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ミラージュオブフェイト  作者: 黄原凛斗
第一部 5章:呪術師の道しるべ
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閑話:二つの星

協会と監獄、二つの組織での出来事。




 この大陸には王や貴族、もしくは国の代表とすら並ぶ力を持つ者がいる。


 まずその筆頭が「協会」である。冒険者やクラン、更には民間の支援を行い医療や技術の向上、様々な研究や犯罪取締など多岐にわたる仕事をしている大型組織だ。支部がかなりの確率で町に存在しており、本部のあるアマデウスの首都には多くの協会員が所属している。

 今では国の長が集まる会議に出席するほどの権力と力を有しその勢いは衰えることを知らない。




 その会長こと協会最高責任者、ウェルス・ビレイサーは非常に苛立っていた。紺色の髪に銀髪の瞳、整った容姿は二十代前半ほどに見える。およそ千年近く前の協会設立時から全く老けていないその顔は今、不機嫌で染まっている。

「ミラを見失うだなんて……クソッ!」

「私がシャオリーちゃんのところから帰るのとちょうど入れ違いだなんて……最悪でしたね」

 悔しそうに唇を噛むのは協会幹部の一人、セレス・ディッセターレだ。典型的な金髪碧眼はまるで絵画の人物のように美しく浮世離れした独特の雰囲気をまとっている。そんな彼女はウェルスに申し訳なさそうに言う。

「ごめんなさい、ウェルス君……」

「こうなった以上仕方ないさ。それよりもこれからどうするか、だ……」

「やっぱりミラちゃんに直接交渉したほうが――」

「あいつがそんなの聞くようなやつじゃないのは知ってるだろ……」

 彼は思案し突っ伏する。彼にとって一番守りたくてそばにいて欲しいと願う『ミラ』のことを想いながら。

「あいつはまだ行方不明?」

「ええ。間違いなく、何かあったのでしょうね」

「……捜索に数人回すか」


 歯車が廻る音。それはまだ誰にも聞こえない。






 そして協会と双璧を成す協会よりも古い歴史を持つ残忍で冷酷な組織。其処は正義を名乗る地獄の入口。協会と同じくアマデウスに本部を構えており協会とのやり取りも盛んだ。

 どの国にも属さず罪人を罰し、治安を維持する犯罪取り締まりを主とする組織。それが監獄。

 その残虐性は目を背けたくなるほど恐ろしく、一般人は近づきすらしない。駄々をこねる子供に「そんなわがままばかりだと監獄に連れて行かれるぞ!」というのがある種の躾にすらなるほどだ。

 類似組織に牢獄が存在し職務はほぼ同じだが罪人に差がある。刑の重さ、そして『ルーチェであり罪を犯した者』など特殊な罪人が収容される。

 そして、その監獄官の八割ほどは狂っている。




「ふーん。まあ、下っ端程度でミラをどうにかできるとは思ってはなかったけどな」

「もーしわけありませんでしたー。というかそう思ってたなら任せないでくださいよー」

 軽い口調の監獄官はミラたちを尾行していた女で笑いながらどこかトゲのあるセリフをあろうことか監獄長にぶつける。

「俺だってー、クラウィス様が愛するミラさんをどうにかしたかったのは山々なんですけどー実力差ってものが」

「……エリュー。仕事に戻りなさい」

 生意気な口をきく彼女ことエリューに注意を促したのは監獄長補佐である副官のサヨ・カナデだ。濃い青色の髪は肩より先の長さで艶があり独特の雰囲気がある。彼女の黒い瞳は監獄の制服である黒い看守服と相性がよく妖しい魅力を醸し出していた。

「はーい。それでは失礼しまーす」

 最後まで軽い調子で獄長室から退室するエリューを見届けたあと、クラウィスはあくびをしながらソファで横になった。

「クラウィス様、どうなさいます?」

「とりあえず様子を見る」

「……よろしいのですか?」

「協会のやつらはこっちを出し抜こうとしてるだろうし横から掻っ攫えばいいさ」

 邪な笑みにサヨは冷たい瞳をたたえたまま頷く。

「そういえば、例の夢魔、どうだ?」

「夢魔族との交渉では彼女は特に言及されませんでした。このままでいいかと」

「まあ、夢魔とはいえあの色欲狂いの女はここに隔離しといておいたほうが平和のためだな」

 ミラに関する調書を手に取りクラウィスは薄く微笑む。

「どうしてか、ミラの周りにはろくでもないやつばかり集まるんだろうな」

 面白がるようなその声にサヨは何も言わない。彼女は無言で追加の調書をクラウィスに渡す。



 ――ケイト・フィアンマ。アウローラ国オルヴェンの町出身。フィアンマの生き残りであり、呪いに塗れた悪意の被害者。



 これだけでも十分ワケアリなのにも関わらずミラはその重大さに気づいていないのだろう。せいぜいフィアンマの生き残り程度だ。



 ――ルカ・ファルキ。マギア国辺境の村出身。かつての事件の被害者で生き残りであり、人殺し。そして何より、あの英雄と呼ばれた男、『魔導師カイル・ラバース』と瓜二つの容姿を持つ、運命に巻き込まれた哀れな子供。



 さぁて、ミラ。お前は耐えられるかな?




 二大勢力の標的である本人は今、何を思うのか――。







さて人数多くなる予感しかしない内容ですがどうかお許し下さい……人物紹介ページ作りますので……!

協会と監獄は重要な組織なので後々かなり深く関わります。自サイトでは協会と監獄で働く下っ端たちの番外がちょこっとだけ置いてあったり……

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