五日目
たぶん朝。
うん、やっぱり朝だ。
夢はなんと見なかった。もう寝られるチャンスは数回しかないだろうに、そのうち一回を不意にしてしまうとは。
もう書くこともないな。
クソくだらないこんな村に生まれなかったら、俺は一体どうなってたかでも、考えるか?
いや、不毛だな。不毛だ。不毛な考えしか浮かばない。
もし逃げるのがバレていなかったら。
もし村がまともだったら。
もし俺の祝福が人を殺さないものだったら。
不毛だが、考えてしまう。
俺に何ができたというのだろうか。
俺は何か間違ったことをしたか?
ああ、死にたくない。
死にたくないったらないったらない。
ガハハ
何がガハハじゃ笑えんわ。
最悪くそゴミなお知らせだ。
なんでだよクソ。
頭硬いルール順守マンだらけで一回決めたことは変えないんじゃなかったのかよ。
明日のはずだった、俺の、処刑が、今日になりやがった。
鞭野郎は昼食と一緒にそれだけ俺に伝えた。
ふざけんな。
死にたくねぇよ。
そんなに怖いか、俺が。
俺が怖くて怖くてたまらないから、予定を早めるかよ。
ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
どうにかして、殺せばいいんじゃねぇか。
処刑される時。
どうにかして、みんな殺してやる。
皆殺しにしてやる。
そうすれば、逃げられるだろ。
俺はお前らと違って、人を好んで殺したくはないがな。
お前らがそうくるなら、正当防衛だ。
みんな殺して逃げて、牛に祈ろう。
こんな村からおさらばするんだ。
ふっ、俺の祝福はくそでしかないし、それのせいで死にそうなんだが、その祝福を使えば生き延びられるかもしれない、か。
神とかいうやつはどういうつもりで俺にこんなもん渡したか知らんがな。俺はもう自由に使ってやるよ。俺のために。
となればこの飯も食って、昼寝でもして、英気を養うか。
おいお前、これ読んでるそこのお前、鞭野郎も細心の注意を払うだろうし、皆殺しなんて無理だって思ってんだろ。
いや、俺ならできるさ。
やってやる。
とりあえず飯食う。
寝られねーよ。死ぬかもしれねーというかあと少しで処刑されるってのに、寝られるわけないわ。
いや俺は死なんがな。
くそ今何時だよ。
鞭野郎が来た。
もう、処刑の時間か。
じゃあ、行ってくるわ。
皆殺し
追っ手は来てないな。
あ〜血だらけだよおい。
体に新しい穴が空いちゃってるなぁ。
まさか村に銃なんてあるとはな。
俺の命もあと少しだ。
最後にここ、俺の家にも来れたし、死ぬまでさっき起こった、やってやったことでも書くか。
あぁ、死にたくねぇよ。ほんとに。
俺は覚醒したんだ。
覚醒って何かって?
いや俺にもよーわからんけど覚醒は覚醒なんだよ、うん。
俺は初め、どうしようもなかった。
断頭台の上まで、為す術もなく上げられた。
みんな俺から10mは距離を取っていた。
俺は死にたくなかった。まあ今もだが。
とにかく死にたくなかった。
そして、殺してやりたかった。
こいつらを。
村のヤツら。
恵まれた祝福を受け、何食わぬ顔で平気に暮らしてるやつら。
これから人が死ぬのに、自分には関係ないという顔をしてる奴ら。
俺の顔を見ながら、あくびをするやつ。
笑うやつ。
祈るやつ。
悲しんだふりをしてる奴。
これが正義とでも言いたげな顔を浮かべてる偽善者共!
全員、殺したかった。
俺より恵まれてる奴ら、俺を殺す奴ら。
憎くて憎くてたまらない。
俺の中で、何かがはじけた。
気づけば俺は、喚いていた。
訳の分からない言葉を、叫び、泣き、笑った。
そして、怒った。
心の底から、この村の人間を皆殺しにしたいと願った。
神とかいうやつのおかげなのか知らないが、俺の祝福は、覚醒した。
次の瞬間、たくさんの人間が、死んでいた。
そう、俺の祝福によって。
初めて、祝福に感謝したよ。
鞭野郎も死に、自由になった俺は、殺しまくった。
わざわざ俺の処刑を見に来た奴らを、次から次に、殺していった。女も子供も、老人もいた。
関係なかった。俺にとっては全員敵だった。殺すのは、思ったより爽快だった。俺が近づいていくだけで、人がばたばた倒れていく。
俺は返り血で濡れることもなく、たくさんたくさん殺すことができた。
気持ち悪い感覚とかなかったから良かったのかもな。刺したりするのとは感覚が違うからな。
俺の祝福は強くなり続けた。人が死ぬ範囲がだんだん広くなっていっているようだった。
俺はある程度殺すと、ジョンを見つけた。
村長に恩があったのに、村長を殺しやがった、あのジョンだ。
ジョンは、違う俺は味方だ、などと訳の分からんことを言って命乞いをしていたが、殺した。
一番憎いやつを殺してやった俺は、もう逃げようと思った。
村の中には遠距離から攻撃できる祝福を持ったやつも少なくない。
そいつらにやられたら終わりだ。
何が起こってるかみんなが分かってないうちに、逃げるべきだと思った。
それに、やっぱりもう殺すべきではないとも思った。慈悲深い俺は皆殺しにする必要はないと、そう思ってしまった。
白状すると、殺しの爽快さはすぐになくなり、吐き気を催してきていた。俺は、人をたくさん殺してずっといい気分でいられるほど図太い人間じゃなかったらしい。
背を向け走り出した俺は、背中に熱い衝撃を受け、悶え苦しむことになった。
今も、痛くてたまらない。
死にたくねぇよ。
死にたくない。
なんで銃なんて持ってやがんだよ。
クソが。
こんなことなら、皆殺しにしとけば良かったんだ。
結局優しいやつは損をするんだ。
くそがよ。
その後も何度か銃声がしたが、どれも外れてくれた。
それでやっと、ここまで逃げてこられたわけだ。
誰か、俺の腹にあるこの弾丸を取り除いてくれよ。
村に俺を治療してくれるやつなんて、いねーよな、ハハ。
ルルディに助けを求めに行っても良かったんだけどな。
花畑から家はだいぶ遠くにあるようだったし、ルルディが治療できる訳でもなし、外に逃げる意味は無いと思ってしまった。
というか、最期は、ルルディと会うより、この、村長との思い出の家で死にたかった。
村は最悪だが、この家は違う。
俺を救ってくれた。
俺を育ててくれた。
俺を愛してくれた。
村長、俺ももうすぐ死ぬよ。怖いけど、もし死後の世界とかいうのがあるなら、あんたに会えるな。
いや、まだ諦めるべきでは無いかもしれない。
神だ。
神と契約するんだ。
先祖ができたなら、俺にできない道理はないだろ。
契約して、生きるんだ。
村長はきっと、神について詳しく知ってるはずだ。
村長の書斎に行こう。
なんでだよ。
神、いねーのかよ。
俺のこの呪いのような能力は、ただ運が悪かっただけかよ?
そして村長、
あんただけは、信じてたのに。
俺は、あんたも憎みながら、死なないといけないのか?
あんたの道具だっただなんて。
復讐のために、俺を利用していたなんて。
せめて、憎ませろよ。完全に。
なんだよ、愛着が湧いてるだの。
愛しているだの。
そんなこと言って結局、自分の復讐優先するんだからよぉ。
なんにもなかったな、俺の人生。
村のみんなを皆殺しにする訳でもなく、潔く処刑される訳でもなく、村の外に逃げる訳でもない。
道具として使われて、中途半端に殺して、最期は利用された人間との思い出の地にて果てる、か。
この落書きだけが救いだ。
少なくとも、これを残せる。
村のやつに見つかって、燃やされるかもしれない。
それでもいい。
一瞬だけでもいい。残せるんだ。俺の思いを。俺の物語を。
死ぬ間際まで、その思いを連ねたものを。
世に天才小説家はたくさんいるかもしれないが、死ぬ間際まで物語を書いていた少年は俺だけだろ。
意識が、遠くなってきた。
本当に死ぬらしい。
死にたく、ねぇなぁ。
誰かに、本気で、愛して欲しかったなぁ。
誰かを、本気で、愛したかったなぁ。
どっちも中途半端に終わっちまった。
死にたくない。
ただ、俺の一番好きな、文字を書くということを、最期までできた。
落書きレベルだが、俺の物語を、今際の際まで書けた。
それは本当によ
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