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モンストル  作者: 髪槍夜昼
虚言と渇望の吸血鬼
14/136

第十四夜


決着がついた。


白木の杭は確かにルーセットの身を貫いた。


杭が肉を貫く感触をその手に感じながら、モールは勝利を確信する。


コレは本物だ。


今度はデコイではない、紛れもないルーセット自身。


「ゴホッ…」


心臓を貫かれたルーセットの口から血が零れる。


巨人に変化していた腕も戻り、力なく垂れる。


最早、お互いに血に濡れていない場所など存在しない。


自分の血と返り血に塗れ、赤く染まった両者。


「これで終わりか? ルーセット」


腹の傷から血を流しながら、モールはつまらなそうに言った。


楽しい時間が終わってしまった子供のように、寂しげにルーセットを見る。


肩から血を流し、腹に空いた風穴からは今にも臓器が零れ落ちそう。


呼吸も荒く、意識も僅かに混濁している。


ここまで追い詰められたのは初めての経験だった。


これほど自分の死を感じる戦いは初めてだった。


それ故に終わってしまったことは、悲しい。


「…モール、こんな話は、知っているか?」


感傷に浸るモールの耳に、力のない声が届く。


「イクリプスの、影響力が、強ければ強い程、その吸血鬼は、再生に回す魔力を失う」


「………」


病人の戯言のような言葉に、モールは素直に耳を傾ける。


影響力の強いイクリプスとは、モールの『インペイルメント』のことだろうか。


影の続く限り、無尽蔵に杭を出現させ続ける能力。


自分自身にしか作用しないルーセットの能力と比べれば、その差は歴然だ。


「つまり」


傷口から垂れていたルーセットの血が止まった。


メキメキ、と異様な音を発てて力なく垂れていたルーセットの腕の傷が再生する。


死体同然だったルーセットの身体がみるみるうちに元に戻っていく。


「逆に言えば、弱い能力を持つ吸血鬼ほど、再生力に特化しているんだよ!」


モールは驚愕に目を見開く。


今まで多くの吸血鬼を殺してきた故に、その驚愕は大きかった。


吸血鬼の急所である心臓をこれほど早く再生できる者など、今まで見たことがなかった。


「心臓を串刺しにされる感触。君も味わってみろ!」


全身を高速で再生させながら、ルーセットは叫んだ。


その声に我に返り、モールは突き刺していた杭を引き抜く。


例えどれだけ再生しようと関係ない。


いくら再生が速くとも、モールのすることは変わらない。


「面白い! 死ぬまで串刺しにしてやる!」


モールは手から突き出していた杭を消し、影を足下に広げる。


影より立ち上るのは無限の杭。


それによって延々と串刺しにすれば、やがてルーセットは死に絶えるだろう。


「インペイルメント!」


モールの叫び声に合わせ、影より杭が立ち上る。


主の敵を串刺しにするべく、杭は獲物に狙いを定める。


次の瞬間、モールの身体は無数の杭に貫かれた。


「………な、に…?」


宙吊りとなったモールは呻くように呟く。


出現した杭は何故か呼び出したモールの身体を貫いた。


手も足も胴も全て串刺しにされた状態で、モールはルーセットを見た。


「君は知らなかったようだが、俺は生物以外にも変身できる。そして、血は俺の分身だ」


薄く笑いながらルーセットは足下に目を落とした。


今までの戦闘で床一面に付着した自身の血を。


モールを貫く杭は、影ではなくその血から出現していた。


「まさか…この…奇襲の為に、わざと…杭を…」


「心臓を貫かれる経験は初めてだったが、それくらいはベットしないと君には勝てないからな」


すっかり再生した自分の胸を撫でながら、ルーセットは言う。


「ともあれ。俺の勝ちだ、モール」


意識を失ったモールを前に、ルーセットは勝利宣言をしたのだった。

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