そして姫君は知っていく
なんとか今日中(笑)
次話からはアキ視点に戻ります。
読んでくださっている方ありがとうございます!
『求知心』
アストライア王国第一王女、ルクア・エルクス・アストライアの持つユニーク魔法の名である。
その魔法の持つ力は知識の収集。
発動と同時に周囲から無差別に思考や知識が流れ込み、一ヶ所に意識を向ければその方面からのみより詳細な知識が、何かに触れればそれの持つ思考、知識、情報、それの本質すらをも知ることができる魔法。
私が自身がそのような強力なユニーク魔法の使い手であることを知ったのは五歳の誕生日のことでした。
この世界に存在する人々は種族や住む地域によって多少の違いはあるもののその多くは五歳の誕生日にステータスカードを作成します。
そしてステータスカードを作成した私は自分が強力なユニーク魔法の使い手であることを知りました。
ユニーク魔法を持っていること自体は私の両親、つまり国王と王妃がユニーク魔法を持っていることからもまず間違いないとされていました。
ですが、それを考慮しても私のユニーク魔法は強力すぎたのです。
そして、私の魔法を知る者の中には、あわよくば自分のために使おうとする者もいました。
だから、私は常に数多の護衛に守られて生きてきました。
そのことに不満があるわけではないのです。
ただ、王族として自分も直接的に民の力になりたいとは常々思っていました。
自らの魔法で得た情報によって起こるはずだった事件を何度も未然に防いだけどそれは結局は兵が動いてくれたからです。
これではダメだと思って私が外にでて問題を解決しようとしてもいつの間にか着いてきていた護衛達が解決してしまいます。
私にはユニーク以外の魔法の才もあります。
きっと、そこらの悪党では到底太刀打ちできないくらいの才が。
そして、今この国は何やらよくない噂が多くそれにほとんどの者が手を回すことになっています。
だから、今回得た情報については私が直接調べて確かめるのです。
私は情報だけでなく戦うことでも民を守れるのだと示したかったのです。
けれど、私は知りませんでした。
いくら王都の治安がいいとはいえ王宮から離れるほど多少は治安が悪くなってくるということを。
そして、悪意の前で自分は王族である前にただの一人の人間であるということを。
使い方によっては敵国の最高機密の情報すら得ることのできる魔法を持っているのに、そんなことすら私は知りませんでした。
だから、距離をとって魔法を打ち込めば確実に勝てるような相手に怯えてしまいました。
今まで悪意にさらされることなく守られて生きてきた私には、男達の下賎な目付きも粗暴な口調も耐えられませんでした。
流れ込んでくる思考も恐ろしさ以外何も感じません。
けれども、相手の思考が分からなくなるのはもっと怖いので魔法を止めることすらできませんでした。
怖くて怖くて仕方なかった。
周りの者もこちらに視線は向けるものの誰も手を差し伸べてはくれませんでした。
「……なに?」
気がつけば右隣に黒ローブを着た少年が立っていました。
年は……同じぐらいかな?
目付きは今までに見てきたことのあるなかで間違いなく一番悪いです。
怖い人が増えた。
どうしよう?どうしよう?
もう頭の中は完全にパニックでした。
そして、
――ギュッ
気がつけば縋るように右隣にいた彼のローブを掴んでいました。
……私は何をやっているのだろうか?
明らかに一番危ない人物に触れてしまいました。
もう私は五体満足では帰れないかもしれない。
その瞬間、ローブがかなりの品質であり隠密の付与魔法が施されたものであるということを知りました。
そして、ローブと繋がっている彼の『本質』を知りました。
優しい臆病者。
それが彼の本質でした。
もちろんそれだけが彼ではないのでしょう。
ですが、本質として強く出ていたのはそれでした。
失礼な話だけど彼の見た目からは程遠いものです。
どう見ても臆病者から色々巻きあげる側の人間です。
それでも私の『求知心』の得た知識に間違いはありません。
それは、同時に彼が見た目通りの怖い人ではないということ。
彼は見た目に反して平和的解決を求めていました。
結局、うまく考えがまとまらなかったようで男達の片割れを酒場まで殴り飛ばすという極めて暴力的な解決に至っていましたけど……
そのあと、彼から何やら過去の記憶のようなものが流れ込んできました。
私はそんなもの探ろうとしていないのでおそらく彼がこの状況で何かを思い返しているんだと思います。
内容としては恋文で誘き出されたら怖い人達に囲まれたというものでした。
……ちょっと同情しました。
申し訳なく感じました。
怖い人だと思ってしまってごめんなさい。
助けてくれてありがとう。
謝罪とお礼をしなければいけないよね。
けれど、私は彼にさっさとどこかに行くように言われてしまいました。
それと同時に彼から怯えと気遣いの思考が伝わりました。
拒絶されることに対する怯え。
自分のような者の近くにいるのは苦痛だろうという気遣い。
彼が自覚しているのかは分からない。
触れれば分かるのだろうけどその必要はない。
だって、彼が優しい臆病者だってことは分かったから。
そこでふと彼の記憶を思い出しました。
彼を知ってしまった今となってはかわいそうで仕方がありません。
思わず目が潤み彼を誤解していた恥で頬が熱くなりました。
その事が彼を誤解させてしまったのです。
またパニックになってしまいました。
その結果、謝罪だけして逃げようとしてこけてしまいました。
すると、先とは違う少年が手を差し伸べてくれました。
手を掴み失礼だとは思いつつも本質を知る作業をしました。
そうしないと思考などを悟られないように近づいてきたものの悪意には私は気づけないから。
そして、背中に氷でも入れられたような悪寒が走ったのです。
とても『歪』でした。
本来、本質というものはその者の隠すことのできない本人すら気づかないことのある本性。
どんな善人でも多少の『悪』は持っていて善と悪が混ざりあったようになるのが普通です。
私の尊敬する父と母も多少の悪は本質にあるけれどそれ以上の善があるために綺麗な色をしている。
黒ローブの少年にしてもそうです。
ですが、今、手を差し伸べてくれた少年の本質は『善』と『悪』が完全に分離されているのです。
これが良いことか悪いことかは分からないけど今までの人生で始めて見たものです。
そして、なぜか手を差し伸べてくれた少年は、黒ローブの少年に怒りを向けていました。
どうにも誤解があるらしいです。
仲裁に入ったのですがよく分からない解釈をされてしまいました。
始めて直接悪意に触れ、珍しい綺麗な本質に出逢い、珍しいどころか始めて見る本質に出逢い、
私の情報処理能力はもう追い付いていませんでした。
何だか黒ローブの少年が助けを求めるような目でこちらを見ている気がしないでもないけれど、私もそれどころではないのです。
必死になって情報を整理し終えた頃には何故かグリザムがいました。
怒られてしまいました。
私は未熟です。
反省しなければいけません。
黒ローブの少年がいなければ今ごろ酷い目にあっていたかもしれないのです。
と、反省していると黒ローブの少年が酒場の店主に金貨百枚を要求されていました。
困っているようだったので私が払おうとしたら女神と呼んでいいかと聞かれてしまいました。
なので友達になっておきました。
彼のような人とは仲良くしておきたいものです。
一国の姫としても、一人の人間としても。
ちなみに誤解がないように言っておきますが金貨は私が今までの功績で貰ったものを使うのです。
決してお父様やお母様に貰って払うわけではありません!
そのあとお礼を言うこともできたし、次に会ったときはもっと砕けた感じで喋ろうと思います。
それとは別にそのあともうひとりの少年が自己紹介と共に私を守らせて欲しいと言ってきました。
名は榊錯人というらしいです。
悪意は……ないようだけど、大丈夫なのでしょうか?
ひとまずはグリザムが兵団の試験に受けさせると言っていたのでそれ次第といったところでしょう。
今度、黒ローブの少年に会ったときに少し相談してみようかな?
あれ?……というか私……
彼の名前教えて貰ってない!
アストライア王国第一王女ルクア・エルクス・アストライア
正義感が強く、魔法に対して素晴らしい才を持ち、王族の中でも強力なユニーク魔法を有し、民のために王族としての責務を果たさんとするまだ15歳の少女。
その美しい容姿と人当たりの良さから愛されているが
実はわりとうっかりさんである。




