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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
二章 守るためなら何をしてもいいのか?

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神隠し編・闇ギルド

「――ってなわけで俺は今色々頑張ってるんだよ」


「国王様に呼ばれるなんて凄いね!!それになんか昨日王城の周りが騒がしかったのってアキのせいだったんだ!?」


「厳密には俺らのことを話してた国王のせいな」


 誤解を招かないように弁解しておく。

 王城に行ったついでに文句の一つでも言っておくべきだったか?


 ……不敬罪とか言われたら洒落にならんから言うべきじゃないな。


「アキ……じゃあ君が今日ここに来たのはその依頼の為ってこと?」


 ハクトが小首を傾げながら俺に問う。


「ん?まぁそれもあるけど正直それに関してはもう諦めてるよ。どんだけ聞いて回ってもろくな情報の一つも入らないからな」


「……そっか」


「……どうかした?」


 そう言ったきり黙りこくってしまったハクトに問う。

 なんか変なこと言ったっけ?


「いや、大変そうだなと思っただけだよ」


 首を傾げる俺にハクトは微笑を浮かべそう返した。


「……なら別にいいんだけど……」


 よく分からん奴だな……

 そういやどうにもハクトと俺は同い年らしい。

 あと記憶喪失だけど名前とか年齢とかの記憶はあるらしい。

 わけが分からん。

 記憶喪失ってそんな部分的なものなのか?


「……それじゃあ私達はもう何も話さなくてもいいのかな!?」


 ルカが俺に視線を向け首を傾げる。

 ……まぁ別にどっちでもいいと言えばいいんだけど一応聞いておくか。


「いや一応話してもら――」


「オラッ!!出てこいやくそアマッ!!!」


 俺の声は遮られその代わりにドスの利いた声と共に宿屋の扉を破壊して数人の男が宿屋に上がり込んでくる。

 俺が言うのもなんだけどどいつもこいつも人相が大変悪い。

 扉の開け方が分からなかったとかではなさそうだな……


「ちょっと!!何するの!?また扉壊して!!」


 ルカが「バンッ」と音を立てながら机を叩き勢いよく立ち上がり男たちに詰め寄る。


「ふざけんなこのアマ!!!てめえまたうちの仕事台無しにしやがったな!?たかが一冒険者の分際で調子乗ってると痛い目見さすぞコラッ!!」


 先頭にいた男ががなり立てながらルカに詰め寄る。

 ルカが小柄なことも相まって犯罪の香りがするな。

 よく分からんが暴力沙汰にならん内に仲裁でもしとくか。


「やめろロッド。ここには揉めに来たわけではないだろ?」


 と思った俺が仲裁に入ろうとするより早く男たちの中から一人だけ高そうな服に身を包んだ明らかに浮いた様子の男が前に出て男を止める。


「し、しかしボス――」


「おい」


「――ッ!」


「私はお前に口を開くことを許したか?答えろよロッド」  


「……申し訳、ございません」


 何やら言葉を返そうとした男、もといロッドだったがボスとやらに一瞥されるとあっさりと黙り込んだ。

 なんか力関係はっきりしてるな。

 ルカ相手にあんだけ息巻いてたくせにあのおっさんにちょっと言われただけで顔青ざめてるし震えてるし。


「……ふぅ。それで、何だったかな……あぁそうだ、君がルカさんで大丈夫だね?」


「……そうだけど……あなたは?」


 警戒した様子を見せながらルカが男に問う。


「あぁ、これはすまない。自己紹介がまだだったね。私の名前はゾノア、そうだね……ここにいる者達のボスだと説明すれば分かってもらえるだろうか?」


「――ッ!ってことはあなたが『闇ギルド』の――」


「おっと、あまりその名前は口にしない方がいい。私と違って私の部下は女子供だろうと容赦ないからね……」


 男の、ゾノアの目が怪しく光り唇はいやらしく弧を描く。

 それに気圧されるようにルカは一歩下がった。

 ゾノアと対照的にその顔に笑みはなくどこか耐えているような印象すら受ける。


「……わざわざボス様が一体何しに来たの?」


 ルカが慎重に言葉を選ぶようにしてそう口を開く。

 対してゾノアは浮かべた笑みはそのままに何でもないことのようにこう返した。


「なに、そこまで大した内容じゃあない。ただ、そうだね、少し私のビジネスの邪魔をする害虫がいると小耳にはさんだものだから散歩のついでに害虫をどうにかしてしまおうかと思ってね」


「――ッ!」


「そう慌てるんじゃない。私は君に提案があるんだ」


 ゾノアの言葉に一瞬で臨戦態勢となり今にも飛び掛かろうとせんばかりの状態となったルカの前に手をだし気味の悪い笑みを浮かべたままゾノアはそれを制止する。


「……提案?」


 臨戦態勢を崩すことなくほんの少し目を細めそう返すルカ。


「あぁ、提案だ。まず言っておきたいんだが私は今大変迷惑している。理由はどこかの害虫が私の商品を奪ったり私が斡旋した仕事の邪魔をしたりするからだ。それはそれは本当に迷惑している。いっそ殺してやろうかと思うほどにな」


 一瞬、ほんの一瞬だがゾノアから濃密な殺気が放たれる。

 全てを飲み込もうとせんばかりの気持ちの悪い殺気だ。

 そんな重く不快な空気の中ゾノアは再び口を開く。


「だが、だがだ。私はこうも思うのだ。はっきり言って今は人材が不足しているせいで害虫を駆除するためにあてる人員すらもったいない。それならば、もう二度と私の邪魔をしないというならば……愚かな害虫を一度だけ許してやってもいいのではないか、と」


 ゾノアの目が怪しい光を放つ。

 気味が悪いな……


「……もし、嫌だと言えば?」


「さぁ?どうなるだろうねえ。いくら私が寛大であるとはいえ……このぼろい宿が消えるか、君の仕事が全くうまくいかなくなるか、もしかすると……このぼろ宿を営んでいるおしどり夫婦が不幸な事故にあう、なんてことがあるかもしれないな」


「――ッ!」


 ルカは一瞬で顔面蒼白となり声にならない悲鳴をあげる。


 ……正直、何がどうなってこんなことになってるのか俺にはさっぱり分からない。

 けど……目の前で胸糞悪い脅しを見せられて我関せずを貫けるほど生憎俺はお利口さんでもない。


「おい」


「ゾノア様、一日お時間をください」


 声を低くしてできるだけドスの利いた一声を浴びせてやろうとした俺を遮りハクトが微笑を浮かべながらルカとゾノアの間に入り込む。

 俺はこのやり場のない声を一体どうすればいいのだろうか?


「君は……確かハクト君とか言ったかな?」


「お名前を憶えていただき光栄です」


 抑揚のない声と張り付けたような笑みでそう返すハクト。

 もともと感情表現が豊かな奴じゃないみたいだけど尚更声から一切の感情を消しているように俺には感じられた。

 

「ふむ……それで?一日とは?」


「ルカは優しい女の子です。ですからゾノア様の商品とはいえ人が売られることや暗殺依頼が斡旋されることを見て見ぬ振りができずにいました。そしてきっと今もそうです。ですがもし一日という時間をくだされば僭越ながらこの僕がルカの悩みを取り除いて見せます」


「……君が?説得するのかい?丸一日使って?」


「はい、どうでしょうか?」


 笑みを張り付けたままそう返すハクトにいやらしく唇を三日月の形に歪め顎に手をやり考えこむような仕草を見せるゾノア。


「まぁ……いいだろう。一日あげよう。けれど下手なことをするんじゃないよ?もし私がその気になれば……今ここに居る奴らを皆殺しにすることも可能なのだから……」


「……はい」


 ハクトが一切表情を崩さず頷いたのを確認すると満足したようにゾノアは男たちを引き連れて帰っていった。


「……変なところを見せてしまったね」

 

 ゾノア達が帰ったことを確認して俺に申し訳なさそうにそう言うハクト。


「もしヤバいことに巻き込まれてるんだったら俺が手を貸せないこともないぞ?」


 というか間違いなく面倒なことに巻き込まれてるだろ。

 これも何かの縁だろうし俺にできることがあるなら何かしてあげたい。


「いや、大丈夫。彼らは国の上層部ともパイプがあるらしいからね……」


 しかし、ハクトは一瞬考えるような様子を見せるとそう返した。


「な、それって――」


「ごめんっ……ごめんねハクト!!!私が……私が弱いからっ!!……私が……私がっ……」


 ――どういうことだ?と聞こうとした俺を遮りルカが泣きじゃくりながらハクトに抱き着く。

 ……今聞くのは無粋だよな。


「大丈夫……大丈夫だよルカ……大丈夫だから……」


 そんなルカの背中を優しくさするハクト。


「ごめんアキ。申し訳ないんだけど今日はもう帰ってもらってもいいかな?」


 ルカの背中に手を置いたままハクトは俺に視線を向けそう言った。


「ん、まぁ……そうだな。ごめん、それじゃあ帰らせてもらうよ」


 今の俺にできることはない。

 それが嫌というほど分かってしまったから俺は胸の中の何とも言えない不快感をそのままに宿屋を後にした。

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