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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第86話 5人の悪ガキ戦隊

 カニって食い過ぎると手も口も、何なら息もカニっぽくなる。家の中なら2日は部屋がカニ臭くなるぞ。まあ、普通ならそんな勢いでカニを食う事は無いだろう。


 だが俺は2度ほどある。1度目は懸賞けんしょうで大量に当たった時だ。俺じゃない、俺はギャンブルはしない。懸賞がギャンブルかは、ちょっと置いとく。ギャンブルの街に住んでいた事はあるが。


 懸賞に応募したのは従妹の美咲だ。あいつの運はどこかおかしい。家に、いや、親父さんの家にあった最新のゲーム機も何かの雑誌の懸賞で当てていた。そう言えば中学生の時に、親父さんが競馬で万馬券、つまり100倍以上になるのを当てたのも美咲のおかげだった。親父さんが新聞を見ながらウンウン言っていた時に、あいつが適当に選んだやつが当たった。理由を聞いたら「馬の名前が可愛かった」だそうだ。おすそわけで5千円貰ったから文句は無い。文句は無いが気持ち悪い。


「ハルキー!たぶんペタのとったやつだー!たべろー!」


 ペタが俺の口に殻ごと石ヤドカリを突っ込もうとする。ペタも狩人の皆と一緒に獲りに行っていたのは知っているが、多分それは違う。広場の端には石にしか見えないが大量の殻が積んである。あの数の中でお前の獲ったやつがピンポイントで当たるとは思えないぞ。


 あと、この殻は椅子にも丁度良い。食い過ぎで腹がしんどい俺には最適だ。カニじゃないが味は似ている。だからこれをカニ食い過ぎの2回目と認定する。


 そろそろ勘弁してほしい。ペタに突っ込まれた石ヤドカリの脚を一本くわえて誤魔化しておこう。これ以上食ったらカニが嫌いになりそうだ。




「ハルキ様あ、今回は素晴らしい収穫ですう!ありがとうございますうう!」


 リカータさんが抱きついてきた。うあ、この人、酔ってる。あ、でも全身ミーアキャットのリカータさん、モフッとして気持ちいいかもしれない。


「うあああああ!ぬあああああ!」


 ペタがリカータさんを引っ張って引きがしてくれたが、もうちょっとなら良かったのに。ペタとは違って全身モフだ。なかなか出来ない経験だった。




 リカータさんは、この石ヤドカリの味をかなり気に入ったらしい。町で売りさばく気満々だ。ただ、鮮度を保つ為にどうやって運ぼうかと困っていたので、カニとかを生きたまま輸送する方法を教えた。


 多分、ヤドカリも同じだと思うが、エビやカニは陸上で活動していてもエラ呼吸だ。例えば普通に箱にでも入れて運べば、町に着くまでにエラが乾いて窒息してしまう。他にも極端な暑さ寒さにも弱い。そして死んだら一気に味が落ちていく。腐るのも早い。


 冷凍でもできればいいんだが、それが出来る設備は俺の知る限り、ウチの部屋の冷凍庫だけだ。


 だから、おがくずを使う方法を提案しておいた。木を切ったり削った時に出る屑だ。この中に入れて運べばエラの湿った状態が長持ちするし、温度変化も少ない。俺の動物知識は魚介類にも及ぶぞ。水族館も大好きだ。美味そうだし。


 まあヤドカリを運ぶ話は聞いた事ないので上手く行くかは知らない。そこは色々試して欲しい。高くついても、この味ならお貴族様が高く買ってくれるだろう。




 そして俺から離れたリカータさんは手近にいた男性に手当たり次第に抱きついている。あの人は酔うと面倒なんだな。


 まあ毛有りの奴らは嬉しそうだから良いか。俺には分からないけど、抱きつかれて嫌な気になるようなビジュアルじゃないんだろうな。本当に分からないよ?疑うならミーアキャットを抱き締めてみるがいいさ。そして噛まれればいい。


「ハルキさ~ん」


 ペタのお母さんがフラフラと近付いてくる。まさか酔っているのか?リカータさんと同じタイプなのか!?


「ハルキ!あっちいくぞ!」


 ペタに手を引っ張られた。あああ、俺のマリア様が遠ざかっていく……






 広場はかがり火で明るく照らされている。少し離れて見ると本当に村の住人全てが集まってるんだなって分かる。そこに商人と護衛までいるから、かなりの人数になっている。皆、石ヤドカリと酒で盛り上がっている。俺より若そうな兄ちゃんも飲んでるなあ。こっちはいくつから飲んで良いんだろう。


 ペタに引っ張って来られた広場の端の方は少し薄暗い。


「みんな、おまたせだ」


 この村の夜は町より早い。そして子供は更に早く寝る。ペタだっていつもはもう寝ている時間だ。


「おそいぞー」「ねむい」「ねむいね」「ねちゃだめ、これからなんだから」


 だから、ペタ以外の子供達はもう家で寝ているものだと思っていたが。


「ハルキ、ひみつのばしょに行くぞ」


 おい、ペタ軍団勢揃いじゃないか。なんだこりゃ。




 狐族の村ペタ軍団本部の構成員を紹介しよう。


 まずはリーダー、天然食欲怪獣ペタ。


 あと、ペタと同じぐらいの歳の男の子。少し年下のお姉ちゃんと弟の双子。二卵性なんだな。で、さらに下の小さい女の子。合わせて5人の悪ガキ戦隊だ。可愛いなあ。


 何か子供だけの遊びでもするんだろうか?もう寝る時間だろうに。


 それに、もう1つ言いたい事がある。なぜこのペタ軍団に俺が混ざっている。子供の中に大人が1人。それが俺だ。


「えーと今から何すんのかな?お前ら」


「兄ちゃん、しずかにしろよ」


 ペタぐらいの男の子に注意された。更に、


「しー」


 口元に指を当ててそう言うのはペタじゃない。この中で一番小さい女の子だ。えー、俺、この子にまで注意されるポジションなの?


 ペタ軍団の序列じょれつが分からない。確か前に遊んでやった時には「まほうつかいさま」とか言われてた気がしたんだが。


 俺は子供ってのも好きだ。小動物みたいに小さいし構ってやればすぐなつく。


 ただ俺の子供に対する態度は、子供と一緒になって遊んでるって感じに見えるらしい。そんな事を美咲に言われた記憶がある。じゃあ普通はどう接するんだ、俺は他のやり方を知らないぞ?


 精神年齢が近いって事なんだろうか。うん、だったらこの扱いも分かる。大人というより友達扱いだな。威厳ゼロか。


 父親とかになったら苦労しそうだ。だが、まだその予定は無い。こっちがどうかは知らないが、日本では18にならないと結婚できないはずだ。俺はまだギリギリ17だ。誕生日の12月までは車の免許も取れないぞ。精神年齢がナンボのもんだ。未成年バンザイ。


「ハルキ、だんたいこうどうを、みだしちゃダメだぞ」


 ペタにまで注意された。見れば子供達は移動を始めている。そっと、広場から西に向かっている。


 自分が大人なのか子供なのか分からなくなってきた。だがペタ軍団の足を引っ張る存在ではあるようだ。ショックだ。




 いや、切り替えて考えよう。こんな時間……と言っても夜8時ぐらいだが、まあ暗くなってから子供だけで遊ぶってのは危ない。本来の保護者達は石ヤドカリと酒で大騒ぎ中だ。という事は保護者が悪い。保護ナントカ違反だ。


 だったら俺が危ない事をしないように見ててやるべきだ。大人だからな。もし村の外にでも出ようとしたら止める必要がある。大人だからな。


 ペタが軍団の先頭に戻った。俺は最後尾から付いて行く。西って事はウチの部屋がある方角だ。途中には狩人の皆さんが使っている倉庫もある。


 もしかしてあの倉庫に行くのか?確かに村人は広場に集まっている。狩人も例外じゃない。今なら入れるだろう。だが保護者代理は許さないよ?あそこには刃物が多く置かれている。ペタならともかく更に小さい子までいる。怪我をされたら俺が怒られそうだ。


 止める気満々でいたら、全員、倉庫は素通りした。あれ?


 そして、村の端っこにある一軒の家の前で立ち止まるペタ軍団。


「ここだ」


 ペタが指差した家はどう見ても、俺が村に来る度に泊まってた家だ。森の道が出来たからもう使う事は無いだろうが。


「ペタ、ここってよく俺が使ってた家だよな?」


 普通のボリュームで聞く。もうこの辺まで来れば悲鳴でも上げない限り広場まで声は届かない。


「そうだ!ゆうれいのいえだ!」


 キャッ……と悲鳴が出そうになった。小さい女の子に「しー」と止められた。






「だれもすんでないのに、あかりがついてたり、こえがしたりするんだぜ」


 ペタと同じぐらいの男の子が教えてくれる。この子がペタ軍団No,2っぽい。まあ単純に年齢だろうが。


 さて普通に考えて、誰も住んでいない家で何かあったら、それは村人の誰かが別の事に使っているんだろう。実際、俺はお客さん扱いの時はこの家で寝泊まりしていた。そんな感じで誰か客が来た時に使う家なんだろう。幽霊?全く馬鹿馬鹿しい。そんなのがいたら何度も泊まった俺はとっくに襲われている筈だ。もしくは呪われている。


「ハルキ、かおがあおいぞ」


 まあ、万が一呪われていたとしよう。だから何だ、死ぬ訳じゃない。ちょっと最近トラブルが多いなーとは思うが、きっとたまたまだ。こっちの星の危険度が高いだけだ。お金がすぐ無くなるのだって自分のせいだ。


 怖くなんてないんだぞ。ペタ何か言ったか。ちょっと聞こえなかった。


 そのペタが明かりの点いていない家の扉を開ける。そう、この村には鍵なんて掛かっている家は無い。めっちゃオープンな村だ。日本でも鍵をかける習慣がないという家もある。まあ都会じゃ危ないけどな。


 あ、1つだけあった。広場にある祭壇だ。ご神体のドラゴンの鱗様の家みたいなもんだ。


 いや多分今は入ってないだろう。どこか別の場所に保管してある筈だ。騎士団に狙われていた時に俺がそうするようにエジャに言った。祭壇はカモフラージュだ。鍵もつけ直されてはいたが中は空っぽだろう。今後、戻すかもしれないけど。


 ペタ軍団の目的が何となく分かったぞ。子供にありがちな肝試しだ。大人達が祭りで浮かれている間に、こっそりお化け屋敷探検だ。ああ子供っぽいわ。俺は必要ないな。外で待っててやろう。


「ハルキ、まほうのひかりだ!」


「兄ちゃん、たのむぜ」


「まほうつかいさまー」


 俺が連れてこられた理由が分かった。懐中電灯だ。




 スマホのライトはかなり明るい。省電力で高出力、ジャパニーズテクノロジーの結晶LEDだ。懐中電灯みたいに遠くまで届く設計ではないが、近くなら完全な闇でもかなり見えるようになる。ちょっと前に暗黒の洞窟内で実証済みだ。ペタも知っている。だから俺なんだな、便利な魔法使い復活だ。


 そのライトで照らされた室内は見慣れたもんだ。だって俺はここに泊まってたんだから、良く知ってて当たり前だ。このテーブルのある部屋の奥に小さな寝室がある。


 な?何にもないだろ。だから俺を先頭にするな。さあ、出よう。


「ハルキ、あっちあっち」


 ペタが指差したのは寝室とは違う方にある扉だ。そう、実はこの家には最低でも、もう1つ部屋がある。ただ、俺は気にしていなかったし、必要もなかったから忘れていた。


 だが、さっき、この村には鍵の掛かった家がない。とか考えた時に思い出した。


 この扉にだけ鍵が掛かっている。


 そうだよ、泊まってる時に台所かなーと思って開けようとしたら、南京錠なんきんじょうみたいな鍵があるのに気付いたんだった。ああ思い出したくなかった。もう完全にこの部屋と幽霊の話が合致がっちしちゃったよ。


 ペタも寝室には入って来ていた。この家自体は別に入っても良いんだ。駄目なのはこの扉の向こうだ。




 封印された部屋……開かずの間だ。




読んでくださってありがとうございます。


興味本意で心霊スポットとか行くとかホントに無いです。怖いわあ。

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