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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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07.街で見つけたもの


ピュアが話していた通り、ハルとマゼンタの結婚の噂はすぐに落ち着いたようだ。

権力って素晴らしい。


「もう大丈夫」と双子が太鼓判を押してくれたので、ハルは今日街にお出かけする事にした。

双子の他に、シアンとフレイムも護衛として一緒に付いてくれると言ってくれたが、国宝級美貌の戦士達の護衛には危険がある。


「もし女の子達が大騒ぎしそうになったら、すぐに遠くに離れてね」


ハルは今までの経験を活かして、戦士二人に念押ししておいたが、彼等との街歩きは誰も反応する事がなく平和だった。



おそらく、だが。

鋭い目で、通りの者達を射殺さんばかりに睨みつけながら歩く、二人の戦士達が原因ではないだろうか。

街の者は反応しないどころか、目を合わせようともしない。


『まるで善良な市民にガンを飛ばす、ならず者のようだ』とハルは思うが、気づかないフリをしておいた。

余計な事を言って、あんな怖い目を自分に向けられたくはない。





街の武器屋の前を通る時、ハルは二人の英雄達が興味深そうに店を見ている事に気づく。


「ここのお店に入ってみよう。お店の中の二階は本屋さんみたいだし、私はパールちゃんとピュアちゃんと本を見てるよ」


ハルはシアンとフレイムにそう声をかけて、お店の扉に手をかけた。





武器屋の奥の階段を上ったところが本屋だった。

「この建物の造りなら、見張りながら武器を見れるな」と、戦士達はハルとの別行動に頷いた。

確かに戦士達を越えて、二階の本屋に上がって来れるような者はいないだろう。


商売の邪魔をしてしまう代わりに、何がなんでも本を買わなくてはと、ハルは貸し切りの本屋をゆっくり回ってみた。



武器屋と繋がっているからだろうか。

国宝級美貌の戦士達の本が数多く置いている。

『英雄戦士コーナー』が店の半分を占めるくらいだ。



「わあ、みんなの本がたくさん置いてるね。これ見て。『英雄戦士達の活躍』だって。こっちは『英雄戦士の戦闘法』に『英雄戦士の半生記』だ。個人別の本もあるよ。みんな有名人なんだねぇ」


「ハル様も有名ですよ。ほら、『神に選ばれし者』シリーズの特別版に、『神に呼ばれし者〜黒戦士〜』がありますよ」

「こちらにも『黒戦士ハル〈特別付録付き〉』なんてありますよ。付録は神絵師による、ハル様のイラストみたいです。私、これ買います!」

「私も買いたいです!」


双子がなんだか怖い事を言い出した。


「止めときなよ、パールちゃん、ピュアちゃん。お金の無駄遣いだよ。私のより、他の戦士さん達のイラストの方が良いんじゃない?

……あ。『ドキドキくじイラスト付き』だって。開封するまで中の絵が分からないなんて面白そうだよね。これ買ってみようかな」


ハルは一冊の分厚い辞典のような本を手に取った。

『英雄戦士大百科〜ドキドキくじイラスト付き』


この本があれば、国宝級美貌の戦士「通」にもなれそうだ。

今までハルは彼等を知ろうとも思わなかったが、マゼンタとの不穏な噂に巻き込まれたのも、あまりにも彼等を知らな過ぎたからだ。

この際、誰もが知る戦士情報くらいは掴んでおいた方がいいだろう。



他にも目に留まった本がある。


『貴公子フォレストとその一族 〜魔獣ケルベロス&オルトロスのイラストポスター付き〜』


『白い国の黒戦士』


合わせて三冊の本を選んだ。

自分の本を買ったのは、パラパラとめくってみると、白い国でのハルが写真のようなイラストで載っていたからだ。

隣に立つ双子やアッシュも描かれていたし、チラリと見えた『回転焼き店主の言葉』という見出しも気になった。

自分のアルバムを見つけたような気持ちになって、思わず手に取ったものだった。







武器屋を出て、街の通りに可愛いピンクの建物のカフェを見つけて入ってみた。

お店のスイーツも可愛いピンクづくしだ。


いちごのムースに、桃のケーキ、ピンクグレープフルーツゼリーに、ラズベリータルト、ピンク色のマカロン。女子力高めのスイーツだった。


ハルと双子はいちごパフェを、戦士達はハートのクッキー付きの珈琲をオーダーする。




「ハル様、帰ってから付録を一緒に開けてみましょうね」

「私は、『白い国の黒戦士』という本を見つけて、アッシュ様のお土産の分も買ったんですよ」


双子が嬉しそうにハルに話す。


「私も同じ本買ったよ。パールちゃんもピュアちゃんも載ってたし。私の活躍って書くことがないから、ほとんどイラスト本になってるね」


「ハル様の情報はほとんど出回らないので、見かけた者の情報を元にイラストが描かれるのでしょうね。エクリュ国では毎日街に出ていましたから。

屋台通りは、神秘のベールに包まれた黒戦士の聖地になっていますよ」


「ただ何も話してないだけで神秘のベールがかかっちゃうんだ……」


双子とハルの話に、フレイムは興味を引かれたようだ。


「そんな本があるのか?帰ったら俺にも見せてくれ」

「うん。私の日記みたいな本だったから、そんなに面白くないと思うけど」


「面白そうじゃねえか。他にはどんな本買ったんだ?」

「他には『英雄戦士大百科』と、フォレストさんの本」


ハルの答えにシアンの声が低くなる。


「……どうしてフォレストの本なのですか?」

「え?だってケルベロちゃんとオルトロちゃんのポスターのおまけ付きだったから」

「ああ、そうですか」


『フォレストがオマケだったか』とシアンは納得する。



「戦士大百科なんて、そんな本を買わなくても、俺らの事は直接俺らに聞いたらいいだろ?」

「そうだけど。討伐中に本を読むのもいいかなって思って」

「………そうかよ」


『討伐中に本なんか呑気に読んでるじゃねえよ』と言ってやりたいが、討伐中寝ている事が多いハルに言ったところで意味はないだろう。


『自分達について知ろうとするだけマシか』と思い直して、フレイムは「これも食っとけ」と、おまけに付いているハートクッキーをハルの前に差し出した。








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― 新着の感想 ―
ケルベロス&オルトロスのイラストポスターいいなあ(*´Д`) キリッとしたすました顔してるのかな!? 細川◯かしさんの顔面ポーみひてたいに、毛のもふもふが楽しめるポーチ出ないかしら(*´﹃`*)
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