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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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クロノス編・やってみろ

「……悪だから?」


「あぁそうだ。で?お前はなんでこんなところにいる?盗みでもしに来たのか?殺してやろうか?チンピラが……」


「よし、お前鏡見てこい。お前の方がよっぽど悪党って感じだからな」


 誰がチンピラだ、この優男め。

 今の俺は立派に……立派に一端の犯罪者だったな俺。


 ……あれ?ていうかこれけっこう不味い状況なんじゃ……

 どうする?

 とりあえずはこいつがここにいる理由とか聞くべきか?


「おいお前!私を助けろ!そうしたらもうお前のことは放っておく!だから助けてくれ!!私は……私はまだ死ぬわけにはいかないんだ!!」


 思いがけない優男との再開と今の状況にどう動けばいいものか悩む俺に首に刃を当てられたままおっさんが叫ぶ。

 

「……黙れクズが」


 そんなおっさんを汚物でも見るような目で一瞥すると優男はおっさんから手を離し握られた剣を振り上げ一言


「死んで償え」


 そう言っておっさんの首めがけて降り下ろした。


「――ッ!『アースウォール』!!」


 おっさんの前に壁が出現し優男の剣をほんの数瞬止めたあと砕け散る。

 そしてその数瞬の間に俺は……

 

「――くそっ……!何やってんだろな俺は……!」


 おっさんを優男から回収した。 


「……なんのつもりだ?」


「……俺が聞きたいくらいだっての……」


「そいつをよこせ。邪魔するならお前も殺すぞ?」


「殺されるって分かってるのに渡すってのはな……そもそもこいつ誰?ザンクってこいつでいいの?」


 助けたはいいけど結局のところ俺はこいつが誰か知らないんだよな……

 ザンク……でいいんだよな?


「あぁそうだ!私がザンクだ!頼む助けてくれ!まだ、私はまだ死ぬわけには……」


「分かった、お前がザンクってのは分かったからまとわりつくな鬱陶しい……」


 まぁこれで全然関係ない奴ってことの方がありえないよな。


「……けど、お前良いのか?」


「何がだ?」


「俺はここには全てを終わらせに来たわけだぞ?」


「そ、それは……」


「お前がミナを狙わせたこともカイに怪我を負わせたことも許す気なんて俺にはない。正直感情だけで動いていいなら今すぐお前の事をぶん殴ってやりたくて仕方がないしな」


「ほ、本当にすまないことを……」


「謝ってすむレベルはとうに超えてんだよこのクズが……」


 怒りで声が震えているのが自分でもよくわかる。


 あー、ダメだダメだ……

 いったん落ち着け俺……


 俺は何のためにここに来た?

 こんなくだらないことで言い合いするために来たわけじゃないだろ?

 俺がここに来た目的を思い出せ。

 今はただそれを成し遂げることだけ考えろ……


「……俺はここに終わらせに来たんだ。お前には何が何でも罪を背負わせる」


 ……こいつは許されないような罪を犯した。

 きっとこいつが居なければレイ達は今頃クロノスで幸せに暮らしていたはずだ。

 こいつはそれを奪った。


 だから絶対に許さない。

 罪の重さと向き合わせて一生抱えさせてやる。

 罪も償わずにただ死ぬなんて……俺が絶対に許さない。


「簡単に死ねるなんて思うな」


「ひっ……」


 小さく悲鳴をあげ後ずさるザンク。

 この時点でこの男はようやく悟ったのだろう。

 自分の未来にはもはや希望はないのだと。


「……お前は何をしにここに来たんだ?」


 優男が呟くように俺にそう問う。


「こいつのせいで酷い目にあったからいい加減それにけりをつけようと思っただけだよ」


 こいつがどう動くかによって俺が思っていた以上に面倒なことになりかねないんだよな……

 ザンクの命は大人しく諦めて欲しい……

 いや、それ以上に俺が盗賊だとばれないのが一番大事だが……


「酷い目っていうのは具体的にどういうことだ?クロノスの住人以外はこいつのせいで被害を被るようなことは無かったはずだが?」


 優男が問い詰めるようにそう聞いてくる。

 ……ザンクとの関係を疑われてるのか?

 まぁこんな時間にこんなところにいたら疑われるのも当たり前だろうけど。


「あぁ……それは……」


 なんて答える?

 本当のことを言うわけにはいかないし……


「それは?」


「……その……あれだよ……知り合いがクロノスに住んでてな……それで……」


 ……いや、ダメか。

 仮にそうだと仮定しても俺がここに来る理由にはならない……


「それだけでわざわざ王国に報告するわけでもなく自分からこいつを捕まえに来たのか?なぜそんなことをした?」


 やっぱりそう思うよな……

 普通に考えて王国に知らせた方が早いし安全なんだから当然だ。


「――ッ……それは……」


 どう答える?

 俺がここに来て不自然でない理由……


「……あの?頭、大丈夫ですか?」


 俺と優男が見つめ合うなかグレンが曲がり角で覗きこむようにこちらに顔をだしそう言った。


「……お前は……王族殺し……頭?」


「……グレン」


 タイミングが悪い…!

 どうする?この場合こいつならどう動く?

 気づかれたか?気づくな、頼むから気づくな……

 いや、そもそもグレンが盗賊団を作ったことはクロノス以外にはそこまで知られていないのか?


「…………なるほどな……そういうことか……そういうことなら王国に報告なんてできるわけが無いよな。この盗賊どもが……」


 敵意むき出しの目を俺達に向け優男は不敵な笑みを浮かべそう言った。


 ……最悪だ。


「それでお前ら……死ぬ覚悟はできているんだろうな?」  


「……勘弁してほしいな」 


 思わず笑みが浮かんでくる。

 ひきつったような、乾いたようなそんな笑みが。


「あの……頭……これは一体……」


「グレン、悪いけど今取り込み中なんだ。帰ってくれないか?」


 俺の想定では、最悪でもザンクとマギ達を同時に相手するってレベルだった。

 マギ達が強いのは理解してる。

 けど、それでも倒す気で闘えば何とか勝てるはずだった。


 だけど……こいつは違うだろ……

 どうやったのかは知らないが、外の冒険者に知られることもなく屋敷の中に入り込みほとんど傷を負うこともなくマギ達四人を殺した。


 こいつと闘うのはどう考えてもまずい……

 少なくともグレン達をここに居させるわけにはいかない……


「……おい」


 背後から聞こえた声。

 それに気づいた時すでに優男の刃は俺の首に届こうとしていた。


「――ッ!マジかよッ!?」


 迫り来る刃を体を後ろに反らしなんとか躱す。

 首から血が流れていても躱せているというのなら、の話だが。


「誰一人逃げられるなんて思うなよ?このクズ共が……」 


 そう一言俺の目を見て優男は言うとそのまま完全に無防備な状態の俺を蹴り飛ばす。


「――ガハッ!?」 


 そして、その蹴りは明らかに常識を外れた威力で俺に屋敷の壁を突き破らせ外へと追い出した。


「――っ痛……化け物かよ……くそがっ……」


 身をもって味わった。

 首からは洒落にならん量の血が流れ、ほぼ反射であいつの蹴りを受けた腕は完全に折れている。

 というかこれ肋骨も折れてるかもな……

 呼吸するのすら辛い。


「『リザ、レクション』『ハイヒール』『ヒール』」


 三種の回復魔法の光が体を包む。

 それと同時に体から痛みと傷がひいていく。


「戻ら、ないとな……マジで洒落にならんぞあいつ……」


 三種の回復魔法を使ってもなお体には軽い傷が残っている。

 詠唱短縮と魔法の使用者本人であることの効力軽減を考慮にいれてもあいつが異常なことがよく分かる。 


 対峙した時から薄々感じてはいたが確信した。

 あいつは俺より強い。


「そうなると逃げる一択なんだけど……ッ!」


「逃がすと思うか?」


 回復した俺を見て穴のあいた壁から突っ込んでくる優男。


「全く思わない!」


 優男の剣と黒檀がぶつかり合い金属同士がぶつかる独特の音を奏でる。


「光属性の適性持ち……回復されないように一撃で殺すか」


「ちょっと話し合うって選択肢はないのな!?」


「盗賊風情と話すことなどない!!」

 

「ッ!やばっ……」


 互いの剣を打ち合う俺と優男だったがどうやら剣技も俺はこいつに勝てないらしい。

 黒檀による防御をこじ開けられ再び無防備な状態をさらす。

 さっきと違うのはとんでくる攻撃が蹴りではなく剣による斬撃だということ。 


「『エクスプロージョン』!!頭!大丈夫ですか!?」


 だが、優男が俺に一太刀与えるより先に屋敷から俺の援護に来たグレンの魔法が優男に襲いかかる。

 初めて見た魔法だけどえげつない威力だ。


 ……ちょっと俺にも当たった。


「ちっ!鬱陶しい!」


「助かったよグレン。正直やばかった」


 けど、そこまで状況は変わらない。

 俺とグレンが一緒に闘ってもたぶん勝てない。

 というかたぶんレイ達を含めて全員でかかっても勝てない。


 理由は簡単。

 たぶんあいつはこれでもまだ本気じゃない。

 あいつの腰に下げられた剣。

 一つは今あいつが使っているものだがもう一つはあの日結局あいつが抜かなかった剣だ。

 もし俺の予想通りならあの剣は……


「アキ君!グレンさん!大丈夫!?」


 レイ達も騒ぎを聞きつけてやって来た。

 結局全員集まったな。


「アキ君、あの人だれ?」


「とりあえずは敵だな。しかも化け物じみて強い」


 俺の言葉に一瞬表情を驚愕の色に染めるレイだったがすぐに表情を戻すと


「どうやって勝つ?」


 好戦的にそう言った。


「俺達がここに来た目的はこいつを倒すことじゃないだろ?というかザンクは?」


「あの男に両足潰されていたので動けないかと」


「マジか……」


 あいつ、怖いな。

 まぁけどそういうことなら目的は果たせそうだな。

 

「…………よし、決めた。お前らザンク連れてここ離れろ。あ、あいつがやってたこと証明できる物も忘れずにな」


 これが妥当なところだろう。

 目的を果たすためにはザンクを捕まえる必要があるけどそれはすでに達成したようなもん。

 ならあと残る問題はこの化け物だけだ。


 まともに闘う必要はない。

 というかそんなことしても殺されるだけだ。

 なら逃げるのみ。

 けど、普通に逃げてもすぐに追い付かれて結局殺される。

 

 だから俺が逃げ切るまでの時間を稼ぐ。

 我ながら完璧な作戦だ。

 優男がザンクを潰しておいてくれたおかげで余計な手間が省けた。


「お前らって……アキ君はどうするつもり?」


「ここで時間を稼ぐ。あいつから普通に走って逃げるとか無理だからな」


「そんなことしたらアキ君が……」


「大丈夫だって!俺が負けるとこなんて想像できるか?」


「……けど!」


「うーん、それじゃあ……」


 レイのところまで歩み寄り頬に手を触れる。

 分からないといった目で俺を見るレイ。


 予想はしていたけどやっぱりこうなるよな……

 レイとかヘレナさんは心配性だし……

 もし生きてたらあとで怒られそうだな……


「『ショックボルト』」


 レイの体を電撃が流れ一瞬体をビクッと反応させるとそのまま力を失ったように崩れ落ちる。 


「な、んで……?アキ、く、ん……」


 振り絞るようにそう言って意識を失うレイ。


「……ごめんな」


 こうでもしとかないと戻ってきそうだから……


「グレン……頼む……」


「……」


 俺の言葉になにも返さないグレン。

 きっとわかっているのだ。

 これが最善の方法だということも。

 たぶん俺が勝てないことも。


 だからなにも言わない。

 グレンには最後の最後まで迷惑かけるな……


「頼む」


「…………御武運を……祈っています……」


 絞り出したようなグレンの言葉に俺はレイを抱き抱えて渡すことで答える。


「アキ兄……」

 

「んな顔すんなよカイ。俺が負けるわけないだろ?」


「そりゃそうだけど……」


「じゃあ待っててくれ。明日の朝には帰るからさ」


「……うん」


 なんでだろな……

 こんな時だってのに、心配されてるんだなぁって思うと凄い嬉しいし幸せだ。

 本当に異世界に来て出会えたのがこいつらで良かった……

 だからこそ……


「僕が行かせると思うか?」


「俺がここを通すと思うか?」


「「……やってみろっ!!」」


 絶対に守りきってみせる!


「早く行け!」


「……ッ死なないでください!」


 グレンは最後に一言俺にそう言うとカイ達を連れて屋敷の中のザンクを回収しに向かった。


 無茶を言ってくれる。

 こんな化け物に勝てるなんてとても思えないしかといって逃げるわけにも行かない。

 いささか俺には荷が重い話だ……

 

 まぁそれでも……お前らが逃げる時間くらいは死に物狂いで稼げばなんとかなるだろ。

読んでいただきありがとうございます!

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