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先生の愚痴。感じるバブみ

男は蒸発した。


母だけが残った。


母は私を殴った。


知らない男が家に上がるようになった。


こんどは二人に殴られるようになった。




「あーっと、それでー? お前は舞香の事情知ってるんだっけか?」

担任の浅田がどう話を切り出したものか……、といった様子で訪ねてきた。




 舞香が平手で叩いたあの後、舞香は逃げる様にどこかへ消えていった。

というかみんなが呆気にとられている中でだれも止める事が出来なかった。

 私は――舞香になんと声をかけてよいのか分からなかった。

 平手の衝撃で黒沢が机に頭をぶつけ、頭を少し切って出血。

その後駆け付けた先生の判断で病院に運ばれたが大きな怪我ではないそうだ。

 



「知ってるよ。一応。舞香から聞いてる」


「よかったそれなら話は早い……。んで、たぶん黒沢は知らないんだよな。あぁーどうしたもんかなーー」

そう言って浅田先生は荒く頭をかきむしりながら頭を抱え込む。


担任が生徒の前で頭を抱えている状況。それだけ今回は難しい話なのだろう。


その後、机に突っ伏した。


「なーぁ。愚痴るよ? 先生寂しい独身のオッサンだからさ。愚痴る相手いねーんだよ。だからさ、少し聞いてくれよ」


だいぶ追い込まれているらしい、普段のキャラとは違ったものになっている……。



「施設のさ。子どもってさ。確かに最初受け持った時えっ、ってなったよ? んでもさ。実際接してみると悪い奴らなんて一人もいねーんだよ。長い事この学校で教師やってるけどさ。その辺の奴らよりよっぽどいい奴らなんだよ。そりゃ勉強が出来なかったり、コミュ障だったり、空気読めなかったり、素直じゃなかったりするけどさ、それでもいいじゃん。個性みたいなもんなんだよ」


教師としての言葉じゃなく、個人的な。ただの感情の発露なのだろう。



「それなのになー。親と暮らしてない! 普通じゃない! って虐めたり、仲間はずれだったり。毎回何か起こるんだよ。今年の。お前らの代こそはうまくやろうって、そう思ってたんだけどな。ダメだった」



「ごめんな。頼りない。ダメなセンコーで」

その感情に、生徒を思う気持ちに、嘘はない。はっきりとわかる。



「はい。そうですね。生徒の前でそんな事言っちゃうなんて――ダメダメですね。でもいい先生です」


「先生だけじゃなく、私も。悪かったと思う。思い……ます。舞香の事情を知っていたのに。一緒に居たのに止められなかったし……。舞香は……、黒沢も……二人とも悪い奴じゃない……から」

なんだろう。なんといっていいのか。無力さを感じる。


大きな仕組みの中で、きっとちっぽけな私が抗ってもさざ波一つ立てられなくて

先生という大人でもどうにもならない事はあって

世界はこんなにも理不尽で。


涙が溢れそうになる。


「おまえさ。高校生の癖になんか包容力あるな……」


「いや先生……。なんかキモいから……」


「……。すみませんした……」

おかげで滲んでいた涙も引っ込んだ。


苦笑いだけれど、少しだけ笑顔になれた。




久しぶり……の投稿……。

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