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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第87話 本職で盗賊な知り合い

 ペタ軍団が肝試しに使おうとしている、この家には何度も泊まっている。特におかしな事は何もなかった。あの鍵の掛かった扉以外は。


 初めてこの家に案内された時、エジャに誰か住んでいないのかと聞いたら、ちょっと意味深な感じで、今はいない。とか言われた。


 その時、ちょっと違和感はあったんだ。


 今は、って事は前はいたんだ。聞いたらまずい話かと思ってツッコまなかったが、これひょっとしてよくあるアレか?事故物件なんじゃないのか?




 俺が地球で部屋を探していた時、やっぱり1番に優先したのは家賃だ。とはいえ汚なすぎるのは嫌だった。その結果が、あの外観は古いがリフォームで部屋の中は綺麗なワンルームマンションだ。密かにペット可の物件でもある。ちょっと敷金しききんというお金を多目に払う事にはなったが、犬か猫を飼う気満々だった。だって、一人暮らしってその為にするもんだろう?違うかな。まあ、動物を飼う前に宇宙人に捕まった上に、ペタという狐と人間の中間みたいなのが入り込んでしまったが。


 その家探しの時に、従妹の美咲がネットで見つけたと異常に家賃の安い部屋を教えてくれた。


 すげえ自慢気に見せて来たが、おかしい、2LDKであんなに安いはずがないんだ。相当の数の物件を見ていた俺はピンときたね。事故物件だと。


 ちょっと調べたらすぐ分かった。前にその部屋に住んでいた方が、首を吊ってらっしゃった。しかも1ヶ月もそのままで、発見された時には……ひぃぃぃ。


 まあ、そういうのが事故物件だ。


 そして、何も考えずに寝泊まりをしていたここが、その事故物件である可能性が出てきた。




 冗談じゃない。俺はいずれ大森林の奥に殴り込んで、モンスターの大発生を叩き潰すつもりだ。出てくる前に叩く。やられる前にやる、の精神だ。ナイフも凄いのをゲットした。今はまだ無理だが、その為に動くと決心した。


 だけどな、幽霊は殴れないんだよ?ナイフもスカってなるんだよ?


 お前達の遊びで、とんでもないモノを呼び起こすかもしれないんだよ?


 ちょっと振り替えってペタ軍団を見る。


「兄ちゃんビビってる?」


 男の子に言われた。ビビってるよ悪いか。なんかコイツだんだん馴れ馴れしくなってきたな。


「ハルキ、これはおとなになるためのしれんだ!」


 いやペタさんや、それはお前達の子供ルールであって、狐族のルールでも俺のルールでもないぞ。というか俺、大人ね。


「まほうつかいさまは、そこにいていいの。ミリがいくの」


 なんと、軍団最年少の女の子がトトトと扉に駆け寄った。まさかあの子が先陣を切るとは。ペタ軍団のNo.2はあの子じゃないのか?


 名前はミリっていうのか。ちっちゃいもんな。ちっちゃいあまりに、扉の取っ手に手が届かない。背伸びをして少しさわれるぐらいだ。よし、その努力は止めてウチの養子に来ないか。


 その小動物がトトトと戻ってきた。なんだか満足げだ。


「ミリ、すごいぞ!もうおとなだな!」


 ペタ軍団長様にでられて嬉しそうな女の子。いやどう見ても3歳か4歳ぐらいのその子は大人じゃない。


 で、ええっと何これ。取っ手に触るだけ?


 次に動いたのは双子の姉弟だ。この子達はあまり喋らない。前に鬼ごっことかをした時も小さい声しか聞いた覚えがない。


 その2人が、ふわっと同じ動きで扉にタッチして戻ってきた。2人とも息を止めていたのか同時にフーっと吐き出した。双子って何でも揃うよな。男女だから2卵性なんだろうけど、それでもそっくりだわ。耳といい、尻尾といい。


 いや、耳と尻尾は、狐族みんな一緒だった。唯一、真っ白なペタだけがこの村では浮いている。


 ところで、扉を触るだけでいいなら、俺だってもう村に来た初日にクリアしてるぞ、その試練。何の気なしにだけど。


 そうだよ、最年長のペタで7歳寄りの6歳だったよ。これぐらいが子供の限界だ。ペタがちょっと野生児すぎて忘れていた。いや、ペタだって精神的には年齢相応だ。強がる事はあるけど俺から見ればまだまだ子供だ。そして俺は大人だ。




「よし、つぎはおれだー」


 ペタ軍団、多分No.2の男の子が動く。


「ウアジ、おとこをみせろ!」


 ペタの声に軽く片手を挙げる男の子。ああなるほど。なんか突っかかって来るようになったと思ってたら、そういう事か。頑張れ男の子。俺は別にライバルじゃないぞ。


 意外にペタってモテるよな。狸族の男の子もソレっぽい雰囲気だったしなあ。あとロリコンにもモテるな。あの変態どもめ。まあ、あの白い毛並みには俺もクラっとする。動物好きとしてな。触り心地も最高だ。動物としてな。


「兄ちゃん!みたか!」


 あ、男の子戻って来てた。


「おお、すげえすげえ」ごめん、見てなかった。




「みんな!きょうはもっと行くぞ!」


 最後のペタが不穏ふおんな事を言い出した。軍団にも緊張が走る。ちなみに俺は行く気がないから最後にはならない。


 そしてペタの手にキラリと光る針金。おいおい、それはまさか伝説のピッキングってやつか?


 ペタがペタペタと扉に近付く。全然怖がってないじゃないか。おい子供、もっとビビれよ。幽霊の家なんだろうが。ちょっと後で幽霊の怖さを教え込む必要があるな。やっぱり定番のペタペタさん、じゃなくてアレからだな。テケテケと寄って来るアレだ。うわ、めっちゃ怖い。忘れよう。


 そして鍵をカチャカチャやるペタ。そんなのどこで知った、お前。


「ハルキ、あかるくしてくれー」


 暗くて手元が見えないようだ。仕方ないから俺も扉に近付いて照らしてやる。どうせ誰かの見よう見まねだろう、上手く開くはずがない。そんなのは鍵の構造を熟知してないと無理だ。開かないなら怖がる事もない。


 開かずの間は、開かなければ問題ない。そもそも問題があるなら、エジャが俺をここに泊まらせる訳がない。と信じている。


 振り返れば入口付近で固まっているペタ軍団達。暗くて顔は見えないがNo.2の男の子も動かない。ふふん、ビビってるのかなー。大人気おとなげないとかいう意見は聞かないぞ。


 カチャ


 あれ?カチャって何の音だ?ゆっくりペタを見る。すごい笑顔だ。


「やったぞ!」


 やっちゃったのかオイ。


 ってかそんな技術どこで習ったんだ。そんなのは泥棒の人とかがやる事だぞ。こっちで言ったら盗賊だ。勇者パーティーの盗賊じゃないぞ。そんな本職で盗賊な知り合いなんて、あ。


「ライオン姉さんか」


「おお!ライオンねえさんにおしえてもらったんだ!すごいだろう!」


 あの人はなんちゅう事を教えてるんだ。ペタがなついていたのは分かってたが、マジでペタを部下にする気だったんじゃないだろうな。しかも最悪のタイミングで教えが発揮されたぞ。


 扉を開こうとするペタの腕を掴む。


「ペタ、ここには入っちゃいけないって言われてるんじゃないのか?」


 軍団の前でカッコつけたかったんだろう。あの男の子が強がってるのと同じだ。やっぱコイツも子供だなあ。時々忘れそうになるがまだ6歳だ。


 ペタはちょっと黙ったが、


「いわれてるな」


 だろうな。幽霊がいるかは分からないが、子供が入って良いと大人達が思っている訳がない。これだけオープンな村で、鍵が掛かってる扉なんてのは普通じゃないだろう。


「じゃあ、ここまでにしとこうな。ペタは平気かもしれないけど、ミリが怖がってるぞ」


 入口付近の一番小さな影が、隣に立つ少し大きめの影にしがみついている。双子のどっちかだろう。


 ペタもそれに気が付いたみたいだ。


「わかった!きょうはおわりだ!」


 うん。こいつは自分の事より小さい子を優先すると思った。いい子だからな。


 そして俺も助かった。本当に事故物件だったら扉を開けたら終わりだ。きっと天井から誰かがぶら下がった影が見えたりするんだ。あ、やばいリアルに想像してしまった。さっさと出よう。




 床に転がされた南京錠なんきんじょうを拾おうと、しゃがんだ瞬間に扉が開いた。


「おれはこわくないぞ!」


 男の子が暗闇に飛び込んだ。やべえ、子供の強がりをめてた。焦って部屋の中を照らす。


 男の子の姿が目の前で消えた。


「わああ」


 叫び声だけが聞こえる。まずい。


「ウアジ!」


 ペタが慌てて入ろうとするが、咄嗟とっさに体で止める。


 スマホの光で見えた部屋には何もなかった。幽霊っぽいのも見えなかった。そして男の子の声ももう聞こえない。急がないとヤバイ。


「ペタ、俺が行く」


「ペタのせいでウアジが」


「お前は他の子と一緒にいてやれ」


 入口では残された小さい3人が震えている。一番小さいミニ……だっけ?あの女の子はもう泣いている。ペタまで中に入ったら、俺にはどうしていいか分からない。それに、あの男の子に必要なのはペタじゃなく俺だ。


「すぐにあの子を連れて戻るから外にいろ」


「だけど、ウアジが」


 ペタが動けない、呼吸が浅くて速い。今のペタを放っては行けない、心に残る可能性がある。だが、あの男の子の方が更に危険な状態だ。最悪も有り得る。1秒でも早く行かないといけない。


 ああもう、面倒だ。


「ペタ!しっかりしろ!」


 尻尾を強く握ってやった。ビクリと立ち上がる耳。よし。頬を両手で挟んで、顔を近づけてゆっくり語り掛ける。


「俺を、信じろ」


 ペタの目は狐っぽい。種族の特徴なんだろう。尖ってる訳じゃなく、明るい場所で瞳孔どうこうが縦に伸びる。猫みたいな目って言ったら分かるだろうか。狐は犬科なのに何でかな。だが今は真ん丸だ、猫も暗い所ではこうなる。そして興奮している時にも丸くなる。


 スマホのライトが当たっているのに真ん丸になっていた目が、少し細くなった。落ち着いたか?


「ハルキ、おねがい」


「よし、お前も他の子達を頼んだ」




 ペタの頭をクシャっとでて、地下に続く階段を駆け下りた。




読んでくださってありがとうございます。


日常にも危険は潜んでいます。

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