27 高峰は論理派
「本当に、本当に、哀川さんと連絡先を交換して良かった……!」
藤堂はスマホを大事そうに抱きしめていた。
「そ、そうだね……今日もこうして臨時で生徒会で集まるって連絡とれたもんね……」
ゆいは藤堂の様子を不審に思った。生徒会室での藤堂は冷静沈着そのものだからだ。
「これで、生徒会室の外で哀川さんに会わなくて済む……! 素晴らしい!」
「ああ、そういうことか……呪われた状態の藤堂君は、なんだか、すごいもんね……」
藤堂は呪われた軟派な自分をゆいに見られたくないようだった。
「定休日だが今日集まったのは他でもねぇ。生徒総会のことだ」
高峰は上機嫌で椅子に座り、足を組んだ。
「いやー、さすがは俺といったとこか。なんとなんと、来週の金曜日に生徒総会を開くことが許可された!」
高峰はしたり顔をした。
「すごいです……! 急すぎるので、無理かと思っていましたけど……!」
「まあな! 俺の類まれなる交渉能力にかかりゃ、教師なんぞイチコロだ!!」
高峰は得意げに笑った。
「そうですね。呪われた高峰先輩は品行方正、優等生そのものですからね。そんなひとにお願いされたらいいようにしかとられないでしょう」
藤堂はうんうんと頷いた。
「なっ……! お、お前! まるで本当の俺じゃあ無理みたいな言い方じゃねえか!」
「無理か否かは検証できないのでなんとも言えませんが、可能性で考えれば、勝算は呪われた先輩のほうにあるかと思います」
平然という藤堂に高峰は目の端を吊り上げた。
「お前はデリカシーってもんがねぇな……」
ゆいはどっちもどっちだと思った。
「まあいい。で、だ。お前ら! 生徒総会まで一週間しかねぇから、今日からじゃんじゃか資料を作るぞ!」
高峰は背後に隠していたパソコン二台を、ゆいと藤堂に差し出した。
「え。私たちが作るんですか……?」
ゆいは今までの人生でほとんどパソコンを使ったことがなく、ましてや、文書を作ったことなどないため、焦った。
「わ、私、やり方とか、全然わからないんですけど……」
不安げなゆいに、高峰はぽんと軽くゆいの肩に手を乗せた。
「安心しろ。生徒会長直々に、ご教授してやるから」
高峰は口の端を上げた。その笑みにゆいは嫌な予感がした。
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「おいっ! そこはそうじゃなくて、右クリックで貼り付けだろっ! さっきも言ったじゃねぇか」
高峰はゆいと藤堂に指示をしながら、グラフの作り方を教えていた。言葉尻は相変わらず悪く、その上スパルタであるため、ゆいはすでに疲れ切っていた。
「は、はあ……すみません……」
ゆいはふと疑問に思った。
現在、ゆいと藤堂は校則の変更の利点についての資料を作成している。その内容は、もちろん変更点の概要を含んでいるが、それ以外にも数値データを用いていた。変更の利点を示すだけにも関わらず、グラフも使っていることに、ゆいはそこまでする必要はあるのかと思ったからだ。
「高峰サン、どうして衣替え日の廃止についてまとめるのに、私は過去三十年の気温データのグラフを作っているんですか……?」
ゆいは先ほどから、高校のある地区の平均気温のデータをグラフにしている。
「んなもん、衣替え日を決めた昔と比べて、いまが暑くなったって言うだめだろ。暑くなってんのに、ご丁寧に根拠もねぇ衣替え日なんぞ守るのはアホだって話だ」
「あ、ああ、なるほど……」
高峰の言う通り、現在指定されている衣替え日では、まだ暑い十月の初めにはブレザーを着用しなければならないことになる。ゆいは特に気にも留めなかったが、たしかに暑いと感じながらブレザーを着ることは嫌だと思った。
「それに、こうして数字を突き付けられたら文句の言いようもねぇだろ? 相手をねじ伏せるときは確実に、だ」
高峰は黒く笑った。
「なんだか高峰サン物騒ですけど、意外に論理派ですね……」




