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惑星の魔法使い  作者: モQ
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第22話 カエルづくし

 布団を干そう。


 今日は午前中のうちに部屋の掃除と、風呂、トイレの掃除をして、その間に布団を干そう。そうだ、特に風呂は狐族の皆さんの抜け毛がいっぱいありそうだからキッチリ掃除しとこう。


 そんな事を考えながら、昨日の晩飯と大差ない色々炒めを口に運ぶ。


「ぷはー!うまい!このあまみの中にあるせいりょうかんは、ごくじょうだ!あとあまくてうまい!」


 甘いと美味いを連呼するペタが飲んでいるのは、森で採ったミカンみたいな果物から作ってみたジュースだ。そのまま食ったらかなり酸っぱかったので、握りつぶして出た汁と水を程よく混ぜ、砂糖を適当に加えた男のジュースだ。ちょっと響きが悪いな。オレンジジュースだ。


「もういっぱい!もういっぱい!」


 空になったコップをフォークでキンキン叩いて催促するので、俺の分をテーブルの上を滑らすように渡してやる。それを両手でガシっと捕まえたペタはそのまま一気飲みし始める。


 あごの所からジュースが垂れてる。またタオルが被害を受けた。


 朝飯が終わったら早速、布団を干そう。適当な木を切ってきて即席物干し竿みたいなのを作って掛けとけばいいだろう。


 ペタが掃除の戦力になるか邪魔になるかは分からないが、邪魔なようなら森に投げ込んで山菜集めでもしてもらおう。これから、どれぐらい家を空ける事になるか分からないが、大体の物は冷凍してしまえば結構もつだろう。




 と、思っていたら外は土砂降りだった。


 玄関を開けたら大雨が降っていた。部屋の中にいると外の情報が何も入って来ない。音も聞こえない。


 てゆうか、ずっと雨降ってなかったんですよねペタさん?


「あめだーー!」目をキラキラさせている。あヤバイ、こいつ飛び出すぞ。


 尻尾をフリフリしながら外に出ようとするペタを持ち上げて部屋に戻す。


「そとにいきたい」上目遣いで見て来てもダメ。


「お前、泥だらけになって帰って来るだろ。部屋が汚れるから駄目」


「えー!ハルキのけちー!けちハルキー!」騒ぎながらベッドにダイブする。


 しかし急に降ったな。ずっと降ってなかった雨が、いきなり降るとは。ドラゴンの鱗とか……ドームを閉じた事とか……関係ないよな?あんのか?気象予報士じゃないから分からない。う、気象予報士って言葉で宇宙人共の顔を思い出した。朝から気分悪いな。まあ1つだけ分かるのは、村に行ったら俺がまた持ち上げられる要素が増えたって事だ。俺の魔法だと思われてそうだ。


「ハルキ!あめがふるとカエルがでるんだ!だからとりに行くべきだ!」


 ゴロゴロしていたペタが、さも名案を思い付いたように声をかけてくる。


「ほうほう。それで、そのカエルをどうするんだ?」


「くうんだ!」


「はい却下」


 ペタが全身脱力してベッドの上でカエルの死体みたいになった。


 まあ日本ではあまり食わないが、カエルは鶏肉みたいな味がして美味い。ラスベガスの中華レストランで何度か食った事はある。大体、唐揚げになってたな。揚げ物とかした事ないけど油はあるし出来るんじゃないか?でも衣ってどうするんだろう。小麦粉とかパン粉とか玉子とか使うんだった気がする。料理に興味がなかったので覚えていない。ついでに材料もないわ。


 そう考えると欲しい物は結構多い。パンとか米も欲しいな。炊飯器が泣いている気がする。そもそも炭水化物がインスタントラーメンだけってのはつらいものがある。ドラゴンもトカゲを食い飽きて家出したのかもしれない。


 これは本格的に食料集めに行かないといけないな。といっても、この部屋を拠点に活動するには、あまりに不便な立地だ。森の中だし、一番近い狐族の村まで急いで4時間だ。慣れてくれば、もうちょっと早く行けるかもしれないけど。


 往復8時間使って狐族の村と部屋を往復する毎日。うわそれは嫌だ。


 一等地とまではいかなくていいから町とかの中に家を建てて欲しかった。なんて宇宙人に文句言っても意味がないな。なんせあの宇宙人だからな。


「水たまりであそびたい……」


 ペタの泣き言が聞こえる。水たまり……水たまりねぇ。


 そういえばペタに海を見せてやるとか言ったな。


「ペタ、海まだ見たいか?」


 死んだカエルがガバっと生き返った。


「みたい!でっかい水たまり!」


 この部屋は快適だけど、森の中でじっとしてるとか俺には無理だ。


「じゃあ、雨が止んでからになるけど海に行ってみるか」


「おおおおおおおお!うーみ!うーみ!」


 ペタがまたベッドで跳ね始めた。まあ楽しいよなソレ。普通怒られるけど。


「お前んとこのじいさんに許可もらってからだぞ。駄目って言われたらナシだからな」


「うちは、ほうにんしゅぎなので、だいじょうぶです」


 そんな気はするが一応だ。まあ、よっぽど遠くじゃない限りは行ってみよう。急に魚も食いたくなってきた。海に行けば色々あるだろう。


 俺が、この星でやっていくのに必要なのは目的だと思う。最終目的は地球に戻る事とついでに宇宙人に仕返しする事だが、当面何をしていいか分からない。


 じゃあ短期的な目的として海に行くってのはアリだろう。この辺の文化とかも、その間に色々分かるかもしれない。ペタを連れて行くのは、なんとなくの理由づけと、あとちょっと寂しいからだ。でもこれは言わん。大体、許可が下りなければ俺は一人でも行く。


 あ、でもエジャも来てくれると心強いな。常識人だし戦闘能力も高い。俺にもペタにも、この星の常識は備わっていない。ペタにないのは問題だと思うが、子供だから仕方ないとも言える。


「っても、今日は掃除だ。雨降ってるしな。ペタも手伝え」


「えええええ」うわ、すっごいわかりやすく嫌そうだ。






「うあはははははは!」


 ペタが部屋中を走り回りながら大喜びだ。ゴンッ、ゴンッと、あちこちにぶつかる音がする。


 ぶつかっているのはペタ本体ではなく、その手に握られている掃除機だ。大人なら片手で使えるスティックタイプのやつだ。コードレスだし後ろに丸い本体が付いて来ないから使いやすい。充電式なのでペタみたいに延々と使い続けたら、すぐバッテリー切れになるはずだが、そこは安定の宇宙人品質。バッテリーは常に満タンだ。ついでに「吸った空気より綺麗な空気を吐き出します」みたいな売り文句だったから密室でも大丈夫だろう。


「ペター。あんま、あちこちぶつけんなー」トイレ掃除をしながら呼びかける。


 実はあの掃除機だと部屋に傷がつく。さっきもテーブルの足にちょっとだけ傷をつけてくれた。


 これは何となく分かっていた事だが、壊れない成分の物同士だと普通に壊したり、破いたり出来る。ペタのズボンに尻尾穴を開けられたのがそのいい証拠だ。普通にハサミで切れた。


 だが、そのズボンも外に持ち出せば絶対に破れないし、切れない燃えないの最強防具だ。なんならハサミだってすごい武器になる。


 だから海を目指すのは決めたが、持っていく物は本当に厳選しないとヤバイ。万が一なくしたり盗まれたりしたら大変だ。


 既にペタにやった果物ナイフが、多分だが世界最強の武器になっている気がする。凄い鍛冶屋とかが作った名剣と打ち合っても叩っ切る事が出来るんじゃないだろうか?まあ小さいし軽いから上手く当てるのも大変だけど。


「おわったぞ!」


 普通にやれば5分で終わる掃除機がけを30分ぐらい堪能してやがったな。


「お疲れさん。冷蔵庫にジュース入れてあるから飲んでいいぞ」


 ペタはもう冷蔵庫ぐらいなら普通に使える。順応性が高いな。背は低いから風呂用の椅子がないとコップも取れないが。


 こっちも風呂を磨き終わった。やっぱり狐族の毛がけっこうあったな。ゴミ関係は後でまとめて森に穴を掘って埋めようと思う。自然に還るだろう。俺は自然には優しいぞ。それと動物にも子供にも優しい。


 あとは……布団だけなんだけどな。


 風呂の椅子に乗ったままコップからジュースを飲んでいるペタを横目に、玄関のカレンダーを持ち上げてのぞき穴に目を当てる。まあ、まだ止んでないよな雨。んー?


 ……なんかいる。なんかデカいのが外にいる。


「ペタ。ちょーっと悪い、外見てくれるか?アレなんだ?」


「なんだとはなんだー」


 コップを空にしたペタを持ち上げて覗き穴に近づける。


「カエルだ!」


 やっぱりカエルかあ。しかし、ちょっとデカすぎないか?覗き穴越しでも1メートルぐらいはありそうだったぞ。


 ペタがワサワサと動いている。尻尾も耳もビンビンだ。


「ちょっと待ってろ」


 ペタを下ろして、磨きたての風呂にお湯をめ始める。


「ペタ!獲りにいくぞ!」


「うおお!こんやはカエルづくしだ!」


 二人で雨の中に飛び出した。づくしは嫌だなあ。







「きもちー。ほわー」


 ペタが湯船でとろけている。お湯に入るのは生まれて初めてだそうだ。


「100まで数えるんだぞ」


 風邪ひいたら困るからな。体を洗いながらそう言うと、


「ペタは99までしかわからない」


 と答えて来た。算数の授業だな。


「じゃあ教えてやろう。なんと、99の次が100だ」


「なんだってー!」


 今日の授業はおしまい。体も洗い終わったし俺も湯船に入る。ちょっと狭い。


「ペタはとうとう、きんだんの、3ケタに足をふみこんだ……」


 なんかおかしな独り言を呟いている。


 さて、何度も言い訳をするが俺は幼女趣味とかじゃない。ペタが頭を洗うたびに目にシャンプーを入れて騒ぐので、もう俺が洗ってやってるだけだ。ついでに、なんか慣れて来てお父さん気分だ。こんなでかい子供がいる歳じゃないけど。どっちかっていうとお兄さんか?でも、それはそれで歳が離れてるか。


 まあどっちでもいい。俺は変態さんじゃないし、ここは日本じゃない。俺の道徳がOKサインを出したんだからいいんだ。この辺の法律とかに引っ掛かるならやめる。


 そして、もしこの星に長くいる事になったら、いつかペタも俺と一緒にお風呂に入るのを嫌がるようになるんだろう。う、なんだろう、涙が出そうだ。世のお父さん達の気持ちってこんなんなんだろうか。


「きゅうじゅうはち。きゅうじゅうきゅう。きゅうじゅ…100だ!」


 ザバッと立ち上がったペタの尻尾が俺の目を直撃した。涙が出た。




読んでくださってありがとうございます。


殺伐としてない回もありだとおもいたい。

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