女の武器
「酷いのね。女にこんなことするなんて。
でも、こんなに激しくされたのは、貴男が初めてよ。」
何という女だ、あの投げに対しても、しっかりと受け身を
とった上に、この余裕。
しかも、地面の上で、体をくねらせて身をよじり、誘う。
並みの男なら、突進しているであろう。
魅鬼の瞳が、怪しく光り、移香斎の瞳を射た。
「痛いわ、ほら見て。胸がこんなに。」
『 かかった。』
魅鬼は、内心、してやったりと、、胸を覆っていた布の
片方だけを外した。
わざと、片方を残して、見せた片方を手で覆うところが憎い。
今の世で言う催眠術か、並みの男なら、理性がぶっ飛び、
本能のおもむくまま行動するであろう。
移香斎も男、心身の自由が奪われた。
視線をはずそうとしても、はずせない。
視線が釘付けになったまま、必死に耐えていた。
「何と、精神力の強い男、ならば、こうじゃ。」
魅鬼の瞳が、極限までに妖しく光り、移香斎の瞳を射抜いた。
「何い、鶴姫ではないか。」
移香斎は、驚愕した。
魅鬼の妖術は、己を相手の最愛の女に見せる
恐ろしい催眠効果があった。
催眠術を、馬鹿にしていけない。
タマネギ大嫌いの人間に、催眠術をかけて、
これはリンゴだと言い聞かせると、その人間は、見事に、
生のタマネギをリンゴのように丸かじりする。
周りの者が、それはタマネギだよって教えても、
美味しいリンゴだと言い張る。
実際、脳波を調べると、美味しいリンゴを食べて
満足している時の状態であることが科学的に証明されている。
今の移香斎には、魅鬼が最愛の鶴姫にしか見えなかった。
我慢できなくなり、ヨロヨロと近寄る。
「 ほれ、胸がこんなに。」
魅鬼が、そこで片手を外して、片方の美しい胸を見せた。
移香斎は、地面に片膝をつき、胸に顔を近づけた。
魅鬼は、勝利を確信した。
乳首には一口必殺の毒が塗っていたのである。
しかし、なぜか、移香斎の動きが止まった。
毒の匂いを本能で、感じ取っていたのであった。
「はよう、権兵衛様。」
魅鬼は、これでもかっていうくらいの、艶っぽい声で誘った。
移香斎の顔が、再び、近づいた。
ギャア~
悲鳴を上げたのは、魅鬼であった。
移香斎が、乳房に噛みついたのであった。
その瞬間、、魅鬼の妖術がとけて、移香斎は心身ともに
自由を取り戻した。
「なぜだ。私の術が効かないんて。」
流石に乳房に歯型がつくほど噛みつかれて、
魅鬼の表情は険しい。
逆に、ゾクッとする色気を感じる男もいるであろうが、
移香斎は涼しげに言い放った。
「私の名は、権兵衛ではない。
本物の鶴姫なら、私の名を知っておるわ。」
実は、魅鬼は受け身を取ったものの、殆ど体が
自由に動かせないダメージを負っていたのであった。
「負けたわ。さあ、好きにしていいわよ。」
最後まで色気で迫る魅鬼に移香斎は、冷たく言い放った。
「女を斬る刀は、持っておらん。」
「 まあ、お優しいこと。
でも、ここでやらないと、私はまたあなたの命を
狙いに行きますわよ。」
ここまで、脅しに色気がある女は、そうざらにおるまい。
「それは、困る。」
移香斎は、暫し考えた。
「 それでは、そんな気にならないように、体に言うことを
聞いてもらおうか。」
移香斎の手が、魅鬼の体に迫った。
『 死中に活あり。
まだまだ、女の武器はありますわ。』
毒蜘蛛のような笑みを浮かべる恐ろしい女であった。
ところがどっこい。
移香斎は、手を出すよりも恐ろしい術を使った。
魅鬼の気道に姦淫と快楽の気を送り込み、
七つのチャクラを刺激したから、たまらない。
魅鬼は体が異常に敏感になり、今まで感じたことのない
快楽の炎に身も心も飲み込まれ、登りつめてしまった。
一度登りつめても、快楽が快楽を呼び、簡単に官能の炎は消えない。
益々激しく燃え上がり、息も絶え絶えになり、幾たびも登りつめて、
とうとう失神してしまったのである。
移香斎の勝利であった。




