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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 7章:影の国
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諜報部との密談





「改めまして……ぼ……私は協会本部諜報員のモニカです。それで、こいつは……」

「カリマです。彼女と同じく協会本部諜報員です」

 そう答えたのは隠れていたもう一人――黒髪の青年だった。今二人はミラたちの前で並んで立っている。

「ミラ様にご協力頂きたくてお声をかけようと――」

「長い話はいいから」

 ミラはモニカの言葉を遮って急かす。モニカは一度深呼吸をしてから続けた。


「現在、私たちの上司である諜報部副部長が人身売買組織に操られているのです。それをどうにかして正気に戻し、本部へ連れ帰るようにと私たちは命じられています」

「しかし、その組織の裏にはアニムスが絡んでいるのです」

 カリマが補足するとミラの眉根が寄り険しい表情になる。

「私たちだけでは力不足だと判断し、本部に連絡を入れたのですが、本部も人手が足りず、部長が言ったのです。『ミラさんに手を借りろ』と」

「……部長って誰よ。私、今の部長知らないわよ」

「えっと……」

 モニカが言っていいのか、という確認をカリマに目でする。するとカリマはため息混じりに言った。

「言っていいでしょう。どうせ、隠すのは無理ですし」

「アルレ部長……なのですが……ご存知ありませんか?」

「いや、全く知らない。モリア知ってる?」

「あー、協会の優秀な若者筆頭のアルレかー。十代で諜報部部長になったっていう」

 その程度しか知らないのかモリアもそれ以上は言わない。この話題は打ち切ることにしてミラはモニカに先を促した。

「上司を連れ戻すためにどうかご協力いただけないでしょうか。私たちも微力ながら、ミラ様のお手伝いをする所存です」

「具体的には?」

「現在、囚われているカルラせんぱ――カルラさんとミラ様のお弟子さんの居場所を突き止めています」

 その言葉に真っ先に反応したのはユリアだった。

 今にも飛びかかって居場所を聞き出そうとしかねないユリアをルカとサラが必死に押さえる。

 ミラはあくまでも冷静にモニカに問いかけた。

「信じる価値はあるのかしら」

「協会諜報部が誇る信憑性です。どうか、お願いします」

 モニカが深く頭を下げるとカリマも頭を下げた。

 ミラは僅かに考えるそぶりを見せると意外にもあっさり頷いてみせた。

「いいわ。協力してあげる。代わりに、こっちにも協力しなさい」

「はい……! ありがとうございます!」

 モニカは安堵したようにお礼を言うと一瞬で表情を真剣なものへと切り替えた。

「さっそくなのですが……実はお弟子さんの一人……ケイト、でしたっけ? 彼が相当まずいことになってるようです」

 ユリアを押さえつけるのが限界なのかルカとサラは息絶え絶えだ。モリアがユリアをそっと押さえてなんとか持っているが。

「まずいこと?」

「三日後……明々後日の午前十時からこの町で開催される奴隷オークションの目玉としてフィアンマの少年の情報が裏社会で出回っているのです」

 ミラと、ユリアの動きが完全に止まる。

 モニカは険しい表情のまま続けた。

「場所は特定していますがカルラさんたちと比べてかなり厳重です。私たちの上司も操られてその場所を警備しているようなのです」

「どのみち、厄介なことに変わりはないってわけ……」

 悔しそうに歯を食い縛るミラとは対照的に、ユリアは震えていた。

「……ちが、う……? 私は、そうだ、私は――」

「ユリア!」

 サラがユリアを揺さぶるとどこか遠くを見ていたユリアの目はようやく焦点が合い、正気を取り戻す。

「えっと……あれ?」

「ユリア、大丈夫? 顔真っ青だけど」

 サラの心配は最もで、今にも死んでしまいそうなほど血色が悪い。

「で……ミラ様。ここでもひとつ問題が」

「何かしら」

「実は……今日は無理だとして明日も忍び込むのが困難かと」

 やや焦りが見えるも行動できないという悔しさがモニカにはにじんで見える。ミラは怪訝そうに眉をひそめると低い声で問いかけた。そしてユリアも目を見開いてモニカに問い詰める。

「なんで?」

「なんでですか邪魔をするのですかそんなこと許しませんよいますぐにでも」

 少しうるさいユリアを黙らせるためにミラは軽くげんこつを頭におみまいすると「うぎゅぅ……」と呟いてユリアは黙って俯いた。

「実は……その……」

「まあぶっちゃけた話をしますと彼女が潜入時にミスして顔が割れてるんですよね。僕も巻き添え食いました」

 カリマが横から口を挟むと一斉に視線がモニカに集中する。特にユリアの視線が恐ろしい。

「というか、明日動けるとしてもカルラさんともう一人の弟子しか救出できませんよ」

「ケイトがだめっていうの?」

「ケイトが囚われている建物にアニムスの幹部が二人いるみたいでして……。下手に動けないんですよね」

「アニムス、ねぇ……」

 モリアが顎に手を当てて思案する。アニムスに関しての知識はミラとモリアのほうが詳しいだろう。

「アニムスの幹部の特徴ってわかる?」

「はい? あー……一人は女で銀髪に金色の瞳でしたね。なんだか不機嫌丸出しで怖い感じです。もう一人は男で黒髪でしたね。こっちはくすんだ金目でしたが」

 カリマの情報にミラはモリアと向き合いお互いに首をかしげた。

 そんなやつ、いたっけ?とでも言いたげな二人。そしてミラはそういえば前に見たアニムスのやつらも知らない顔だったしメンバー入れ替わってるのかと心の中で納得した。

「とりあえず……ミラ様一行は宿とか決めてますか?」

「完全に野宿覚悟だったけど」

「私たちの宿に行きましょう。ミラ様の顔に関しては大丈夫です」

 モニカはそう言って顔をなんらかの方法で変えてみせる。現れた時と同じ、少年の顔に。

「変身ジュエルです。お使いください。ひとまず私とミラ様たちは宿に向かいます。お前、あとよろしく」

「わかってますよ。またドジ踏まないでください」

 カリマは毒を吐いてそのままミラたちの前から消えた。恐らく調査に向かっているのだろう。

「さて、ミラ様、変身は大丈夫で――」


 モニカが振り返るとなぜか肌がよく焼けた黒くてゴツイ男の姿が。


「……ミラ様」

「すごい見て! この胸筋!! 実はガタイのいい男に憧れててさー、一度試してみたかったんだよねー」

 見た目がガッシリとした男なのに言葉遣いは女性そのもの。

 なんだかすごく危ない人に見える。

「ミラさんかっこいいです!」

 ユリアはそんなミラをキラキラした目で見つめて羨ましそうに手をわたわたと振る。

「ミラさん……その、なぜその姿」

 サラは筋肉男に抵抗があるのかやや引き気味だ。

「え? 憧れない? たくましい筋肉! 私、ぱっと見筋肉あるように見えないからさー」

「魔法使いですしそこまでの肉体に憧れることは……」

 ルカはサラの言葉を聞いてわずかにほっとする。サラが「ガチムチのたくましい男の人が好き!」とか言いだしたら自分はどうしようかと真剣に悩んでいたようだ。

 シルヴィアは興味が薄いのかミラからそっと目を背ける。そんな弟子たちを見てモリアは「あらあら」と楽しそうに微笑んでいた。



――この人たちを宿まで案内するのやだなぁ……。



 モニカは心の底でしみじみと呟くが諦めてミラ一行を町の中へと導くのであった。








この世界は魔力で力を補ったり肉体強化ができるのでマッチョとかが少なかったり。なのでマッチョな人は努力家で希少価値のある一種のモテ要素でもあります。メインに絡んでくるのは細マッチョばっかりですね。

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