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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 5章:呪術師の道しるべ
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閑話:消えることのない闇




 何処かにあるであろう場所の薄暗い廊下。そこでは苛立ちを隠そうともしないクァイの姿と冷静なアグニの姿があった。

「嗚呼、忌々しい……まさかフィアンマの生き残りがよりにもよってあのケイト君だったなんて……」

「なんだ、知り合いだったのかァ?」

「知り合いではありません。向こうは私のことを覚えているはずがないので」

 どこか呆れたように嘆息する。その目は何かを懐かしむように細められる。

「ある意味、彼のおかげで今の私がいることですし。感謝、はしてませんが」

 複雑そうに顔を俯けると二人分の足音が聞こえたためかクァイは顔を上げアグニは面倒そうにため息をついた。

 向かいからやってきた二人組はまだ十代後半に見える少女と十代前半に見える少年だった。

 少女はいかにも不機嫌、といった顔で廊下を歩くその姿は可憐な容姿を台無しにしている。一方で少年は何にも興味が沸かないとでも言いたげな気怠さをかもしだしていた。

「随分とみっともないわね」

 嘲笑混じりに吐かれた愛らしい声は見た目比例して美少女の印象を与える。だが、醸し出す雰囲気や表情のせいで台無しになっていた。

「この脳筋ダルマが悪いのです。私のせいではありません。全く、爆発させるなんて――」

「そのことじゃないわよ。ミラに喧嘩売って負けて逃げてきたんでしょ?」

 このマヌケ、とでも言いたげな視線はクァイとアグニに注がれている。アグニは気に留めていないようだがクァイはぴくりと眉をよせた。

「偉そうなこと言って……貴方だってあんな化け物と真っ向勝負して勝てるはずもないのに」

「ええ、そうね。でも、負けて帰るくらいならミラを道連れにして死んでやるわ」

 この間、少年はアグニのほうを一度だけ見たがアグニはそれに対し首を振り、少年も一度頷いて彼らの応酬を見守っていた。

「私はエヴェン様に命令されたから帰還したまでです。腑抜け扱いされるのは心外です」

「でも、あんたのお得意の魔法は破られちゃったんでしょ? 勝ってからそういうこと言いなさいよモヤシ」

 二人が今にも口喧嘩から殺し合いに発展しそうといった瞬間にこれまで無言だった少年が動いた。

「やかましい」

 少年が一瞬のうちに二人の間に割って入り魔法を発動させた。すると、二人に強い電撃を浴びせ二人はその場に倒れこみ意識を失う。

「おいおい、あぶねーだろ。もっと普通に止めろって」

「俺は攻撃魔法しか使えないから」

「いちおー、嬢さんはお前の相棒だろ」

「……相棒っていうか、エヴェンさんに勝手に決められただけ。アグニと同じだよ」

 冷たく返すと倒れた少女には目もくれず去っていく少年にアグニは苦笑を漏らす。

 ――未だに、幹部の中でも何を考えてるのか一番わからない男だ。

「別に俺はモヤシと組むのは嫌じゃないけどなァ」

 聞こえるはずもない言葉を呟いて倒れたクァイを担ぎ上げる。

 全てはあの人、エヴェン様のために。






 全ては、あの人のために。

 あの人のためなら俺の命を使ってもいい。誰を殺しても悔いはない。

 アニムスはそのための土台だ。俺の目的を達成するための踏み台に過ぎない。

 エヴェンから借りたアグニたちが遭遇した集団の映像を見る。そこには心の底から憎いと感じる相手。

「お前だけは許さない……あの人のお気に入りのくせに……」

 そこに映し出されたまだ幼いあの英雄に似た魔法使いを睨みながら強く握った拳を更に握り締めた。





次回更新は番外編かでちょっと悩んでおります……。

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