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番外編 嘘発見アプリ 後編

「「「…」」」


あの調子で様々な質問を繰り返した俺たちの間にはどんよりとした空気が流れていた。


「え、なに、この空気」


「何って新田が変な質問ばっかするからでしょ」


「はい、新田さんがとんでもない変態だということが分かりました」


「おい、『新田さんは粗チンですか?』とかいう質問してたのはどこの誰だよ。柏木も俺の黒歴史掘り返すような質問ばっかしてきやがって」


「「「…」」」


この一年で築いてきた俺たちの信頼関係にヒビが入ろうとしている。どうにかしてもとに戻さなければ。


「あのさ、実はこのアプリ、今までやってたのとは別にもう一つモードがあってさ」


柏木がスマホを手に取り、俺たちにその画面を見せつける。


『会話モード』と画面には表示されているが。


「もうよせよ。また同じような空気になる予感しかしない」


「とりあえず、芽依さんの説明を聞いてからにしませんか?」


まぁ、それもそうか。


鹿苑の提案に乗り、俺は柏木の説明を聞いてから判断することにした。


「さっきのは決まったお題に対して本当のことを答えるモードだったんだけど、今度のこれは会話中の全ての内容に対して、嘘か本当かの判定がされるの。このモードだと出題者と回答者が決められることはなくて、誰かが嘘をついたときだけブザーがなる仕組みよ」


「だそうだ。鹿苑はどう思う?」


「私は余計に悪化するだけなような気がします。ターン制であの体たらくだったのに、それが無制限に質問をし合えるとなれば余計にヒートアップする可能性があるかと」


「やっぱそう思うか」


「とりあえず一回やってみましょ!一回だけ!本音で話し合えばきっと仲だって今まで以上に深まるはずよ!」


「芽依さんがそういうなら…」


なんだかんだで承諾する鹿苑。


ここ最近特に思うが、鹿苑が柏木に対して甘くなってきてるような気がする。柏木が俺を攻撃してくるとき、いつも鹿苑も乗っかってくるしな。たまには俺の味方もして欲しい。


「新田は?やる、やらない?」


「俺は嫌だけどな。でも、どうせ多数決でやることになるんだろ?」


「はい、決まりね!」


やっぱり鹿苑の承諾が取れた段階で実行するのは決定してたらしい。


「よし、これでOKね」


柏木がスマホから手を離し、テーブルに置くと、画面には『会話モード動作中!』と表示されている。


「これもう始まってんのか?」


「いいえ、まだよ」


ブブー!


『嘘発見!』の文字がスマホに映し出された。


「なるほど。こんな感じか」


今さら思ったことだが、このアプリ、嘘をつき続ければ何の問題もなくないか?二人には嘘をついてることはバレるが、それ以外のペナルティがあるわけでもなさそうだし。


「あ、そうだ。今さらなんだけど、連続で嘘つき続けると、その場合も電流流れるわよ。それにこのモードだと嘘の規定回数があって、嘘がその回数を超えると

バラされたくない秘密が画面に映し出されるから注意しなさい。今回は10回に設定したはずよ」


「でも俺が体を洗う場所を誤魔化した時は連続で嘘ついたけど、電流なんか流れなかったぞ」


「あー、多分あれはあと一回嘘ついてたら電流だったと思うわよ」


こいつ絶対に後でシバく。


「「「…」」」


そして無言になる俺たち。


「おい!誰か何か話せよ!」


「だって話したら嘘つくことになるかもじゃない!」


「馬鹿か、お前は!このまま話さなかったらこの新しいモードを始めた意味がないだろ」


「フフっ」


鹿苑は争う俺たちを見て笑う。


「鹿苑、俺たちが喧嘩してるの見ていつも笑ってるよな。そんなに面白いか?」


「はい、お猿さん見てるみたいで面白いです」


「「…」」


鹿苑の発言をうけて黙る俺と柏木。


え、なんでブザー鳴らないの。あれ冗談じゃないの。


「あーちゃん?今なんて?」


「お猿さんを見てるみたいで面白いって言いました」


このお嬢様は微笑みながら何を言ってるんだろう。ここに猿なんてどこにもいないはずなのだが。


「そうか。よし、いい機会だ。この調子で嘘偽りなく本音で話し合おうじゃないか」


「はい、望むところです」


「ええ、いいわよ」


仲を深めるために始めたはずなのに、なぜか俺たちは開始早々バチバチに視線を交わしていた。


「まずは、そうだな。この部活で不満があるやつはいるか」


「そりゃあ、少しはあるわよ」


「まぁ、私もそれなりに」


「そうかそうか。じゃあ二人にその不満が何かを聞こう。まずは鹿苑から聞かせてもらおうか」


鹿苑はコクりと頷き、口を開いた。


「はい。私の不満は新田さんが最近だらしないことです」


ブザーは鳴らない。


「というと?」


「まず遅刻が当たり前」


ギクッ。


「それに依頼が来ても依頼人の話の途中で居眠り」


ギクッ。


「挙句の果てには依頼を私たち二人に丸投げ。『こんな依頼に俺の出る幕はない』とか言ってましたよね?」


「はい、仰る通りです」


「部長として、それはどうなんですか?」


「いや、はい。良くないことだと思います」


「ブザーが鳴りませんね。一応自覚はしていたわけですか。直しますか?直しませんか?」


「直します」


ブブー!


このスマホ叩き割ってやろうかな。


「もう一度聞きます。直しますか?直しませんか?」


ドゴン!


木製のテーブルに鹿苑の拳が打ち付けられ、ヒビが入った。


「直します…」


ブザーは鳴らない。

こんなものを見せつけられたら当然だろう。


「はい、よろしい。私からは以上です」


「じゃ、じゃあ次は私ね」


鹿苑の重圧に若干顔を引き攣った柏木が喋り出す。


「私からは一つ」


柏木の表情が未だかつてないほどに神妙な面持ちへと変わる。


空気が先ほどまでとは打って変わり、鹿苑の圧による緊張とはまた別の緊張感が俺たちの間に張り詰めた。


「新田がただひたすらにずっとキモいということよ」


は?


「おい、なんでブザーが鳴らないんだ」


「私は入部当初からずっと思っていたのだけれど、最近はよりキモさに磨きがかかってきたとも思うの」


「だからなんで鳴らないんだよ」


「今日は特にキモかったわ。ラブコメの見過ぎで思考回路に何らかの障害が出ているのか知らないけれど、普通にあんなに堂々の女子の体のサイズを聞くかしら。自分のイタイ質問が面白いとか思ってそうなところが更にキモいわ」


もう仲なんて深まるわけないので帰っていいですか。なんで俺だけこんなズタボロに言われなきゃならないの。


「え、なに。そんな俺ってお前らから嫌われてるの。あのさ、嫌いだったら嫌いって言ってくれていいからね。なんかその、ここで変に慰められると泣いちゃいそうだから。それに、お前らの慰めの言葉にブザーが鳴った日には俺、ここから飛び降りちゃうかもだからさ。正直に嫌いかどうかだけ教えて」


「別に嫌いではないですよ?」


鹿苑の言葉にブザーは鳴らない。


「べ、私も別に嫌いじゃないわよ?普通、みたいな…」


ブブー!


柏木の言葉にブザーが鳴った。


あぁ、もう飛び降りよう。


「ちょっと新田!フェンスによじ登るのはやめなさい!」


「うるせー!柏木は俺のこと嫌いなんだろ!ならお前のために死んでやる!だから止めるな!」


「死ねとは言ってないじゃない!それに本当に嫌いではないから!」


「そんな慰めはいらないって言ってんだろ!こんな惨めな思いするならもう俺は生きるのをやめる!」


ってあれ?

柏木の嫌いじゃないという言葉にブザーが鳴ってないぞ。


「おい、なんで今お前の嫌いじゃないってのにブザーが鳴らなかったんだ」


「いや、だから言ったじゃない。本当にって」


待て。それだとおかしいぞ。


「いや、だってさっきはブザー鳴ったよな?なら今回も鳴らないとおかしい」


「いえ、よく考えてください。ブザーが鳴った時に芽依さんは嫌いじゃないという言葉に加えて、『普通、みたいな』という発言もしました。後者に嘘があったということでは?」


「なるほどな。お前もう一回普通って答えてみろ。俺のことどう思ってる?」


「だ、だから、普通よ。普通」


ブブー!


「「あっ」」


「もう別にいいじゃない!新田のこと嫌いではないっていうのは証明できたでしょ!」


柏木は顔を赤ながら弁明をする。


「でも嫌いでもなくて、普通でもないってどういうことだ?鹿苑は分かるか?」


「それは…、芽依さんの口から聞いた方が良いかと」


俺は馬鹿じゃない。嫌いでもなくて普通でもない。ならもう答えは一つしかないと思うのだが。


「なぁ、柏木。お前ひょっとして」


「なによ。でも新田は私に恋愛感情ないんでしょ。そんなの相手に言っても無駄だから言わない」


今にも涙目で泣き出しそうな柏木を前に俺は言葉を紡ぐ。


「い、いや多分今はもうある」


ブザーは鳴らない。 


「え、なんで?」


「いやだって、お前も俺に対してそういうのはないと思ってたからさ。でも今のやりとり聞いちゃうとやっぱ意識するというか」


「嘘…」


「なぁ、聞いてもいいか」


「う、うん」


「お前、俺のことが好きなの?」


「え、えぇ」


マジか…。


いやでも今まで柏木のことそういう目線で見たことなかったし。てかコイツこんな可愛かったっけ。よくよく見るとめっちゃ髪綺麗だし、目も大きくてまつ毛も長い。俺より一回りも二回りも小柄な背丈も何故か愛おしく思えちゃうし、泣きそうなコイツみてると抱きしめたくなるんだけど。


「あのさ俺、もしかしたらお前のこと好きになっちゃったかも…」


「え、本当に言ってる?新田も私のこと好きなの?」


「う、うん。きっと好きなんだと思う…」


ブザーは鳴らない。


「フフっ。二人ともおめでとうございます。私、ずっと二人を見てて焦ったいなって思ってました」


「鹿苑…」


「ね、新田」


「な、なんだよ」


「キス、していい…?」


「は?お前何言ってたんだ、鹿苑だっているんだぞ」


キスとかコイツは何言ってるんだ。お互い好き同士だって分かったからって急すぎるだろ。やばい、心臓が張り裂けそうだ。


柏木は俺の首に手を回し、目を閉じて顔を近づけてくる。その瞬間、俺は手で柏木の唇を遮った。


「ちょ、ちょっと待て!これ夢じゃないんだよな?」


「現実に決まってるじゃない!いいから早くキスさせなさい!」


ブブー!


「「「え?」」」


俺と柏木の唇が触れそうになった刹那、スマホからブザーが鳴った。



「ねぇ、聞いてよ」


「なんだ?なぜか今日はお前と話したくはない気分なんだ」


「奇遇ね。私もよ。けど今朝見た最悪の夢について話さないとこの気持ち悪さが消化できそうにないのよ」


「実は俺も夢にお前が出てきてな。全く最悪な夢だった」


「私も変な夢を見ました。別に私は気分悪くはないんですがね」


「全く同じ夢見てたりしてな」


「嫌よ、気持ち悪い!」


この様子だと、夢の中で俺と柏木が好き同士でキスしかけたなんて言ったらリンチにかけられそうだ。俺からこの話をするのはやめておくか。


「話変わるんだけどさ」


「ん?なんだ?」


「新田は身体洗う時、どこから洗う?」


なんでまた夢を思い出させるような質問を。まぁ、いい。この世界にはあの悪魔のようなアプリはないからな。


「そうだなぁ。腕からだな」



ブブー!



「「「え?」」」




これからも高援部の日常(?)は続く。

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