26 二階の行動の理由
ゆいは二階が高峰と衛藤と知り合いであることに驚きを隠せなかった。
かつてのクラスメイトである高峰に不信任権を突き付けるということが、そして間接的にマサキを辞めさせるということが、ゆいには理解できなかった。
「あら、驚いた? もしかして、どうして元クラスメイトがあんなことするのかって思ったかしら」
二階はゆいの驚いた理由を言い当てた。
「そ、それは、まあ……」
ゆいはちらりと二階に視線を向けた。
二階は少し寂しそうな顔をしていた。
「……衛藤マサキが普段どんな学校生活を送っているか知ってるかしら?」
「まあ、あの見た目を裏切らない素行……ではありますよね……」
ゆいは控えめに言った。
「私ね、耐えられないのよ」
二階は肩を丸めて俯いた。
「マサキ、生徒会に入ってから、ひとが変わったように、あんなふうになって……前のマサキはあんなひとじゃなかったのに……」
本来の柔和なマサキと呪われた粗暴なマサキとでは、天と地ほど気質が異なるので、二階が戸惑う気持ちをゆいは想像できた。
高峰のように元がよろしくないひとが優等生になることは歓迎されるが、マサキのようにその逆は受け入れられない。
ゆいは呪いのせいだと二階に伝えようとした。けれど、言葉にしようとすると、声がでなくなる。
「いまのマサキ、周りになんて言われているか知ってる?」
ゆいは首を振った。
「生徒会の面汚しって……」
二階は唇を強く噛んだ。
「私には、マサキに何があったのかはわからない。でも、マサキは生徒会に入ってからあんなふうになってしまったのよ? そんなの、生徒会で何かあったとしか思えないじゃない……高峰にきいてみたけど、何も答えてくれないし、だから……」
「原因と考えられる生徒会を辞めれば、マサキ先輩は戻るかもしれない……」
ゆいは呟いた。
「ええ。だから、マサキを辞めさせるために、強硬手段にでたの……」
二階は初代生徒会長の呪いについては知らないが、二階の思惑は正しいのかもしれない、とゆいは思った。
「……そういうことだったんですね」
ゆいは二階の行動に腑に落ちた。
「……哀川さん。いまの話、マサキと高峰には内緒にしてね……」
二階は不安げにゆいを見た。
「は、はいっ……! で、でも、生徒会の私になんで話してくれたんですか?」
「どうしてだろうね。でも、誰かに話したかったのかもしれない。あなたみたいな、優しそうなひとに」
二階は目を細めて小さく笑った。
「や、優しいだなんて……! 私はただ、自信がなくて、おどおどしているだけです……今日だって! 曖昧な態度をとっていたから、雑用をまかされるし……」
ゆいは目を泳がせた。面と向かって褒められるのは恥ずかしかったからだ。
「あなたは自分のことを弱気だって思っているかもしれないけど、それが誰かを救うこともあるんじゃないかしら?」
二階は微笑みかけた。
「で、でも! 優しいということなら、二階先輩のほうが優しいじゃないですか……! マサキ先輩のために、生徒議会まで動員するなんて……!」
ゆいはふと気づいた。
「あれ、もしかして……二階先輩、マサキ先輩のこと、好きだったり……?」
「——そ、そんなんじゃないわよ!」
二階は顔を真っ赤にして、大きく首を左右に振った。
「わ、わかりやすい……!」
「哀川さんに言われたくない!!」




