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第十三話 『プリズムバースト』


「とゆーわけでっ!今日からチームに加わります!藤咲伊奈ですっ!」


 瑠華とのささやかなすれ違いを解消した2日後、放課後の教室で、金髪の少女が高らかに自己紹介する。

 ぺこりとお辞儀をするその少女の名は名乗りの通り、藤咲伊奈である。

 彼女が頭を下げた先には、椅子に座る3人の少女が。


 ぱちぱちと拍手の音が響く。その音の主は、伊奈の真正面に座る白髪の少女__白金瑠華だ。満面の笑みで、小さく「わー」などと言っている。

 

 遅れてもうひとつ、ふたつと拍手の音が増える。瑠華の両隣からである。

 

 左には、緑色の髪の少女__緋水彩は、無表情で瑠華を一瞥した後、伊奈の方に視線を向けた。

 右には、薄水色の髪の少女__天音怜使は、どこかぎこちない笑顔で伊奈の方をまっすぐ見つめている。


 3人の拍手を受け、伊奈はゆっくりと頭を上げる。そして眼前の少女たちを見回すと、小さな八重歯を光らせて笑ったのだった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 一昨日、伊奈と瑠華の2人の魔法少女は偶然にも邂逅を果たした。

 そしてその翌日、伊奈が瑠華たちの教室に訪ねてきたことで瑠華と彩がチームを組んでいることを知り、加入を志願したという流れである。



『__うん、大丈夫。一緒に頑張ろうね』



『わかった。これからよろしく』



 瑠華と彩も快く加入を認めてくれたし、怜使としても心強い限りである。


 そんなわけで、現在怜使たちは4人で住宅街を練り歩き、魔獣の出現に備えている。

 見回りの最中でも、伊奈は鼻歌を歌ってどこか楽しそうである。


「そういえば、2人の固有魔法ってどんなの?」


 不意に伊奈がそう尋ねる。


「え、えっと、私は、『超強化』……みたいな?」


 彩に先んじて、瑠華がぎこちなくもそう答えた。

 

 『超強化』とは以前、瑠華、彩、怜使の3人で固有魔法について話した際、固有魔法が不明ながら強化魔法に秀でた瑠華に、便宜上与えられた仮の名称である。怜使がぽろっと推定で呟いたものがそのまま採用された形だが、まさか本当にそれで通すとは。言ってる本人も目が泳いでるし。



「『超強化』……なんか、パワー!って感じだねっ!じゃあ、あややは?」



 感想が雑だ。まあ、その通りではあるのだが。

 

 ……待て。『あやや』って誰だ。まさか彩のことか。

 伊奈の視線を追うと、予想通りばっちり彩のことを見つめている。当の彩は無表情で虚空を見ているが。


 ………。

 ……………。

 …………………………。



「……………え」



 数秒の沈黙の後、彩が小さく口を開く。『わたしのこと?』と言わんばかりである。

 どうやら『あやや』=自分だと分かっていなかったらしい。なんというか、案の定である。


「彩ちゃんは『創生魔法』。魔力を使って、いろんなものを作れるの」


「……でも、構造がわからないと作れない」


 言いながら、手のひらを上に向ける。その瞬間光を帯びて、そこから黒い警棒のようなものが出てきた。


「怜使、これ」


「えっ、あっ、ありがとう……」


 彩が警棒のようなものを差し出す。恐る恐る受け取ってよく見てみると、柄にはボタンのようなものがついている。


「……な、なにこれ?」


「スタンバトン」


「スタンバトン!?」


 構造がわからないと作れないと言っていなかったか。スタンバトンなんて絶対に複雑な構造だと思うのだが。一瞬でなんてものを作ってるんだ。

 ともかく、護身用に持っておけということだろうが、そんなもの持ってていいのだろうか。帰ったら調べておこう。

それはそうと、怜使の名前覚えていたのか。少し意外だ。




「__っ!」


 突然、瑠華と伊奈が弾かれたように同じ方向を見た。

 これだけ一緒にいればなんとなくわかる。__魔獣があらわれたようだ。


 瑠華たちが顔を見合わせ、一斉に走り出した。向かう先は住宅街のはずれ、小山の方である。

 走れば走るほど瑠華たちと怜使の距離が離れていく。怜使の体力が無さすぎるのもあるが、それにしたって3人が速すぎる。もしかして、これも魔法少女パワーなのだろうか。



 1分ほど走った辺りで、小山の麓に到着した。


 大きな影が見える。熊のぬいぐるみのような、魔獣の影だ。付近には人がいる気配も、いた形跡もない。まだ誰も襲われていないようだ。


 音もなく瑠華が跳躍する。いつの間にか変身を済ませていた彼女は身の丈程もある大剣を構え、魔獣に飛びかかった。


 身を翻し、大剣を振りかぶる。

 跳躍と回転、両方の勢いを乗せて、刃を魔獣の胴体に向け振り抜く。


 ズバッ、と音を立てて、魔獣の体が腰から上下2つに裂ける。風さえ断つようなひと薙ぎ、あれを受けてはひとたまりも___


「__っ!?」


 瑠華の表情が驚きに染まる。

 上下に分かれた魔獣の体、その断面の辺りが、まるで糸のようにほつれている。糸はぬいぐるみのような体の断面、その縫い目に入り込み、瞬く間に双方を縫い合わせてしまった。

 魔獣は振り向いて瑠華を見ると、ばっ、と両腕を広げた。そのまま着地したばかりの瑠華に向かって駆け出し、その剛腕で少女の細い体を抱き潰さんとする。

 魔獣の腕に捕まるその直前、瑠華は再び跳躍し、魔獣の攻撃を回避。宙を舞いながらもう一度剣を構え、迎撃体勢を整えた。


 魔獣と瑠華の視線が、交差する。


 不意に、魔獣の足元に何かが飛来した。投げ込まれたように飛んできたそれは、ガシャンッ、と音を立て、瞬く間に魔獣の足元を()で埋め尽くす。


「__火炎瓶。糸なら、炎が効く」


 怜使のすぐそばで、彩が呟く。彼女も、すでに魔法少女の衣装に身を包んでいた。

 魔獣の体が炎に蝕まれていく。


 一瞬の出来事に驚く怜使の視界の端に、今度は虹色の光が眩く差し込んだ。


「2人とも、すごいっ!あたしも負けてられないっ!」


 声のした方を見ると、伊奈が魔獣に向けて杖を構えていた。杖の先は煌々と光を帯び、無数の星々がその周囲を舞っている。



「__『プリズムバースト』っ!!」



 詠唱とともに、光が杖から放たれた。


 音が消える。世界が白く染まる。

 強烈な光に視界を潰される寸前、炎にくるまる魔獣の体が虹の極光に覆い尽くされるのが見えた。


 白い世界が数秒続いた後、光の通った跡からは、魔獣の姿は跡形もなく消えていた。



「すごい……こんな威力の攻撃魔法、見たことないかも……」


 伊奈の魔法を見た瑠華が、驚いた顔で呟く。彩も無言ではあるが、普段は眠そうな目を大きく丸めている。

 改めて見ても、ものすごい迫力である。あと、『プリズムバースト』て。どんだけ魔法少女なんだ。怜使が小学生なら絶対に真似していた。


「あたしの固有魔法は、『魔力解放』。攻撃魔法を撃つ時に、体の中にある魔力を全部一気に消費できるの!」


 変身を解いた伊奈が、達成感に満ちた顔で話す。


 ……なるほど。よくわからん。

 魔法に疎いからか、伊奈の言っていることが微妙に理解できない。全部一気にって、マダンテみたいな話か?

 詳しい解説を求めて瑠華たちの方を見る。が、彼女らもどこかあまりピンと来ていない様子だった。


「えっ、なにその反応……?」


「いや、えっと、私、攻撃魔法使えないからよく分かんなくて……全部一気にっていうのは、その……?」


 伊奈が信じられないものを見るような顔で瑠華を見つめる。それを受け、気まずそうに目を逸らす白髪の少女。

 困惑に満ちた目で彩の方に視線を移すが、彩は無表情を崩さない。


「わたしも普段使わないし、よくわからない」


「えぇ……」


 伊奈の困惑がさらに深まる。攻撃魔法を使わないで戦うのって、そんなに変なことなのか。

 ゆっくりと、伊奈がどこか縋るような視線を怜使に向ける。いや私は魔法少女じゃないです。


 諦めたのか、それとも整理がついたのか。伊奈は正面に向き直り、んんっ、と咳払いをした後、人差し指を立てた。


「えっとね、強化魔法とかでも、一度に消費できる魔力って限界があるでしょ?あたしの固有魔法は、攻撃魔法のときだけその限界を無くしちゃえるってことっ」


「つまり、消費する魔力を無理やり増やせる……?」


 なるほど。全ての魔力を消費するというよりは、一度の魔法に魔力を好きなだけ使える、ということだろうか。融通の利くマダンテ、といったところか。


 なんというか、実に伊奈らしい魔法だなと、怜使は思ったのだった。


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