Epilogue
御守りを2つ並べるようにリュックへ付けた。
仲良く手を取るかのように揺れている。
ずっと一緒だからな……。
リュックを肩に掛け、俺は最後の目的地へと向かった。
通りゆく子供たちが元気な声ではしゃいでいる。
夏休みか……。
思い出したのは今日のように蒸し暑かったあの日。
祐希と食べた棒付きアイス。
どちらが早く食べきれるかを勝負した。急いで食べていたから、俺は最後の一口を地面へ落としてしまった。結果、祐希の勝ち。悔しがる俺に「蟻さんが喜んでるから、優しい律の勝ちだよ」って慰めてくれたな。
祐希はそうやっていつも優しさをくれた。
また笑顔が蘇る。
前よりもずっと鮮明に見える気がした。
祐希を"ちゃんと"知れたから。
不思議と足取りも軽かった。
真夏の墓参り。
盆前だから人はごく僅か。
俺は手桶に水を汲んでから祐希の墓へと向かった。
「あ……」
水を入れ終えた時、供える花を忘れていたことに気付いた。
大きな溜め息が溢れる。
やっぱり俺はダメだな。
呆れていると、墓前にしゃがみ込む人影が見えた。
「え、律くん……」
千歳くんは驚いた顔を見せたが、すぐに柔らかな表情へと変わった。
「"今回は"偶然だね」
笑顔が切なく見える。
「あれから毎日、祐希に会いにここへ来てるんだ。それに、もしかしたら君に会えるかもって」
少し痩せたように感じた。
「あの、すいません。連絡もせずに、俺……」
千歳くんはゆっくり首を振り、ふっと笑みを浮かべた。
「これからの事、少しは見えてきた?」
『ツナグ』は事実上辞めている。
あそこで働く事はもう無理な気がして。
だからといっていつまでも職無しじゃ、生活出来ないのも分かっている。
この先をしっかり歩むと決めた。
だからちゃんと考えなければならない。
「あれ? 御守り2つになってるね」
千歳くんはゆっくり立ち上がり、並ぶ御守りへと顔を近づけた。
「色褪せてるこっちは祐希のだね。片方は新しく買った、律くんのってとこかな?」
「あ、はい。さっき買ってきたんです」
「ふふ、祐希喜ぶよ」
「あの、この御守りなんですけど……」
俺は中に入っていた手作りの切符を、千歳くんに見せることにした。
「へぇ……知らなかったな。でも、すごく祐希らしいね」
「はい。俺もそう思います」
この時の俺は、子供の頃のように柔らかく微笑んだんだと思う。
千歳くんは嬉しそうに俺の頭を撫でた。
「僕はいつでもあそこに居るから」
そう言っていつものように手を振って去っていった。
その細い背中は、あの夜よりも確かに真っすぐ伸びていた。
なぁ、祐希。
俺……ここから始めるよ。
今度は過去を償う為じゃない。
君がくれた優しさを胸に、生きていく。
だからそこで
ちゃんと見ててよ。
『向日葵の檻ー死にたい俺が君を探し当てるまでー』を最後までお読み頂き、本当にありがとうございました。
この作品は私にとって何度も何度も推敲を重ね、大切に育ててきた物語です。
そして、完結まで描き切ることができた初めての作品でもあります。
まだまだ至らない点も多いですが、読んで下さった皆様の心に、ほんの少しでも何かを残せていたなら、これほど嬉しいことはありません。
最後まで見届けて下さり、本当にありがとうございました❀




