クロノス編・依頼を一緒にこなす仲間に敵対視されている時の対処法が知りたい
「なんでてめえがここに居やがる!?」
護衛対象との待ち合わせの場所で他のメンバーを待っていると来て開口一番にそう言われた。
「…………はじめまして!初対面ですが今日は一緒に頑張りましょう!」
「ふざけんな!!」
昨日の事はなかったことにしようと思ったのだがそううまくはいってくれないらしい。
お互いに忘れた方がいいだろうに。
「……ふざけんな、と言われても……俺もこの特別依頼受けてるんですよ。ほら、これ印鑑押してありますよ」
「……エミリの奴こんなガキを……」
歯ぎしりして悔しがっている様子のマギ。
まだ、エミリさんに気があるのだろうか?
脈があるどころか普通に嫌われてるからあきらめた方が良いと思う……
「けどぉ、新人君はぁDランクなんだよねぇ?そんなんでぇ私達と一緒にぃ依頼こなせるのぉ?」
この四人組パーティの紅一点、ソニーがバカっぽい口調でそんなことを聞く。
まぁ確かにごもっともな質問だよな。
普通に考えてBランクとDランクではかなりの実力差がある。
俺が実際のとこどこまでやれるのかはいまいちよく分からないがエミリさんが印鑑を押したということはたぶん大丈夫と考えてもいいのだろう。
……めんどくさくなって俺に押し付けたとかじゃないよね?
「一応俺はエミリさん期待の新人みたいですからね。なんとかついていってみますよ」
「そぉ?まぁ私達のぉ足手まといにはぁならないでねぇ?」
「頑張ります!」
うーむ、にしてもだ。
もしかするとこのパーティで一番頭がキレるのはソニーなのか?
こんなに口調アホっぽいのに?
「あぁ~、今なんかぁ失礼なことぉ考えたでしょ~?」
「ソニーさんがこのパーティの頭脳なんだなって思っただけですよ」
……なんで女の人ってこんなに鋭いんだろね?
理不尽だよ。
男にもなんか似たようなの欲しい。
女の人の機嫌が数値化して見えるとか。
「おや、皆さんお揃いですか?」
バカなことを考えていると後ろから声をかけられた。
「えっと…あなたが依頼主さんですか?」
後ろを振り向くとそこには少し小太りの温厚そうな雰囲気の男性がいた。
「ええ、今日はよろしくお願いしますね。私はクロマと言います」
「あ、俺はアキと言います!よろしくお願いします!」
「おい、さっさと行くぞ」
そう言うとマギは一人で荷馬車に乗り込んでしまった。
……あれ?護衛は?
「そしたらぁ新人君はぁ荷馬車の右斜め前を守ってぇ」
マギの行動に呆けているとソニーに促され荷馬車の右斜め前を守ることになった。
そして、ようやくマギの行動の意味に気付いた。
マギは荷馬車にもしもの事があった時に護衛対象、つまりクロマさんを守るために荷馬車に乗ったのだ。
……ごめんよマギ、サボる気なのかと思った。
「それでは行きましょうか」
クロマさんがそう言ったあと荷馬車が動き出しいよいよ特別依頼が本当の意味で始まった。
何事もなければいいけど……
フラグ?何それおいしいの?
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「ようやく半分ってところか……」
それまで朝会った時からずっと黙っていたカネロが唐突に口を開いた。
その口調は刺々しいものだ。
まぁ、そうなっても仕方ないだろう。
ここに来るまでに散々魔物に襲われたからな。
討伐依頼で探しているとなかなか出てこないこともあるのにこういう時だけ大量にでてくるのはやめて欲しい…
カネロはこのパーティの『壁役』らしく彼の土属性魔法で防ぎきれなかった魔物の攻撃を全て受けきっていたので一人だけ鎧のいたる所に傷や土埃がついている。
俺も何度か彼に庇ってもらった。
もう、土属性魔法は使えないな。
今更使えるとか言ったらマジギレされそう……
「おい!新人!気抜いてんじゃねえぞ!そんなんだからカネロが庇う羽目になるんだろが!」
マギから俺に向かってのアドバイスがとぶ。
マギは森に入ってからずっとこんな調子だ。
時折顔を見せたと思ったら俺に一言二言投げつけて再び引っ込む。
絶対に私怨があると思う。
「はい……」
「新人君もぉ大変だねぇ」
軽く同情したような視線をソニーが俺に向ける。
そう思うならマギの手綱をしっかり握っておいて欲しい。
「マギの奴はずっとエミリを狙ってきてたからな。自分よりもお前みたいな新人に期待してることと酷い本音を聞かされたせいで情緒が不安定なんだろ。あいつはいつもあんなではないぞ」
「誤解するなよ?」と言いたげにこのパーティの最後の一人アマテがそう口を開いた。
火、水、雷、の三属性の適性を持ちどの属性も上級魔法まで使えるというかなりの実力者だ。
見ていた感じだと近接戦闘は全くダメらしいがカネロがいるなら大した問題でもないだろう。
「まぁ……昨日のは本当に酷かったですもんね……」
流れるようにマギに向かって放たれた言葉の弾丸。
何人か流れ弾くらっただけで瀕死だったのだ。
むしろ全弾命中して心が壊れていないマギの精神力はかなり強いと言えるのだろう。
その反動が俺への八つ当たり気味のアドバイスになるのは勘弁して欲しいところだが。
「ほらぁ、そろそろぉ依頼も終盤だからぁ気を引き締めてぇ」
何の締まりもない声で気を引き締めろと言うソニー。
まぁ実際気は引き締めておくべきだろう。
あと少しで依頼完了というところで気を抜いて大ケガをする羽目になったという冒険者の話はよく聞く。
ギルドに帰って報告するまでが依頼なのだ。
「まぁここまで無傷で来れたんだ、なんとかなるだろ」
「おいアマテ、お前俺のことを見ても同じことが言えるか?」
傷のついた鎧を見せながらカネロはアマテにジト目を向ける。
そして、気づいた。
アマテの背後に凶爪が迫っていることを。
「――ッ!『アースウォール』!」
カネロの魔法によって作られた壁がアマテに迫る凶爪を阻む。
しかし、詠唱短縮による効力軽減が原因かそれとも爪の持ち主の攻撃が強すぎたのか……壁はほんの数瞬攻撃を防いだあとあっさりと砕け散った。
「――ッ!くそっ……」
壁のおかげで何とか攻撃を避けきることが出来たアマテは悟る。
もしあの壁がなかったらああなっていたのは自分だったと……
「ガルァアアッ!!」
「……グラトニーベアー、か」
カネロはあっさりと砕かれた自分の壁を見て額に汗を浮かべそう呟く。
「けどぉ、子供でしょお?ならぁ余裕でしょお」
焦りの一つも見せずいつもの口調でそう口を開くソニー。
断っておくが子供とはいえグラトニーベアーはBクラスの魔物。
当然侮って良い相手ではない。
それを倒すだけの力があるなら話は別だが。
「それじゃあ、親が来る前にぃ殺しちゃお~」
ソニーの言葉を合図にカネロ、アマテの二人が各々の武器を構える。
「……?おい!新人!早く構えろ!死にたいのか!?」
アマテが棒立ちでグラトニーベアーを見る俺に声をかける。
「………アマテさん……」
けど、俺はそれどころじゃなかった。
「なんだ!?」
「……暗き森にはグラトニーベアーって結構いるんですか?」
「は?いるわけないだろ!この森の主に子供がいることすら今知ったってのに!」
「……そうですか」
あぁ、間違いない。
あの子供は……
俺が殺したグラトニーベアーの子供だ。
読んでくれている皆様ありがとうございます!




