表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の仇し草  作者: 夢乃
第1章 魔王領編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/67

020 魔人との戦闘

「何で人間がここにいるのかな?」

 そう言った小柄な魔人は、ニヤニヤしながら満遍なく4人に視線を送っている。

「人……間?」

 受付嬢の2人がソウガという魔人の男の言葉に固まっている。それに気付いた彼は、受付嬢たちを振り返った。

「ああ、こっちはこっちでやっとくから、キミたちは仕事に戻っていいよ」

 受付嬢たちにヒラヒラと手を振ると、受付嬢たちは目を見交わして、座っていた方は通常業務へ戻り、もう1人はドアから出て行った。


「さて、キミたちだ。4人とも人間? 話では2人ってことだったんだけど」

 レイトたちに向き直ったソウガは、もう一度1人ずつサッと4人を見ると、レテールとレイトを順に指差した。

「キミとキミが人間だね」

 魔人は、人間に比べると肌の色がやや黒い。ディアブルやディーゼほどの肌黒さの人間もいれば、レイトやレテールほどの白い肌の魔人もいるので、肌の色だけの区別は絶対ではない。しかし、対象が4人しかいないのなら、肌の色での区別はそう外れないだろう。事実、ソウガは見事に当てて見せた。


「人間だったら、何かあるのか?」

 レテールが慎重に言った。

 ソウガは腕を組み、ニヤニヤと笑みを浮かべながらレイトとレテールを見た。

「おれはソウガ。南の四天王としてここに入る人間を排除するよう、魔王より命令されている。だからねぇ、キミたちを排除する必要があるんだよ」

「魔王はもういないのに、それはおかしいだろう」

 ソウガに異論を唱えたのはディアブルだ。しかしソウガはディアブルにチラリと目をやっただけで、言葉を続けた。


「……って言うのは建前でね、魔王の命を取りに人間どもが来た時にさ、初めてまともに戦ったんだよね。それでさ、目覚めちゃったわけよ」

「目覚めたって……戦いの、快感?」

「んー、ま、そんなとこかな」

 疑問を零したディーゼに視線を向けて、ソウガは言った。


「ここまでやって来た人間どもと戦って、斬って、殺して、それが楽しくなっちゃったわけよ。いや、相手が死ぬのはどうでもいいんだ。おれは戦っている最中が楽しいわけだから。結果として相手が死んじゃうことはあるけど、むしろ、死なずに戦い続けてくれた方がおれとしては嬉しいわけよ。

 でさ、魔王が死んで人間たちが引き上げた後も、魔人を相手に戦ってたわけよ。でも、おれより強い奴ってそうそういないわけ。本気出すとすぐ死んじゃうからさ。つまんないんだよ。魔人を殺すとノルンに怒られるし。なのにアイツ、相手もしてくれないし。まあ、ノルンは魔術専門だから戦ってもあんまり面白くはないんだけど。後の2人の四天王は人間にやられて死んじゃったし。

 そんなわけでさ、おれは今、遠慮無しに戦える強者に飢えているわけよ。それが人間ってことになったら、なおいい。魔人を殺すなとは釘を刺されてるけど、人間については言われてないからね。手違いで死んじゃっても怒られないし。

 でさ、アンタ、強いでしょ? おれと戦ってくれない? いや、戦え」


 ソウガは熱に浮かされたように長々と喋り、そしてビシッと右手でレテールを指差した。

「戦ったとして、こちらにどんな利があるんだ? だいたい、私はあんたが嫌っている魔術士だ。戦ったとて、楽しくないんじゃないか?」

 面倒ごとを避けたいレテールは、いかにも面倒だ、という風情を隠さずに、むしろ表に出して言った。

「相手をしてくれなければ、問答無用でここで首を刈る」

 ディアブルとレイトが緊迫レベルを一段階上げ、武器に手を掛けた。一拍遅れて、ディーゼも追随する。が、ソウガも本気でそこまでする気はないようだ。


「……って言いたいとこだけど、それやったらそっちの魔人も怒りそうだし、そしたらノルンも怒るだろうしなぁ。そうだなぁ、人間がわざわざ魔人化する危険を犯してまで、まだ瘴気の濃いこんなとこまで来たんでしょ? それってこの魔王城で何か探したい物があるんだよね? なら、おれとの戦闘に応じてくれたら、魔王城の中を自由に見ていいよ」

「あんたにその権限があるののか?」

「平気平気。おれだって四天王だからさ、おれが言えば問題ないよ」

「さっきも言ったが、私は魔術士だ。それでもいいのか?」

「魔術士ったって、剣の覚えもあるよね? 動きを見れば判るよ」

 ソウガが来てからは大きな動きをしていないが、そこまで見てとったらしい。しばらく考えたレテールは、やがてゆっくりと頷いた。


「いいだろう。魔王城での行動の自由、忘れるな」

「よしっ。じゃあ行こう。……あ、ノルンが来たら闘技場にいるって言っといてよ。どうせ判るんだろうけどさ」

 ソウガは受付嬢を振り返って言った。

「畏まりました」

 受付嬢は座ったまま、慇懃に頭を下げた。


「じゃ、着いて来てよ」

 ソウガは4人を促してドアに向かった。その後に3人に目配せしたレテールが続き、レイトたちも武器から手を離して付き従う。


 受付のある入口のホールだけでなく、奥に入っても魔王城は材質の判らない白い壁や床でできていた。天井が照明になっているのも変わらない。

 ソウガに着いて抜けたドアの先は、左右に伸びた廊下だ。右手に向かったソウガの後を、4人は追う。途中で廊下を折れ、長い階段を登り始めた。

 前を行くソウガは、左右の腰に剣を佩いている。ディーゼと同じく、双剣を武器にするらしい。使う剣はディーゼの物よりもやや大振りだ。


「姉様、勝てるの?」

 レイトがそっとレテールに囁いた。レイトの見立てでは、“魔術士”のレテールより、ソウガは一歩上を行っているように感じられた。

「全力を出せば、負けることはないだろう」

「……“全力”?」

 レイトは自分の背負っている長剣を意識した。

「そうだ」

 頷くレテールに、レイトはソウガに対する自分の見立てが妥当であると確信する。

「気を付けてよ。あいつ、手加減しなさそうだし」

「本気で当たれば大丈夫だろう」

 断言はしてくれないんだね、と思いつつ、レイトはその思いを呑み込んだ。


 長い階段をやっと登り切り、廊下を少し歩いて開けたドアに、ソウガは4人を招き入れた。

 そこは円形の広い部屋だった。直径は3テナー(約30メートル)はあるだろうか。天井まではざっと50テール(約5メートル)ほど。

 ここに来る前にソウガは『闘技場』と言っていたから、それを目的とした部屋だろう。部屋の大きさから、ほとんど塔の1フロア全面を使い切っていると思われる。いや、天井の高さを考えると、2フロアは使っているだろう。


「さあて、やろうか」

 ソウガは部屋の中央で両腰の鞘から剣を抜き、バランスを確かめるように振っている。

 レテールは部屋の端で荷物を下ろし、マントを脱いでレイトに渡した。それと交換するように、レイトは背中の剣を下ろしてレテールに差し出す。レテールは、鞘は受け取らずに剣だけを引き抜いた。


「姉様、気を付けて」

「レテール、負けないでねっ」

「無理はするなよ」

「ああ。大丈夫だ」

 3人の声援に応えて、レテールはソウガの待つ部屋の中央へと歩いて行く。


「レテールって、剣も使うの?」

 レテールを見送りながら、ディーゼがレイトに聞いた。

「……姉様の本職は、剣士、だよ」

「そうなの? ……え? ディアブルは知ってたの? 驚いてないけど」

「剣を使えるとは思っていた。身のこなしが魔術士というより剣士寄りだったからな」


 レイトたちが場外で話している間に、レテールは50テールほど離れてソウガと相対した。右手にはレイトから受け取った長剣を構え、左手にはワンドを逆手に握っている。

 対するソウガは両手に剣を持っている。

「魔術士なのに剣でいいの?」

 唇の端を歪めつつ、揶揄うようにソウガが問う。

「剣を持った相手の方があんたの好みなんだろう?」

「おれに合わせてくれるって? じゃ、遠慮なく行くよっ」


 ソウガは床を蹴り、レテールとの距離を一気に詰めた。両手の剣が振り下ろされる。

 レテールは剣とワンドで攻撃を受け、そこから右膝をソウガの胸に向けて蹴り上げる。ソウガも素早く反応し、レテールの攻撃に自分の膝を合わせてぶつけ、その反動で距離を取る。

 間髪を入れず、レテールはソウガに向かって突進、剣を振り下ろす。ソウガは左手の剣で攻撃を受け、右手で反撃を試みるも、すでにレテールの次の攻撃が迫り、それを受けるに止まる。さらにレテールの連続攻撃。ソウガは防戦に集中する。


「レテールって剣もあんなに使えるんだ。レイトより強いんじゃない?」

「それはそうだよ。ボクの剣の師匠は姉様だから」

 ディーゼとレイトが部屋の中央での攻防を見ながら会話している。

「そっか。このままいけば、勝てそうだね」

「ううん、ソウガはまだ全力までは出してないと思う」

 レイトはディーゼに答えつつ、ディアブルにちらっと横目で見た。ディアブルは小さく頷いて、レイトに応える。


 以前レイトは、ディアブルの槍術はレテールの剣術よりも優っていると感じたが、ソウガの双剣術はディアブルも超えているように、彼には見えた。今はレテールが押している展開だが、それはソウガがまだ暖機運転中だからだろう。


「じゃあ、レテールの方が不利ってこと?」

「そんなことはないよ。姉様も、まだ全力じゃないから」

 レテールが全力を出せば、ディアブルを圧倒する、とレイトは見ている。ディアブルがレテールの上を取れるのは、あくまでもレテールが剣のみを使った場合だ。それもレイトの推測でしかないのだが。


「なら、レテールは勝てる?」

「そこまでは判らない。どっちの強さも拮抗しているから、どっちが勝ってもおかしくない」

「結局判らないのね」

「……うん。でも多分、姉様が勝つよ」

「どうして?」

「姉様、場を支配してるから」

「?? どういうこと?」

「見てれば判るよ」


 ディーゼは口を噤み、剣を交えているレテールとソウガに集中した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ