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大江山の鬼の魔手  作者: 真言☆☆☆
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3/6

鬼姫の魔力

「見たか。」

「はい、確かに。」

 巨大な魔鏡で移香斎と鬼夜叉の対決を見ていたのは、

闇に潜むこの者たちであった。

 この一味は、己が見ているものを思念で仲間に

伝えることができる魔力を持っていた。

 この巨大な魔鏡は、さらにそれを映像として映し出す

魔力を持っていたのである。

 鬼夜叉が敗れた今、普通の鏡に戻っていた。


「この男を殺せ、我らの名にかけても。」

「 はっ、それでは私が参ります。」

「 おまえか。この男、我らの視線を感じるとは、

 恐ろしき手練れ。心してかかれ。」

「はっ。」

 闇に潜む鬼の一匹が、移香斎抹殺に向けて動き出したのであった。


 

そんなある夜のこと、道場の奥の部屋で、移香斎が

ぐっすりと眠っていると、何やら天井に穴が開き、

そこから糸に吊るされた針がスルスルと降りてきた。

 それは、まるで生物のように寝ている移香斎の口元の上で、

ピタッと静止した。

「 どうせなら、酒にしてくれんか。」

 天井裏に潜んでいた者は、糸に毒を垂れ流そうとしていた

手をピタッと止めた。

『 只の寝言か、どっちだ。』

「そこの女、天井を傷つけるのは止めてくれ。

 居候の身、これでも気を遣っておるのじゃ。」

 流石、移香斎、曲者の気配に目覚め、直ちに戦闘態勢を

とっていたのであった。

 曲者は、脱兎の如く、逃げ出した。


『 何て奴だ。

  気配に気づいただけではなく、私を女と見抜いた。

  恐ろしい奴。』

 ここまで来たら大丈夫であろうと、後を振り返った。

 誰も、追ってこなかったので、安心した。

「遅かったな。待ちくたびれたぞ。」

 寝間着姿の移香斎が、先回りしていたのに、心底驚いた。

『 こやつ、化け物か。』

 曲者が驚くのも無理はない。

 移香斎の修行は、元々修験道を超える荒行であり、

明の国での軽身功の修行で、益々、韋駄天なみの脚力を

得ていたのであった。

「女を痛めつけるのは、やぶさかではない。

 素直に、雇い主を教えてくれんか。

 そして、おとなしく帰ってくれ。

 女の夜遊びは、危険じゃよ。」

 移香斎は、優しくお願いした。


「ふざけるな。誰が、喋るものか。仲間の仇をとらせてもらう。」

 背中に背負っていた、武器を取り出した。

 そして、おもむろに覆面をはぎとり、ゆっくりと焦らしながら

黒装束も脱ぎ捨てた。

 今の世のランジェリーとでも言えようか、肌の露出度が極端に高い

怪しい衣装を身に付けていた。

 一目で男を骨抜きにする妖しい魔力を持つ美女であったが、

惑わされる移香斎ではなかった。

 明の国のあの女に比べれば、所詮人の子であろう。


「南蛮鬼倒流 輪刃術 魅鬼、参る。」

 魅鬼が背負っていた武器は、外側に鋭い刃を持つ大きな

鉄製の輪であった。

 二か所だけ持ち手になっていたが、触れただけで

ザクッと斬られる恐怖を十分感じさせるものであった。

 

初めて見る武器にワクワクしながら、移香斎は、いつもの

八方目で、愛用の木剣「転」を隠剣に構えた。

ガシッ

 いきなり、右手で横殴りに鬼輪で、斬撃を加えてきた。

 女の身でありながら、腕の力は強かった。

 それだけでは、なかった。

 移香斎が、木剣で柔らかく受け流すと、体をくねらせ、

信じられない角度で、左足で後ろ廻し蹴りのような攻撃を

仕掛けてきた。

『何たる体の柔らかさ。しかも、攻撃の拍子が、読みにくい。』

 感心しながら、蹴りをかわした。

 木剣を使うのは、危険な気がしたのであった。

 足が蛇のように巻きついてくる気配を感じたからである。

 魅鬼の攻撃は止まらない。

 今度は、両手で握り、真っ向両断に斬り落としてきた。

 斬り落とし面打ちには、ちとやっかいである。

 柔らかく受け流して、面を打ちに行ったが、鬼輪で見事に防御された。

 攻防に優れた武器であった。

 攻防の極意は、円にあり。

 理にかなった武器であると、言えよう。


 一旦、間合いを大きくとった魅鬼は、鬼輪を

移香斎に投げつけて、突進してきた。

ビュン

 かろうじて鬼輪をかわしたが、鬼姫は両手を地面に着き、

前方倒立前転のような形で、両足で蹴りを頭に入れてきた。

 体の柔軟性を十分生かし、遠心力も加わった重い衝撃に

驚きながらも、両手で握った木剣で受け止めた。

 並みの剣士なら、頭をかち割られていたであろう。

 しかし、それは虚の攻撃であった。

 やはり、両足で、絡みついてきた。

 正面から、両足で首を激しく絞めにきた。

「もっと、絞めて下さい。」とせがむ性癖の者もおるであろうが、

移香斎は、それどころではなかった。

 後ろに飛び去ったはずの鬼輪が空中で弧を描き、

移香斎の背後に迫っていたのである。

 天空の眼、観の眼で鬼輪の軌道が観ていたものの、

身動きが取れない。

 もがけば、もがくほど、息が苦しい上に、魅鬼を

喜ばせることになる。


「快感。」

 鬼姫の魅鬼は、勝利を確信し、真っ赤な唇を長い舌でなめた。

「 やむをえん。」

 移香斎は、右手の人差し指に気を入れ、集中すると、

魅鬼の後ろの穴に突き立てた。

ズボッ

 鍛え上げた指先の意表をつく攻撃に、魅鬼は一瞬、力が抜けた。

 誰しも、そうなるであろう。


 移香斎は、木剣を捨てて、太ももを両手でつかみながら、

振り向きざまに、今の世のプロレス技のパワー・ボム、

飛んで来る鬼輪に魅鬼を叩きつけた。

ズガアン

 鬼輪ともに、魅鬼が地面にめり込んだが・・・・。





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