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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第23話 弓に嫌われて

 迂闊うかつだった。まさか算数でペタに負けるとは…


 前回ラーメンを食べたのが、エジャもいた探索に出た日。これが1日目。

 洞窟の中で夜を過ごしてドラゴンの鱗とドーム部屋を見つけたのが2日目。

 部屋に戻って掃除をしたり雨の中カエルを追いかけまわしたのが3日目。


 そして、今朝で4日目だ。


 つまり3日に1度のラーメンを食べてもいい約束の日だ。今朝は、なんとペタの方が俺より早く起きていて頭をブンブン振り回されて起こされた。


「ほそいスープの日だ!」


 耳元で大声で叫ばれた。しまったな。洞窟の中で一泊していたのが頭から抜けてた。確かに雨で昨日は余計な一日を過ごしたが、それも含めて俺は計算をミスり、ペタはちゃんと数えていた。約束は約束だ、仕方ないだろう。ただただ計算でペタに負けたのが悔しい。


 そんな俺の後悔と理不尽な憎しみみたいなのがこもったラーメンをペタは美味そうに食べている。具は適当な肉と山菜、キノコだ。俺の得意な適当炒めと同じだ。


 ちなみに昨日、雨の中で追いかけまわしたカエルには逃げられた。素手で捕まえようとした上に、なんか掴んだらヌルっと抜けた。だがペタが楽しそうだったので良いとしよう。カエル尽くしも回避した。


 さっき玄関を開けてみたら、雨は上がって清々しい青空が広がっていた。森の中なのにこんなに青空が見えるのはミステリーサークルのせいだ。ここって、もうこれ以上、木とか草とか生えないんだろうか?分からん。


 あと、これが重要なんだが空気も清々しかった。雨が洗い流したかのように沖縄の気温は無くなっていた。半袖じゃ寒いぐらいだ。いや、こっちの季節感はよくわからないけど日本の4月ならこんなもんだろう。元に戻ったって事でいいんだろうか。まあ歓迎すべき変化だな。


「ハルキ!ふくろがモコモコしてるぞ!」


 俺がもう食べ終わってボーッとしていたら、スープを飲み干したペタが騒いでいる。丁度これで5食分、食べきったラーメンの袋を観察しようと思って空の袋を1つテーブルに置いていたんだった。


「おおおおお」


 思わずペタみたいな声が出た。完全に空だったはずのインスタントラーメンの袋が膨らんでいく。破った所から覗き込むと麺が伸びるように増殖している。うんキモチワルイ。


 だが、これでラーメン復活の条件が分かった。5食分、全部消費したら復活するって事だ。5食で1つ扱いなのか。あのトカゲとはちょっと違うみたいだ。


 他の4食分もキッチリ元に戻っている。袋の口は元には戻らなかったが、とりあえず全部輪ゴムで止めた上で、空気の入らないビニールのパックに突っ込んだ。カビたら食えなくなる。捨てても復活するかもしれないが、食べ物を無駄にするとかありえない。そして、この輪ゴムもいつのまにかまった方式の物だ。買ったことは無い。


「たべほうだいだ!ばんざい!」


「約束は3日に一度だぞ」


 無邪気に喜ぶペタに釘を刺しておく。毎日3食、食わされかねない。そもそも、こういうのは毎日食うと飽きるもんだ。ただ、これでラーメンも旅に持って行く事になった。俺はいらないんだが…荷物が増える。


 今日の予定をざっくりまとめよう。


 まず布団を干してシーツを洗う。そして旅の準備をする。昼飯を食ってから狐族の村に出発だ。急ぐ必要はないのでゆっくり行こう。夜までに着けばいい。






「ハルキへたくそだなーあははは!」


「うるせえ、初めてなんだからこんなもんなの」


 真上に飛んだ矢を片手でキャッチしてもう一度弓に番える。弦を引き手を離す。よし、今度は真っすぐ飛んだ。


「ハルキ、ねらうのは、となりのとなりの木だぞ?」


 おかしい。俺ってこんなに致命的なほど弓に向いてないんだろうか。


 後ろでは布団が太陽の光を浴びて気持ちよさそうに泳いでいる。そして俺は弓の練習中だ。これ次第で旅に弓を持って行くかを決めようと思っていたが…


「ハルキ、じめんをうってもなにもとれないぞ」


 ペタ先生の指導の元かなりの矢を放ったが、まともに飛ばない。


 確かに昔から球技とかは得意じゃなかった。体を直接使う運動は何でも出来たが野球やバスケットボール、テニスなんかの道具を使ったスポーツはなかなか上達しなかった。格闘技ばっかりやってた弊害へいがいだろうか。


 それにしても、ここまで弓矢の適性が無いとは思わなかった。なんというか力の入れ具合が解らない。こっちにきてから妙に上がったように感じる身体能力が足を引っ張っているんだろうか。


 ブチッ「あ」


 ちょっと力を強めに入れて引っ張ったら弓の弦が切れた。


「おおおおお。すごいちからだな!」


 ペタがプルプルしながら驚愕きょうがくしているが、多分この弓がボロかったんだろう。そして旅には持っていけなくなった。というか、もう弓はいいや。


 足元に転がっていた石を拾って投げてみる。うん狙い通りにいく。ということはやっぱりアレだ。忍者だ。


 布切れを開いて洞窟でゲットした5本の小さいナイフを取り出す。1本持って重さと重心を確かめてから木に向かって投げてみる。距離は5メートルぐらいだ。


 柄を持って振りかぶるように投げたナイフは狙った通りの木に当たった。ただし当たっただけだ。回転しながら飛んで行って木に当たって落ちた。あれー?


「ハルキ、ナイフはなげるものじゃないぞ。くだものをむくんだぞ」


「いや、うんまあ、そうなんだけどな」素振りを繰り返してみる。


「あと、にくと、かわをとるんだ」


 ペタがよだれを垂らしている。肉って言葉で条件反射を起こすのか?


 残りの4本も投げてみたが同じように回転して上手く刺さらない。当たるんだけどなあ。ナイフを回収に行って、また投げ始めた。






 ボフボフ


 ペタが布団を松葉杖で叩いている。楽しそうだ。俺のナイフ投げには興味が無くなったらしい。


 だが俺もコツを掴んできた。投げ方によっては回転しないように投げることも出来た。ダーツみたいな感じだ。でもこの投げ方だと威力やスピードが出ない。それじゃ意味がない。


 じゃあ回転する事を前提に距離に合わせて力の配分を変えていけばいい。元々、狙い通りの場所には飛んでるんだ。あとは刺さればいいだけだからな。投げて1回転、ここで当たればいいんだ。


 既に5メートル地点は掴んだ。オーバースロー、アンダースロー、左右どちらの手で投げても、それなりの威力をもって木に刺さる。狙いも問題ない。楽しくなってきた。忍者まであと少しだ。いや、既に俺は下忍クラスと名乗る。


「ペタ、布団、裏返してポンポンしてくれるか?」


「おお!まかせていいぞ!」


 布団をガシッと掴んだペタが、そのまま引っ張る。その角度だと地面に付く。こいつの任せろは、あまり信用できない。ナイフ投げの手を止めて布団を裏返した。



 ボフボフ


 ペタが布団を叩く音が響く中、俺は一心不乱にナイフを投げ続ける。距離を変えて体勢を変えて。ジャンプしながら。色々試す。大道芸とかで見た事あるナイフ投げは刃の方を持って投げていた。あれも試す。悪くない。


 途中でペタが森に入って行ったが、まあ大丈夫だろう。森では最強だし。


「ハルキー。おなかへった」


 森から出て来たペタが声をかけて来た。おっと夢中になりすぎた。もうそんな時間か?空を見上げると太陽がかなり上に来ている。


「悪い悪い。飯食って出発しようか」


 残っていた2本を両手で同時に投げる。木までは8メートルぐらいか。縦に3本刺さっていたナイフの両サイドに1本ずつ突き立つ。丁度、十字の形になった。うーん俺才能あるかも。大道芸で食っていけるなこれ。


「すごいな!ペタの弓とおなじぐらいだな!」ペタが目を丸くしている。


 ペタレベルか…もうちょっと練習しないと見世物にするのは早いかな。弓使った方が威力も飛距離もあるしナイフ投げって不遇かもしれない。でもいいんだ。これは忍者の修行なんだから。ロマンだ。決して弓に嫌われてるから逃げたとかじゃない。それにペタの弓はかなりレベルが高い。この星の弓レベルの基準が分からないが、狩人ペタのレベルなら十分に実用レベルって事だ。あとは練習次第だ。いつか下忍から上忍にランクアップしてやる。


 木からナイフを抜く俺にペタが何気なーく聞いてきた。


「ナイフ、どこにもってあるくんだ?」


 手からナイフがバラバラと落ちた。






 森の中は涼しくなっていた。雨が降ったせいでぬかるみが結構あるが急いでいないからそんなに問題じゃない。ただスニーカーはやっぱり森には向いていないんだな。こういう地面だと滑りやすいし水たまりに入ったら中まで水が染みるだろう。トレッキングシューズの価値が良く分かる。まあ、あれはあれで素早い戦闘には向いていないから一長一短だな。


 ペタはぬかるみも気にせずピョンピョン飛び回って小さいカエルなんかを追いかけている。小さいのもいるんだな。


 俺は小さい方のバックパックを背負って歩いている。ちょっと中身は洞窟探索の時より多いがパンパンというほどじゃない。ラーメンが無ければもっと余裕があった。弦の切れた弓は部屋のインテリアに逆戻りしたので持っていない。腰からは普通のナイフを一本、革のベルトでぶら下げている。まあ今まで通りだ。


 そう今まで通りだ。投げナイフなんかどこに持てばいいんだ。ペタの持っている矢筒みたいな便利な物は無い。ペタの知る限りではナイフを投げて武器にする人族は見たことがないそうだ。じゃあ既製品でそういう入れ物は無い可能性が高い。だからといってポケットに入れて運べるようなもんじゃない。服は切れない破れないだから大丈夫だろう。だが俺の手は切れる。ポケットに手を入れる度に切れる事になる。とんだ欠陥ポケットの出来上がりだ。血を吸うポケットだ。B級ホラーのタイトルか。


 ナイフは再び布にくるまれてバックパックの中に眠っている。折角練習したのに持って行かないのは嫌だし何か良い収納方法を考えてみせる。こう、戦いながらスパっと投げられる様な…昔の忍者はどこに手裏剣を入れてたんだろうか。


「ペタの方が忍者っぽいよなあ」


「にんじゃってなんだ」


 思わず出た独り言に反応して、あっちこっち飛び回っていたペタがピョイっと戻って来た。良かった、にんじゃってなんじゃ、とか言われなくて。


「ペタが狩人だったら俺は何だろうな?」


「ハルキは、まほう使いぞくだ!」


 ああ、そうだった。俺は魔法使いだったわ。でもそれは職業じゃなくて種族名だよな。じゃあ魔法使い族の格闘家とかか俺は。意味が分からん。


 ん、なんか草むらで動いたな。


 立ち止まってバックパックをゴソゴソしていると、ペタも気づいた様だ。弓を構えようとする。


「ちょっと、やってみてもいいか?俺が外したらやっていいから」


 ペタを制して小さいナイフを取り出す。


 当たるかどうかってのも勿論あるが、俺自身が、果たして生き物の命を奪えるかってのも今後のために知っておく必要がある。


 大トカゲの時は、やるかやられるかだったから殺す事が出来た。あれは戦いだ。戦いの中では俺は命を奪える。だが今からやろうとしているのは、狩りだ。一方的に命を奪う行為だ。しかも相手は…モフモフだ。


 少し離れた草むらに緑ウサギがいる。飛び道具無しで飛びついても逃げられるだろう。この距離があるからこそ相手は油断している。


 取り出したナイフを一本構える。震えは…無い。


 小さめのオーバースローで放たれたナイフは草むらに吸い込まれた。ペタは矢を放たなかった。


 草むらをかき分けてみると、首の部分にナイフが突き立った緑ウサギが倒れていた。


「ハルキすごいな!いっぱつだ!」


 ペタが手をペチペチ叩いて褒めてくれる。


 俺は緑ウサギに手を合わせて目をつむる。ごめんな。ありがとう。





読んでくださってありがとうございます。


土日祝はできるだけ2話アップしたいです。

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