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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第60話

何故、二年生の階に瀬戸先輩がいるんだ。


「この方が、さっき先生が言っていた瀬戸先輩?初めまして、娘がお世話になっております」


何も知らない母は瀬戸先輩に挨拶をする。

先輩に世話された覚えはないのでそんな挨拶は不要だ。


「じゃあ、わたしはこれで帰るけど、優は?」

「私も…」


帰る、と言う前に先輩が言葉を発した。


「藤田さん、ちょっとお話いい?」


お話のお誘いを受けてしまった。

二年生の階に来た理由は私と話をするためだったらしい。

ここで引いたら後が面倒かなと判断し、その誘いに乗った。

母は私を置いて帰っていった。


「ここで話をするよりも、空き教室がいいよね。誰もいないところで話しましょう」


どこで話をしようが別に問題はない。

私は空き教室に向かう先輩の後について行った。


ガラッと音をたてて教室に入る。

あの日内海先輩が入ってきた空き教室だ。

なんだか懐かしく感じる。そういえば内海先輩はどうしているだろう。瀬戸先輩はよく見かけるが内海先輩は見かけないな。


「話って何ですか、先輩」


なるべく早く帰りたい。


「....あんた、結構不愛想ね。表情が変わらない」

「お互い様じゃないですかね」


いやお互い様じゃないか。私の方は不愛想だったとしても先輩の方はしかめっ面。

可愛い顔はしているのに、性格のせいで少し残念に見える。


「それで、話というのは?」


自分では結構チキンだと思っていたのだが、最近はよく人に物を言えるようになってきた。

これもいろんな女のお陰だと思うと無駄に屍を越えてこなかったのだと実感する。


「率直に聞くけど、蒼井と付き合ってないの?」

「空が付き合ってないって言ったんなら、そうだと思います」

「何それ、結局どっちなの!」

「自分でもよく分かりません」


付き合ってと言われたことがなければ、好きだと言われたこともない。

しかし私たちの関係はどこからどう見ても恋人にしか見えないだろう。

キスをしたことがない、その先に進んだこともない。精々手を繋いだことがあるくらいだ。

それにしては、お互い恋人を作らないのが暗黙の決まりである。

空が何人かと付き合ったことがあるが、そこに恋愛感情はなかった上に付き合う理由すべてが私であった。


「はぁ!?付き合ってるか付き合ってないかを聞いてるのよ」

「付き合ってと言われた覚えはありませんね」

「じゃあ付き合ってないじゃない!」


この先輩はいつ笑うんだ。

ずっと怒ってばっかりで疲れないのか。

目を吊り上げて眉間にしわを寄せている先輩。

私はよく周りに話しかけにくいだとか言われるけど、瀬戸先輩には負ける。

私は怒った顔をしていないので、その点ではまだ話しかけやすいのでは。


「あんた、蒼井のこと好きなの?」

「はい?好きですよ」


好きじゃなかったら四六時中一緒にいない。小さい頃から一緒にいるんだし、多少嫌なことがあっても今更だ。例え空のことが嫌いになって縁を切っても、家は近所だし母親は仲が良いし完全に絶つことができない。嫌いになろうが関係が切れるわけじゃないし、好きだろうが嫌いだろうが私と空は離れられない。

そう考えると空を嫌いじゃなくてよかったと思う。

もしも空が私を嫌いになったら部屋中に貼ってある私の写真に釘を打ち、女を唆して私に奇襲でもかけそう。怖い。


「恋愛感情はあるわけ?」


何だろう、ちょっと上から目線だ。

仁王立ちをして空への恋愛感情を調べる先輩。


「先輩は空が好きなんですね」

「好きよ」


こうも堂々と言うなんて、驚いた。

私の勘は正しかった。

あれ、でも。


「確か内海先輩も空のことが好きだったんじゃ...?」


まさかこの先輩、すべて計算なのか。

内海先輩を応援し、振られると思って背中を押した。案の定振られると「どういうことよ」と空に詰め寄り自分の存在をアピール。つまり、内海先輩を餌にしたのか。そうであれば空に負けないクズさとゲスさ。

私の想像していたことが分かったのか、慌てて訂正する。


「違うわよ!あたしだってそんな性格悪くないわ!茜が蒼井に告白したときは別にあいつのことなんて好きじゃなかったし!」

「あ、そうなんですね」

「そうよ!茜を覚えてないことが分かって、腹が立って、好きになったのはそのときよ!!」


えっ、言いたい放題言った中で恋愛感情が芽生えたってことなの。

人を好きになる瞬間なんてそれぞれで、瀬戸先輩がいつ、どんなことがきっかけで空を好きになろうが自由だ。人に好意を持つ瞬間を自分でコントロールできるわけじゃないのだから。

瀬戸先輩は、あれだけ好き勝手言った後も、怒らず話を聞いてくれるなんて蒼井優しい、とそんな感じで惚れたのだ。と推測する。


「そうなんですね」

「そうよ!!別に茜を裏切ったとかそういうのじゃない!」


まあ、どうでもいいですけど。


「それより、あんた付き合ってないのに幼馴染ってだけで隣にいるよね」

「そうですね」


世の幼馴染の皆さんは四六時中一緒にいたりしないと思う。

異性の幼馴染ならば、この年齢になると会う機会も少なくなり一緒に帰ったり毎日部屋に通ったりなんてしないはずだ。私と空が少数派だと思う。


「じゃあ、蒼井をあたしに譲って」

「えっ…」

「いらないなら、頂戴よ」


予想外の言葉に、口が開く。


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