表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ハーレムはただしイケメンに限る  作者: 日暮キルハ
一章 手放せない日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/446

奴隷の盗賊団

前回のあらすじ

素っ裸にしようと思った盗賊は幼い少女でした。


_____________________



「お前、その子を裸にするつもりか……?」


 男が先ほどまでとは別の意味で得体の知れないものを見る目でこちらを見る。

 犯罪者に犯罪者扱いされる犯罪者面の図である。

 たぶんテストにはでない。


「いや! 違うから! そういうんじゃないから!」


 いや、だって予想外だろ?

 盗賊が子供なんて誰が思うんだよ!

 しかも女の子だぞ!?


 いや、たしかになんか大人の男にしては小さいなぁとは思ったよ。


 けど、まさか子供だなんて思うわけないじゃん!

 体を屈めて隙を伺っているのかなぁ?とか思うじゃん!


「というかこれほんとどういうこと!? なんで子供が盗賊なんてやってんの!? はやってんの!?」


 俺の感覚だと盗賊なんてのは、世紀末ファッションに身を包んだおっさんどもがやってるイメージだったんだけどな。

 案外、異世界だとこれが普通なのか?


「誰が好き好んで盗賊なんてやるか!」


 どうやら異世界でも普通ではないらしい。


「じゃあ、なんでそんなことやってんだよ!?」


「……それは…………」

 

 一瞬言葉につまる男。

 そして。


「……そうする以外に生きる道がなかっただけだ」


 吐き捨てるようにそう言った。


「……どういう意味?」


「…………」


 ……だんまりだ。

 無理に答えさせることでもないんだけど……気になる。


「無理強いするつもりはないけどさ、ここまで関わっちゃったんだからそれくらいは教えてくれてもいいんじゃないの?」


「……お前に話したところで仕方のない話だ」


 いや、まぁそうだろうけどさ。

 というか……そもそも盗賊以外に生きる道がないなんてこと本当にあり得るのか?


「なら、質問を変えるけど、盗賊じゃなくても冒険者として生きていくって道もあったんじゃないのか? お前強いんだし探せばいくらでも――」


「それができないからこんなことになっているんだろッ!!」


「……」


 当然激昂する男。

 そして、次の瞬間にはハッとした様子でまた地面を見つめる。


 ……うーむ、これはあれか。

 あんまし軽い感じで踏み込んでいい話題じゃないっぽいな。


 たぶんだけど、ここにいる盗賊で大人の男はこいつだけなんだと思う。

 今思えば、どいつも殴った時の感覚が軽すぎた。


 だとしたら子供や女が盗賊をやっているってことになる。

 そうしなければ生きていけない事情があるってことだ。


 少なくとも俺みたいなガキがどうこうできる問題でもないだろうし、何も言わず大人しくしておくのが一番良いことなんだろう。


 ……けど、だからといって放っておくのはなんか嫌だ。

 無一文が何を偉そうにって話なのは分かってるけど、こんなあからさまに困ってる奴を放置するのは流石に人としてアウトな気がする。


「……さっきも言ったけど、俺は無理強いして喋らせる気はないよ。でも、別に減るもんじゃないしさ。話すだけで楽になるってこともあるだろ? ……そりゃ、はじめは興味半分だったけどさ、もしお前が心底困ってるってんなら、少なくとも愚痴くらいは聞いてやれると思うよ。なにしろ俺は無一文の職なしで時間だけはあるからね」


「…………」


 放っておきたくない。

 できるなら助けたい。

 そうでなくともせめて愚痴を聞く位はしてやりたい。


 そんなのは結局俺の自己満足な偽善に過ぎない。

 そんなのは分かってる。


 けど、もう、そう思ってしまったのだから仕方ない。

 だから、もしこいつが俺に何かを話してくれるなら……


「……この森を抜けた先にクロノスという村があるのは知っているか?」


「へ?」


「知らないならいい」


「いやいや知ってる! ギルドでそんなこと言ってた気がする!」


 ポツリと話し始めた男に慌てて答える。

 なんかそんなこと聞いたような聞いてないような気がする。

 もしかしたら聞いてなかったかもしれない。

 なんだったっけ?蜘蛛の巣?


「その村がどうかしたの?」


 とはいえもう知ってることになってるし話は進めよう。

 雨の日はいじめちゃダメとかそういう話かな?


「……俺を除いた盗賊団『レブル』は全員その村の元住人で構成されている」


 ……ふむ。もっとちゃんと聞こう。


「……えっと、それはどういう……」


「いや、違ったな。正しくは元住人ではなく元奴隷だ」


「……奴隷……?」


 ……だめだな。

 情報に頭が追いつかん。

 ……えっと、つまりあれか?


 今、ここで倒れてる奴は元々クロノスって村に住んでて、しかも奴隷だったってことか?

 いや、んー、なんでそんなことになったんだ?

 そもそも奴隷なんてこの世界にはあるのか。

 

「もちろんこの国で奴隷は許されていない。だが、クロノスのあたりを治めている領主のザンクは金に汚いうえに頭が回る男でな……クロノスに面している森が魔物の多い暗き森だということがあって、他の村より監視が緩いのをいいことに王都からの使者を買収して王都に自分にとって都合の悪い情報がいかないようにしている。そのうえで重税を村民に課して払えない者を奴隷にして秘密裏に売りさばくかクロノスで壊れるまで酷使するかしているんだ。しかも、たちの悪いことに奴隷になりたくないがために以前より村民は良く働いてるらしい……」


 ふーむ、生憎頭が悪いので全部理解できたとは思えないが……要するに守銭奴の領主が物ではなく人を違法に売って私腹を肥やしてるってことか。


 そのうえ、その過程で掛けた税金でも私腹を肥やし、売れなかったら壊れるまで使い潰す。


 無駄なく搾取し尽くすってか?

 反吐が出るな。


 ……けど、そんなことが本当にまかり通るのだろうか?


「どうかしたか?」

  

 考え込む俺を見て男が不思議そうに声をかける。


「いや、少し不思議に思ってさ。いくら立地条件がそうゆうことをするのに適しているとはいっても使者の中には買収されないような正義感の強い奴だっているだろうし、村民だってそんなふざけた政治に大人しく従う理由がないと思うんだけど。それこそ王都に紙切れ一枚持っていかれたらその時点でその領主は終わりだろ?」


「たしかに使者にも村民にもこの現状をなんとかしようとする者はいたらしい……だが……」


「だが?」


 男は俯き一つ息を吐きだすと再び口を開いた。

 

「だが、もし王都に書簡を届けるために出て行った者が翌日に暗き森の入り口でひどい暴行にあった死体で見つかったらどう思う? もう嫌だと村を抜け出した者も同じように死体で見つかったらどう思う? 王都からの使者が領主から金を受け取っていたらどう思う? 買収されなかった使者の家族が行方不明になったらどう思う? 自分たちを救うと言った使者がその知らせを受けた後、領主に何か言われ土下座をしていたらどう思う? 王都に領主の親族や友人が多数いたらどう思う? 領主の屋敷が何十人ものCランク冒険者に守られ領主本人にはBランク冒険者が護衛についていたら一体どう思う?」


「……あー……」


「……もう、村民にはな、領主に逆らう気力も逃げ出す気力も……縋る希望すらないんだよ……」

 

 ……どうにも俺の考えは甘すぎたらしい。


 使者を買収し、それが無理なら大切な物を餌に脅して黙らせる。

 そして、村を出ていこうとする村民は問答無用で皆殺し。

 それだけのことをしたうえで自分には冒険者の護衛をつける。

 外からの助けも中からの脱出も期待できない。

 たしかに希望のかけらもないな。


 ……ん?あれ?おかしくないか?


「……なぁ」


「なんだ?」


「だったら、なんでこいつらクロノスの外に出られてるんだ?」


 絶賛気絶中の盗賊達を指さしながら男に問う。


「お前さっき、こいつらは元々クロノスの住人、いや、奴隷だった、って言ったよな?」


「あぁ、言ったな」


「じゃあなんでこいつ等生きてるんだ? 話を聞いた感じだとその領主は悪知恵が働く奴だと思うんだけど……そんな奴が自分の手の届かないところに内情を知ってる奴を逃がすなんておかしくない? いや、そもそもお前なんでそんなにクロノスの事について詳しいんだ? お前、何者だ?」


 立て続けに質問を投げかける俺に男は「待った、待った」と両手をあげる。


「そんなに一気には答えられないだろ?」


「じゃあ一つずつでいいからきちんと説明してよ。中途半端に聞いたせいでむしろ疑問が増えた」


「……じゃあまずは、こいつ等が生きてる理由だが……二つだな」


「二つ?」


「あぁ、まず第一にこいつ等が奴隷だからこそ生きてるんだ」


「……は? どういうこと?」


 奴隷だからこそ?

 自分のヤバい情報を持ってるかもしれない奴なんて奴隷だろうがそうでなかろうが関係ないだろ?


 どういうことだ?


「お前が言った通りザンクは悪知恵が働く奴でこれまでろくなことをしていない。そういう奴にとって絶対に防がないといけないことはなんだ?」


「そりゃあ……今までやってきたことがばれること、じゃないの……?」


「俺もそう思う。だからこいつ等は狙われないんだ」


「は? ……悪い、全く意味が分からん」


「……奴隷には発言権がないことくらいは奴隷が禁止された時代とはいえ知っているだろ?」


「いや、悪い。知らん」


「…………」


 とんでもないバカを見るような視線を送る男。

 来たばっかなのにそんなん知るわけない。

 かといって異世界から来ましたなんて言ったら間違いなく頭のおかしい奴認定されるよな……


 けどこのままではバカだと思われてしまう……


「たしかにこの国で奴隷は禁止されてはいるがそれは今代の国王陛下が即位されてからの話なんだ」


 悩む俺をよそに男が説明を始めてくれた。

 ありがたいけどなんか恥ずかしいな。

 バカだと思われてしまったか?


「当時は反対も多かったらしいし奴隷が禁止された今でも差別やザンクのように隠れて奴隷の売買をするなんてことはまだまだあることだ。そんな奴らのところに助けを求めに行ったところで何の意味もないだろ? 十中八九無視されるし下手すれば売られる。陛下の所に直接報告しに行けば陛下ならもしかすると聞いてくれるかもしれないがまず不可能だ。そんな奴隷を殺すために兵を割くくらいなら村民や他に怪しい動きをする奴を見張るために兵を回した方がよっぽど悪事がばれるリスクを下げることができる。だからザンクは逃がした奴隷を深追いはしないんだ。とはいってもそもそも逃がした奴隷自体こいつ等だけだろうけどな」


 えっと、つまりは……奴隷なら基本は放っておいても問題ないって考えられてるからのこの状況か。


「なるほど、な。けどまだ分からないことがあるんだが?」


「なんだ?」


「お前何者だ?」


「…………」


「お前の話だとあいつらは奴隷でわざわざ殺す必要がないから放置されてるんだろ? ならお前は? お前のことをその領主が放置している理由はなんだ?」


「…………」


「…………」


 それきりどちらも口を開かなくなった。

 数秒とも永遠とも感じられるような静けさ。

 木々のちょっとしたざわめきすらもうるさく感じるほどの静けさ。


 それを破って重苦しく口を開いたのは盗賊の男だった。


「……それを話す前に一つ頼みがある……」


「……? ……なに?」


「どうか……そのローブを譲ってくれ。頼む」


 男は頭を下げて懇願するようにそう頼み込む。


 ……分からない。

 何がそこまでこの男にさせるのだろうか。

 なぜこんなガキに土下座までしてこのローブを欲しがるのだろうか。


「必要なら俺の首を持って行ってくれてもかまわない。だから頼む。もう……時間がないんだ!」


「……時間がないってのはどういうこと? 俺がローブを渡したとしてそれを何に使うつもり?」


 状況は分からない。

 けど、何か切迫した状況にあるのは分かる。

 だから聞いた。だからこそ聞いた。

 きちんと聞いて。その上で判断を下さないといけないと思った。


「……今、俺たちのアジトには病人がいるんだ。あの子を救うには『フルム』という薬がどうしても必要なんだ。……だから、頼む! どうか譲ってくれ!」


 少し迷ったような様子を見せて、それを振り払うように二度頭を振ると男は一息にそう言いきった。


 ……つまりあれか。

 奴隷云々はとりあえずすっとばして今必要な情報は……


 放って置いたら人が死ぬ。

 それも俺が動けば助けられるのに、だ。


 …………それは、嫌だな。


「……分かった」


「ほ、本当か!?」


「ちょっとそこで待ってて」


「え?」


 採取した薬草の入った袋を片手に全速力で王都に戻る。

 そして、向かうは薬屋。

 ギルドに行く前に薬屋は見かけていた。

 だから迷わず店内に入って一言注文する。


「フルムをください……っ」


「…………銀貨一枚だ」


 中にいたのは、本職は冒険者ですか?と聞きたくなるくらい良い体つきのおっさんだった。


「すみません、お金はないんです」


「あ? 物品交換か?」


「はい」


「袋の中身は?」


「……へ?」


 袋?袋ってこの袋?


「袋の中身は? って聞いてんだ。早く答えろ」


「え……袋の中身は薬草だけど……」


「ふむ、いいぞ。交渉成立だ」


「え?」


「早くよこせよ。それともそのローブでもくれるつもりか?」


 そう言ってニヤリと笑みを浮かべるおっさん。

 なんか……ラッキー?


「い、いや、ありがと!」


 ローブを失うことなく店を出た俺はそのままの勢いで盗賊達のいる場所へと向かう。


 それにしても嬉しい誤算だ。

 正直ローブはもうだめだと思ってた。


 ……救いようのない、どうしようもない偽善だとは分かっている。


 馬鹿げた話だけど、あの男の話であいつらが死ぬのを黙って見ていられない程度には情が沸いてしまった。

 奴隷として冷遇されたあげく、病気で死ぬなんておかしい。そんなの間違ってる。


 ……気持ち悪いな。

 これじゃ偽善者もいいところだ。

 勝手に同情して無責任に助ける。

 次に助けられる保証も覚悟もないのに。


 最後まで責任をとる気もないのに。

 何やってんだろうな俺は……


 そんな自己嫌悪を抱きながら盗賊達の待つ場所へとたどり着いた。

 そこでは意識を取り戻したのか倒れていた盗賊達は未だ倒れている数名を残して皆一様に顎や腹をさすっている。


「買ってきた」


「――ッ!? こんなに早く!? いや、その、助かった……礼は」


「今はそんなこといいから早くアジトとやらに行ってその薬飲ませるのが先だろ? 間に合わなかったらどうすんのさ」


「あ、あぁ、そうだな……その、こっちだ」


 男に案内され森の中を進んでいく。

 にしてもこいつら凄いな。


 意識を失ってたから俺とこの男が何を話していたのかなんて知らないだろうに一言も不満を漏らしていない。男からある程度の説明はあったのかもしれないがそれでも凄い。


 この男の人徳なのだろうか?


 そんなことを考えながら俺は盗賊団レブルのアジトへと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ