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創設の放旅者 ‐‐ 復讐 ‐‐  作者: 滝翔
序章 悉無律の正義
9/21

父と母の国9 理解し合えない世界で


港に浮かぶ数隻ある船の中に特に大きい一隻 そこから小船が数隻海を進み船着き場に停める

ハルラがその場に着く頃には全員が船から降りて待ち構えていた


「ハルラ……」


「………ベルネット様」


ハルラの目に前には銃を構える兵士達 そして側近と共にベルネットがいる


「ハルラ…… どうして!? 奴隷が好きなんだよね!!?」


「…………俺は」



「ハルラ・ラウール・カーディオ王 並びに国王の行いに賛同した国の民衆共 ファミリアフォードット領界内の規律を犯した者達と判断し 

我等ファミリアフォードットは一国の傾廃が大国に影響を齎す先の未来を恐れ 早急な措置を実行させていただきました」


側近の言葉にハルラは敵対の顔を向ける


「ハルラ…… 前に言ったよね?

大国に背いた動きを取る国がどうなったか…… なのになんで?」


「ベルネット様…… あなたは今のこの世界のシステムが本当に正しいと思いますか?」


「………何を言ってるんだい? 目を覚ましてくれよ!!!」


ハルラは嘆く顔を見せるベルネットを理解出来なかった


「今のこの国は…… 世界は腐っている お前にはそれが見えないのか!?」


「奴隷は便利だ!! 奴隷達を使えば無駄な労力を費やすことも無い そうこの前も語り合ったじゃないか……!!」


「合わせてたんだ…… お前に… お前等に… 悪かったと思う」


ベルネットは流れ落ちる涙を辺りに撒き散らしながら取り乱す


「嘘だ…… 嘘だ嘘だ!!」


「ベルネット様! 落ち着いて下さい!!」


側近が抑えるもベルネットが側近を突き飛ばす


「嘘だ…… そんなの…… 絶対!」


「……………」


「だって僕達…… 〝友達〟だよね!?」


「ベルネット様………」


「やっと出来た友達なのに…… 陰でそんなこと思ってたなんて……」


ベルネットはその場で泣き崩れる

そして次の瞬間立ち上がりぐしゃぐしゃとなった顔でハルラに銃を構える


「謝ってハルラ!! 今ならまだ戻れる!! 謝って許されるのが友達だって僕は思うよ!!」


「お前と俺は見てきた世界が違い過ぎたんだ それは俺達に教えた先駆者の種類による大きな違いが生んだ固定観念

大人の圧力で縛られたお前と大人の緩和によって鎖から解かれた俺とは明らかに環境が違う……… だから俺達は解り合えないんだろうな」


辺りが静まり返る中ハルラの横を銃弾が横切る 硝煙と共にベルネットが口を開く


「そんなの関係無いよ!! 互いに解り合えるから…… 解り合おうとするから友達なんだよ!!

僕はハルラを良い奴だと思った 愚痴を聞いてくれて 国に心から温かく迎え入れてくれて!!

結婚式にも呼んでくれて…… 手を取り合って…… これからも… これからも!!

一緒に隣で…… 肩なんかも組んでさ 一緒に珍しい奴隷を見て笑い合ってさ……」


「っ……………!」


「他の奴等とは違う!! 君は僕を対等に見てくれた!!!

能天使だかなんだか知らないけど…… 皆僕を崇めるだけで友達とは思っていなかった 隣で一緒に歩いてくれる奴が欲しかった!!

使用人でも無く 側近でも無く 汚らわしい奴隷共じゃなくて…… ちゃんとした友人をさ!!!」


「………………」


ーー引いてはいけない…… ベルネットはあくまで自分の常識内で物を言ってるんだ 多分それを教えたのは……




ハルラは静かに剣を構える


「どうして…… そうなっちゃうのさ……」


「とりあえず俺は 国の敵を倒す!!」


「僕達を…… 敵としか思ってないの?」


「すまないな…… 俺には俺の思想があるんだ」


ベルネットは後ろによろけながら後退りし 銃を地面に落としその場に蹲った

そんな状態のベルネットの前には先ほど突き飛ばされた側近が出てくる


「あなたは頭のキレるお方だと思っておりましたがそれ以前に人としての常識をも欠けておるようですな」


「あぁすまない…… 今になって言うがお前等の考えはイカれてるよ」


「不思議ですな…… 国は全焼寸前…… あなたも立っていられるのがやっと…… 

それなのにあなたはまだこの先に未来があるって顔をしておられる」


側近が手を上げ 兵士達はいつでも撃つ準備は出来ていた


「慈悲をかけるわけではありませんが あなたは〝あの〟ベルネット様が唯一友人だと認めた方

そのお方がどうしてあなたをそこまで思いやったのか私も少し興味があります あなたの思想を教えてはくれませんか?」


側近の質問にハルラはこの状況で弱り切った笑顔で答えた


「俺は支配者では無く 放旅者ほうりょしゃになりたかった ただそれだけだ……」



「………!!? なぜそれをお前が知っている!!」



側近と後ろにいたベルネットも驚く 周りの兵士達は何なのか知らない


「………どこまで知っている!?」


「遥か昔 このユレイシア海の島々はまだこんなにも離れ離れでは無かった時代

その中心にはある一つの国が栄えていた その国は今はもう無い

だがその国の名前には二つの意味と共にその意味を背負って存在していた」


「…………」


「その国の名は……… 【リタリア】 そしてその国と共に歩んできた〝 騎士団 〟の名は……」


「撃て!!」


惨いと見て思われるかの銃声が鳴り止まない

その銃弾一つ一つがハルラに向けて飛ばされ ハルラの身体は蜂の巣へと化す


再び側近が手を上げると銃声が鳴り止む

兵士達の前には何も出来ずにただ倒れゆくハルラがいた


「ハルラ…… ハルラ……」


「っ………」


「まだ意識があるんだね?」


倒れるハルラに近づいたのはベルネットだった


「まだ間に合う…… だから さぁ!! ほら!!! ごめんなさいの一言だよ!!」


次の瞬間 ベルネットの身体を一本の剣が貫く

いや 正確に言えばベルネットの腕と胴体の隙間を貫いていた


「ハ……… ルラ??」


「…………スゴジテモ……」


「え?」


「少し…… 少しでも… 友人だと思ったなら……… 目の前で…… 殺されるのを 黙って見てるな……」


「………」


「ただ…… 一つだけ…… ベルネット様……」


「何だい!? 今なら僕もゆる………」


「世界は お前のものだ」


「ハルラ!? え! え!? それはわかってくれたってことだよね!! そうだよね!!?」


ハルラは哀しい気持ちを押し殺しベルネットの肩を掴みながら最後の踏ん張りで立ち上がる



「何故…… 立っていられる!?」



何十発も喰らったハルラが立ち上がる様子をその場の誰もが驚いた


「あなたはまさか…… ルシファ…………」


兵士の一人がそう呟いた途端 その兵士を側近は撃ち殺す



「そうやって…… お前達はお前達の都合の良いように邪魔者を消してきたんだな……」


「う……… うるさい!!」


「無くならねぇ…… 無くならねぇさ…… 人一人がちゃんと生きてたって歴史を……」


ハルラは血を吐きながら叫ぶ


「俺達の為にこの世界で築いてきた放旅者達を!! 簡単に死なせていいわけねぇだろ……!!!」


「っ…………」


「俺は受け継いだ……!! ハァ… ハァ…… ある人の想いを…… そしてそれは俺だけじゃない……

彼は死んでも尚…… 後世に伝えるように本を書き続けたんだから……」


「貴様…… 何を言って……!!?」





「忘れられた 忘れてはいけない思想家〝 ジェームズ・マッドハウス 〟の願いは届く…… 必ずな!!」





側近はハルラに対し何も言えなかった

反論をするべきとは思わないとか そういうのでは無い 無意識にも見えない力に圧倒された

ただ口を開いた側近が言い放ったものは


「貴様は…… 何なんだ?」


その怯えた発言にハルラはただ優しく微笑み 目を瞑る

どこかから聞こえる赤子の泣き声を拾い 自信満々に口から言い放った



「俺は今日から父親だ」



今までのが嘘だったかのように当たり前のようにハルラの身体が地面に倒れる

その顔は喜びと悲しみと どこか悔しさを混ぜ合わせたような その場にいた全員は何とも言えない 言い表せられなかった












振り向いてよ



あなたの顔が怖いみたい



おめでとう ラウル



おめでとう ナット











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