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第67話

洗濯物を外に干してリビングに戻ると空と健太くんが仲良くテレビを見ていた。

先程の私同様、健太くんを膝の上にのせている空はさすがというべきか。幼い男の子ですら短時間で空に懐いてしまう。


大人しく空の膝でテレビを見ている健太くんだが、よくよく観察すると右手で空のズボンを握っている。

「どこにもいくな」の意味だろう。

テレビに夢中の健太くんを気遣いながらそろりそろりと空に近づき横に座る。

幼児向けの番組を見てきゃっきゃと楽しそうにはしゃぐ健太くんを見ると、なんだか自分の子共が欲しくなる。


それにしても、と空の横顔を盗み見る。

なんだかんだ、空はきっと良い父親になれるだろう。今だってこうして健太くんの頭をポンポンと撫でながら付き合っているのだ。


「何?」


どうやら空を見すぎたようで、視線に気づいた空がこっちを向く。


「いや、なんか、空って良い父親になれそうだな、と」

「そう?優も良い母親になれそうだよ」


それはないな、と内心即答する。

子どもの反抗期はとても面倒そうだ。あと、毎朝お弁当を作るのも億劫だ。

子どもは小さい頃が一番可愛い。男の子だと特に可愛い。女の子はある時期になるとマセガキになるので、あまり好きじゃない。親戚にもマセた女の子がいるのだが、扱いにくい上に関わりたくない。それでも他の目がある以上、遊びやら何やらに付き合ってあげなければいけない。産むとしたら男の子がいいな。


「優って結婚願望あるの?」


不意に空が聞いてきた。

結婚なんてまだ先の話なのだが...。


その質問に答えるならば結婚願望は、取り合えずある。

ただ、こんな私を受け入れてくれる男性がいるかどうか。空はもちろん受け入れてくれるのだろうが、なんだろう、空意外に妥当な男性がいない。

私の狭いコミュニティでは難しい。

そして結婚式だが、正直やりたくない。金はかかるし時間はかかるし、面倒くさそうだし無理。あと結婚したとき色々書類とか書くのも面倒だし。

そう考えると結婚は別にしなくてもいいかな、と思ってくる。

しかし、結婚したいかしたくないかの二択だったら前者なのだ。


「結婚願望がないわけじゃないけど。空はあるの?」

「相手次第かな。結婚したいって言われたらするけど、したくないなら別にいい」

「へえ、意外」

「結婚なんてただの紙切れの問題でしょ。一緒に住んで、まあ子どもがいたりして、普通に過ごせるなら結婚しようがしまいが変わらないじゃん」

「ウエディングドレスとか見たくないの?」

「見たい。でも普通にドレス買って着てもらえばいいだけで、結婚自体に拘りはないかな。あぁ、でも、どちらかというと結婚して縛っておきたいとは思うけどね。まあ、結局は相手次第なんだけど」


なんとも空らしい回答だった。

空にとって結婚はただの紙切れに名前を書くか書かないかの問題らしい。

そして結婚とは、縛りを多少強くするものという認識のようだ。

大した事じゃない、と軽く言う空は結婚願望が強い感じではない。


「でもさ、そうなると浮気される可能性だってあるよね。結婚してないんだから、浮気くらい多めに見てよ。とか言う女もいそう」


これはあくまで一般論だ。

結婚してないとなると法的措置はとれない。と思う。

私はまだ学生だし法律とか結婚のことを分かっているわけじゃない。

結婚をしたのに浮気に走るとなると、その後離婚、そして慰謝料やら養育費等の問題が生じてくる。

しかし結婚してないとなると、慰謝料をふんだくるなんて無理ではないか。「浮気くらい、いいじゃない!」と言う女が沸くことは容易に想像できる。

あくまで想像の話だ。法律なんて深く知っているわけじゃないんだから。


すると、空は声のトーンを少し下げ、言った。


「結婚してようがしてなかろうが、浮気する奴はするんだよ。もし浮気なんてしようものなら、そのときは殺すよ」


健太くんの頭を撫でながら、光のない目で薄く笑う。

ゾッとした。こいつは、絶対やる。


「ち、ちなみに、どっちを...?」


自分でも危ない質問だと思ったが聞かずにはいられない。

空は口角だけを上げ、笑みを深めた。

目が笑えてない。


「さあ、どっちだろうね」


片方か、或いは両方か。

目の前に幼い子どもがいるというのに、危ない顔と発言をする空。

「ふうん」と冷静を装って空から視線を外したが、額や背中に冷や汗が浮かんだ。



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