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異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

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唐突に来たその日

「この依頼でお願いします」


「はい、お気をつけて」


 俺は今、ギルドに来ている。

 理由は二つ。

 一つは先程の会話でも分かるようにいつも通り依頼を受けに来たからだ。

 そして、もう一つの理由。

 それは……


「お兄ちゃん! 早く行こー!」


 ミナをミニャの居るところに案内するという約束を果たすためだ。

 あれから三日間、毎日ミナはギルドに来ている。

 まぁ、予想がついてなかったわけではないし、危険なことをする気はないので子供が一人ついてくるぐらいなら何ら問題はない。


 ただ一つ不安なのはギルドで変な噂が広がっているらしいことだ。

 その噂というのが目付きの悪い新人の実力派冒険者が子供を洗脳して自分に懐かせているというもの。

 ……一体どこからこんな根も葉もない噂が流れたのか。


 弁明しようにも冒険者に話しかけようとするだけで悲鳴をあげられることさえあるのだ。

 どうにも以前にヘレナさんとレイの首に奴隷の刻印が有ったことがこの噂の信憑性に拍車をかけているらしい。

 本当に泣けてくる。


 今ではまともに話してくれるのはエミリさんだけだ。

 昨日、エミリさんに変なちょっかいをかけると俺が出てくるという噂もあるらしくエミリさんにセクハラがなくなったと感謝された。

 心当たりがないうえに話したこともない冒険者にそこまで怯えられているということが俺のガラスのハートを粉々にしていったことは言うまでもない。

 ……というかエミリさん、まさかとは思うが自分でその噂流したとかないよね?


「お兄ちゃんなに変な顔してるの? ただでさえ怖い顔なのに余計怖くなってるよ?」


「……いや、女の人って怖いなって……ん?」


「どうかした?」


「いや……なんでもない……」


 何かひどいことを言われたような気がするがきっと気のせいだ。

 気のせいに違いない。

 違いないったら違いないのだ。


「それでなんで怖い顔してるの?」


「これは生れつきですけど!?」


「はじめて気づいた……」


「ちょっ!? 泣かないで! お願いだからここでは泣かないで!」


 現在、俺たちがいるのは王都の町中。

 こんなところで泣かれてしまったら…

 王都の町中で小さな女の子を泣かせている人相の悪い冒険者。

 普通に考えて事件だろこれ。


「というか今気づいたってことはこの数日間俺の顔見てなかったってことか……」


 それはそれで酷いと思う。

 恩着せがましいことを言う気はないが、俺一応ミナとミニャにとってかなり必要な人間のはずなんだけど……


「だって、ミニャに会うまではミニャのことで頭が一杯だったし、ミニャに会ってからもミニャのことで頭が一杯だったし、今もミニャのことだけ考えていたいからお兄ちゃんのことなんか正直どうでも良いし……」


「ミニャが大事なのは分かったからもう少し俺にもその気持ち分けてくれる!? 泣いちゃうよ!? お兄ちゃんこの年でみっともなく泣いちゃうよ!?」


 真剣な表情でそんな辛辣なことを言うミナに懇願する俺。

 当の本人は全く意に介さず何処吹く風といった様子だが……

 きっと悪気はないのだろう。

 悪気は一切なく本気で俺のことなどどうでも良いと考えているのだ。

 ……くそぅ、駄々こねてやろうか……


★★★★★



「ミニャ!」


「クゥン!」


 ミナとミニャが互いに飛びつくようにして抱き合う。

 これはこの三日間全く変わらない。


「じゃあ俺は依頼終わらせてくるから」


「ミニャ? 今日は何する?」


「クゥン、クン、クウゥン」


 へんじがない。

 ただのしかとのようだ。


 自分の存在価値について考えたくなる。


 ……まぁ楽しそうだし良いんだけどね。


「さて、俺はさっさと仕事をしますかね…」


 今日の依頼はロコの花の採取だ。

 あいかわらず植物である。


 レイ達の負担を減らすためにも俺が討伐をしなければいけない。

 それは分かっているのだが……


 ……俺にはその資格がないのだ。


 あいつらが持っている資格がないのだ。


 だから、俺には殺せない。

 あいつらの負担を減らせない。


 きっとそうだ。


 ………。


「見つけた……」


 薬草に隠れて生えていたロコの花を摘む。


「たしかこの辺りの森だとこの森にしかないんだよな……」


 独り言を口にしながらまた一つ花を摘む。

 そうしないと何か得体のしれないものに押し潰されるような気分になるから。


「……やっぱり少ないな」


 また一つ、また一つ、俺は花を摘む。


「……それでも探せばきっと見つかるはずだ」


 俺が探しているのは……





「お兄ちゃん何やってるの?」


「ん……」


 気づけば隣にミナがいた。

 その隣にはミニャがいた。

 どちらも不思議そうな、心配そうな顔をしている。

 というか、ミニャよ。

 お前その顔どうやったら魔獣ができるんだよ。

 表情筋豊かすぎるだろ。


「それ、取りすぎじゃない?」


「……そうだね」


 必要な数は二十個。

 袋一杯につまった花は明らかにその数を越えている。


「ちょっと考え事してたから」


「全然帰ってこないから心配したんだよ?」


「ん、ごめん」


「クゥウン」


 窘めるように人差し指をピンと立てるミナと「気にするな」とでも言うように右前足を俺の肩に置くミニャ。

 やっぱりこいつのなかには人が入ってると思う。

 探せばファスナーとかあるんじゃないかな?


「俺はギルドに戻るけどどうする?」


「んー、けどお兄ちゃんまた依頼受けて戻ってくるよね?」


「一応そのつもりだけど、良い依頼がなかった気がするから依頼受けずに戻ってくるかも」


「……待ってて良い?」


「分かった」


 ミナに言葉を返しながら袋を手に取る。

 なんか気づいたら袋がパンパンになってること多いよな。


「じゃ、行ってくる」


 手を振って見送ってくれるミナとミニャに手を振り返して王都へと戻る。

 ミニャが手を振っているのはもう知らない。


★★★★★



「さっき見たときはあんまりよさそうな依頼はなかったんだよなぁ……」


 王都へ戻りギルドで依頼完了を報告した俺は再びボードを見ていた。

 ちなみにさっきの依頼の報酬は銅貨七枚。

 まぁまぁといったところか。


「うーむ、やっぱりないよな……」


 Eクラスのボードには依頼自体は多めに貼ってある。

 けど、その多くは討伐の依頼となっているのだ。

 多分討伐以外の依頼は全てのランクでもっとも数が少ない。


「いっそのことFクラスの依頼でも受けようかな?」


 三日前にミニャのことを知ってからはこれまでよりも注意して魔獣を討伐することになってあまり稼げていないので少しでも稼いでおきたい。

 まぁ、それでも生活に困ることはないし一番心配していた魔獣を討伐することに抵抗を覚えるということは一切ないらしいが。


 レイいわく「それとこれとは別」だそうだ。

 ミニャも自分達の同族が狩られていることには一切興味を示していない。

 自分の群れの仲間以外はどうでもいいのだろう。


 ……こういうところは世界の違いを感じる。

 日本では事故や事件で死者が出ればテレビや新聞で取り上げられていた。

 少なくともここまで死というものに対してあっさりしていなかった。


 だから怖い。

 自分と彼らに埋めようのない違いがあるような気がして怖い。


「Fクラスのボード見に行くかな」


 ふと浮かんだ嫌な考えを振り払うようにわざわざ声にだしながらEクラスのボードの前を立ち去る。

 そして、Fクラスのボードの前に立って気がついた。


「なんだ、この依頼?」



Fクラス:生態調査

依頼内容:『暗き森』に生息する魔物や植物の調査

報酬:銅貨三枚、1000ポイント

備考:暗き森の主が昼間に目撃されたという情報あり。真偽を確かめるように。


 

 依頼内容からして他とは違うが何より報酬にポイントが含まれる依頼なんて聞いたことがない。

 変な依頼だ。

 だが、この依頼……ものすごく楽ではないか?

 暗き森の生態なんて毎日森に入っているグレンたちはとっくに知り尽くしているだろう。

 暗き森の主とかいうのが少し気になるが……

 まぁ、アジトに戻るだけで依頼を達成したも同然なのだ。

 気にするほどでもないか。


「けどそうなるとミナが問題だな……」


 ミナは俺やレイが盗賊なんて知らない。

 まぁ、当然だけど。

 もし万が一俺がアジトに戻るのを見られたりしたら……

 面倒なことになりそうだ。

 そういうことを避けるためにこの三日間は昼間はアジトに戻っていないのに意味がなくなってしまう。

 

 とはいえ、この依頼を逃すのはもったいないな。

 んー……

 ミナには悪いが今日は帰ってもらうか……


★★★★★


「い・や!」


「そこをなんとか!」


「絶対にまだ帰らない!」


 というわけで絶賛説得中だ。

 帰る気配は一切ない。

 ご立腹だ。


「クゥン」


 説得が難航しどうしたものかと考える俺の肩に前足がおかれる。

 当然ミニャのものだ。

 その前足はまるで「俺に任せておけ」とでも言っているかのような力強さを持っていた。

 心なしか目力もいつもより力強い気がする。

 ……って、何言ってんだろね俺。

 言葉も発せないミニャに説得なんて――


「クウゥン、クン、クゥン、ククゥン、ウォン、クウォウォン」


「……………………ミニャがそこまで言うなら……」


 ――できたね。

 めちゃくちゃスムーズだったね。


「それじゃあ行こうか」


「……うん」


 ミナの声は来たときとは違い沈んだものだ。

 まぁ、思っていたよりもかなり早く帰ることになったのだから仕方ないか。

 王都に帰ってしまえば両親が帰ってくるまで彼女は一人だ。

 ……よし


「……王都で何か食べようか?」


「え?」


「何食べたい?」


「え、えっと……フルーツタルト食べたい!」


「いいね、食べよう!」


「……けど大丈夫なの?」


「ん? 何が?」


「お金……貧乏でしょ?」


「む、さすがにタルトを食べるくらいのお金はあるよ……多分」


「……ほんとに?」


「ほんとだって! ほら、早く!」


 それ以上有無を言わせずミナを連れて王都の喫茶店で約束通りフルーツタルトを食べてそれから別れた。

 別れるときも笑ってたし多分少しは埋め合わせになっただろう。


「よし。戻るか」


 この世界ではじめて食べたスイーツに心も財布も軽くなった俺はいつも以上に軽快な足取りでアジトへと向かう。

 グレンが好きなときに使ってとか言って渡してくれていた銀貨が役に立った。

 ……今度食べたくなったらヘレナさんに土下座で頼み込んでみよう。


★★★★★


「けど、土下座で頼み込んだところで作ってくれるか怪しいよな……」


 森の中で一人俺は呟く。

 内容はもちろんフルーツタルトについてだ。

 本当においしかったのだ。

 元々生きていたときも甘い物は好きだったのだがこの世界に来てからはそれどころではなかった。

 そこで食べる久しぶりのスイーツ。

 それだけでもかなりの衝撃だった。

 願わくばもう一度あの味を!

 というかヘレナさんならそれ以上の物が絶対作れる!


 となると結局どうやったら作ってくれるかという話に戻る。

 まず材料費が一体どのくらいかかるのかというのが一番の問題だ。

 基本この世界の食材は安いと思う。

 生きてたときの半額くらいだ。

 けど、逆に調味料は高い。

 砂糖なんかは三倍の値段はした気がする。

 んー、俺の土下座だけでは厳しいかもしれない。

 こうなったらグレンに頼むか?

 何かの本で男女共に容姿の優れた異性からの頼み事は断りづらいとかなんとか読んだ気がする。

 本当に気がするだけかもしれないが。

 ちなみに俺が頼み事をするとそれは恫喝になる。

 世は無情だ。

 だいたいこのせ――


「――さんっ!! しっかりしてください!! 目を開けてッ!!」


 …………なんだ……今の……?

 …………アジトの方から聞こえたような……


「…………っ」


 背筋に言い様のない悪寒がはしる。

 それから逃れるように全速力でアジトに向かって走った。


 ……そして、見つけた。

 血塗れで倒れるグレンとその周りを囲むヘレナさん達を。


「――ッ! 何があった!?」


「か、頭! グレンさんが巨大な熊のような魔物から私達を庇って……」


「熊? ……いや、今はそれより『無より生まれし光よ 連なりし癒しよ 命ある者を生かす癒し 万物の理すら越えろ リザレクション』!」


 詠唱を終えると同時に激しくそして優しい光がグレンの全身を包む。

 上級光属性魔法『リザレクション』

 たとえ腹に穴をあけられようとも四肢をもがれようとも命さえあればどんな状態でもまるで蘇生したかのように対象一人を完治させる最大回復魔法。

 もしもの時のことを考えて回復魔法を優先的に勉強していたのが功を奏した。

 だが……詠唱が長すぎる。

 『リザレクション』は生きている相手にしか使えない。

 詠唱の最中に死んでしまえばそれで終わりなのだ。

 魔導書に記載されていた詠唱短縮を修得しておくべきだった……


「くっ、頭、すいません。俺が未熟なばかりに……」


「そんなことはどうでもいいから何があったか教えろ! 他のやつはどこだ!? 無事なのか!?」


「――ッ、頭! レイ達が自分達を囮にして森の中に!」


「なっ!?」


「あの魔物はこの森の主『グラトニーベアー』です! レイ達ではとても対応しきれません!」


 グレンの言葉の一言一言で体から血の気が引いていくのが分かった。


「分かった! すぐ助けに行く! レイ達はどこ――」


「キャアッ!」


 森に響いた悲鳴にその場が静まり返る。

 ………………レイの声だ。


「――ッ!」


「頭!」


 叫ぶグレンの声を背中に浴びて森の中を声のした方向に向かって走る。

 ……間に合え……間に合え……!


「グルァアア!」


「……っ。こっち、か……」


 獣のうなり声のような音に向かって飛び込む。

 そこは他と違い木がない開けた空間になっていた。


 こんなところはじめて見た……なんて感想を抱く余裕はない。

 そんなことがどうでもよくなる光景が目の前にあるから。


「アキ君……」


 レイがいた。

 カイもアイもマイもメイもみんないた。

 けど、レイ以外は誰も動いていない。

 生きては……いると思う。

 けど、問題はそこではない。

 唯一意識があるレイの目の前にバカでかい熊がいてレイは傷だらけで座り込んでいる。

 逃げられない……

 その先にあるのは……


「ガルァァアア!」


 咆哮と共に熊が振り上げた腕を振り下ろす。

 ……死ぬ……死ぬ……このままじゃレイが死ぬ……!

 時間が経つのが、周りの動きが、この世界の全てがあり得ないほどゆっくりと流れていく。

 振り下ろされる腕も、熊の咆哮も、全部遅い。

 そしてその世界の中でレイはゆっくりと視線をこちらに向けて


「みんなを助けて…」


 困ったように笑った。

 

「……おい……止めろ……止めろっ!!」


 走った。

 叫んだ。

 俺が意識してそうしたのか。

 それとも無意識のうちにそうしたのか。

 分からない。

 分からないけど俺は叫んで走ってそして……


「ガ……ガァ……ア」


 熊の胸を貫いた。




アキ・シンドウ

Lv.12

Next.300exp

ランク:E

Next.2050p

HP.3330/3330  MP.1416/1610

魔法

火属性

【ファイアアロー】MP.5

【ファイアボール】MP.25

水属性

【ウォーターボール】MP.5

風属性

【ウィンドカッター】MP.5

土属性

【ウォール】MP.5

【サンドウォール】MP.25

【サンドチェーン】MP.25

雷属性

【ショックボルト】MP.5

光属性

【ライト】MP.10

【ヒール】MP.50

【リトルリペア】MP.50

【パワーライズ】MP.50

【スピードライズ】MP.50

【ガードライズ】MP.50

【ハイヒール】MP.100

【アブソリュートヒール】MP.200

【リザレクション】MP.200

闇属性

【ダーク】MP.10

?

【?????】MP.?

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