき合わせる」

「うん。まあ、仕方ないね」

 ジスランはあきれたように笑っていた。


 レティシアの父親であるケヴィンはジスランに話しかけていた。

 どうやら、悩み事があるようだ。だが、僕は聞かない振りをした。

 問題の中身はレティシアのことだからだ。

 レティシアは貴族でありながら貴族を嫌っている。それが親として問題視しているようだ。

 それで、ジスラン経由で僕に相談したかったようだ。

 なぜ、僕に相談したいのかわからない。だが、ケヴィンの顔は不安を浮かべていた。

 父であるケヴィンの判断は間違っている。貴族のことは僕より導師が適任だった。導師は公爵である。生まれの苦労をよく知っているはずだ。

 僕は父親二人がこそこそ話しているのを見た。

 ジスランは僕を見た。

『レティシア様が貴族嫌いなのは知っています。でも、相談相手は導師が適任だと思います。公爵ですから』

 僕はジスランにコールの魔術で伝えた。

 ジスランは僕を見てうなずいた。

 その後はジスランはケヴィンを説得して、後日に導師に相談するように勧めた。

 ジスランは今日が僕の誕生日をわかって配慮してくれたようだ。

 ケーキを食べ終わると、遊戯室に移動した。

 そして、ジスランが仕切りで、バカラやブラックジャックをしてはしゃいで楽しんだ。

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