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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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76.次回の神託の討伐は


ミルキーがまた神に名を呼ばれたそうだ。

つい先程彼は、神託の言葉を聞くために聖堂に向かったらしい。



ドンチャ王子からのその知らせを受けて、戦士達は応接室に集まって緊張の色を見せていた。


ぬいぐるみを膝に置いたハルが英雄達に話しかける。


「新しい討伐の話かな?また戦士さん達みんなの指名が入るのかな?」


「指名が入るかは分からんが、多分次の討伐の話じゃねえか?」


フレイムの言葉にハルは頷く。

ハルも実はそう思っていたからだ。


「もしさ。二回目の討伐みたいに次も参加を選べたら、みんなは参加するの?」


「そうですね。もう討伐も慣れましたし、引き受けると思いますよ」

フォレストが答えると、他の戦士達も同意する。


「まあそうね。私も引き受けるわ」

「僕もそうだな」

「断る必要もねえだろ」


マゼンタとメイズとフレイムも参加を決めているようだ。

「そっか」とハルは頷く。


ハル自身は参加はどちらでも構わないが、もし英雄達が次回の参加を断るなら、ハルも参加を断ろうと思っている。

新たに出会う知らない戦士達と、ログハウス生活を新しく始めるのは気を使うからだ。ケルベロスのいない討伐撮影生活も、寂しすぎて耐えられないだろう。


だけどみんなが参加するなら、ハルも参加で問題ない。

「じゃあ私も参加しよっと」と答えようとした時、シアンも答えた。



「参加を選べるなら、次回私は参加をお断りさせてもらおうと思います」

「え。シアンさん討伐参加しないの?」


意外な答えだった。驚いて聞き返すと、シアンがにこやかな笑顔を見せた。


「私はハルとの結婚生活を優先したいですから。これからのみなさんの活躍は、陰ながら一緒に応援していきましょうね、ハル」

「え……?あ、うん……?」


いつの間にかハルも不参加になっていたらしい。

ハルがいないと神託の討伐ができないわけではないので、それはそれで特に問題はない。


びっくりしすぎて変な返事をしてしまったが、不参加だと決められるならそれでも良いかとハルは頷いた。


「そっか。私は不参加みたい」


ハルの返事に、シアンは満足そうに頷いた。






「………とにかく次の討伐については、ミルキーから神託内容を聞いてから判断しましょう」


ドンチャ王子が「その話はここまでにしましょう」と英雄達を諭し、皆は口をつぐんだ。




「ケルベロちゃんもハニコちゃんも、四人ともみんな今日も可愛いね。よしよし、みんな可愛い良い子だね。

今はおしゃべり禁止だから静かにしておこうね」


シンと静まり返った部屋の中、ハルの話す声だけが響いていた。






「お待たせいたしました」


ミルキーが戻ってくると、部屋の戦士達は緊張した顔でミルキーの言葉を待った。


「神の言葉をお伝えします。神は「次の討伐は待て」と話されています。

今は魔物による世界滅亡の危機よりも、英雄による地獄滅亡の危機の方が、深刻度が高いらしいのです。「ひとまず地獄を落ち着けてから、また神託を下したい」と神は告げられました」


「英雄による地獄滅亡……」

呆然とドンチャ王子が呟く。


「神様、地獄が明るくなったって言ってたもんね。シアンさん、すごいね。ラスボスみたいになってるよ」


「私はハルのために強い男でありたいと思っていますからね」


ハルの言葉にシアンが嬉しそうに頷いた。






笑顔の英雄シアンを、ミルキーは悲しげに見つめていた。


神は確かに憂いていた。

「地獄の鬼の心の傷が深くて……」と伝えた言葉に力が無かった。


しかし英雄シアンにすれば、ただ身を守るためだけの鬼の討伐だったのかもしれない。

あまりシアンを責めるような言葉は伝えるべきではないだろう。


それにシアンを含む英雄達に伝えなければいけない事もある。

ミルキーは神託の続きを話し始めた。


「次の討伐は、地獄が機能するようになってからになりますが、次回も今の英雄達に任せたいとの事です。

今のメンバーであれば、たとえ地獄の復興に時間がかかっても、短時間で効率よく討伐できるはずだと。

――神はそう仰られておりました」


話し終えたミルキーがペコリと礼をすると、ドンチャ王子が頷いた。


「神はまた英雄様達に討伐を託されたようですね。英雄様、また討伐の開始の神託が下った折にはよろしくお願いいたします。

討伐の神託が下る事はしばらく先になりそうなので、英雄様はそれまでご自由にお過ごしください。また連絡いたします」


「それから」とドンチャ王子は言葉を続ける。


「シアン様。次の討伐を終えるまでは、ハルとの結婚はお控え願います」

「は………?」


スウッとシアンに冷たい魔力がまとい出す。


『やはりな』とシアンの反応を予想していたドンチャ王子は、『司令官としてここは譲れない』と、理由を静かに告げた。


「神託の討伐は、英雄様達同士のチームワークが大事です。お二人が結婚する事になれば、チームワークに影響が出るかと思われますので、何卒よろしくお願いいたします」


ドンチャ王子は無難な言葉で理由を告げたが、本当の理由は違う。


おそらく英雄シアンはハルと結婚後、「妻に他の男との共同生活を許す事はできません」とか言って、二度と英雄達とのログハウス生活に戻ろうとしないだろうと予想したからだ。

なんなら「危険な討伐地では、私が妻を護衛します」とか言って、討伐を投げ出しそうだ。


なんとしてでも結婚だけは阻止しなければならなかった。




ドンチャ王子の言葉に眉をピクッと動かしたシアンが、温度のない声で言葉を返す。


「長らくの討伐仲間である私達は、結婚くらいでチームワークが乱れる事などありませんよ」


急に仲間を主張し出したシアンに、英雄達が声を荒げる。


「シアン、テメェは勝手な事言ってんじゃねえぞ!」

「最低でも次の討伐を終えるまでは、結婚は絶対に認めませんよ」

「そうよ。ログハウス内のスキンシップも禁止よ」

「シアンは勝手すぎるぞ!ハルを振り回しすぎだ!」






英雄達がまた騒ぎ出した。

ハルはスッと自分の気配を消す。


英雄達が争うのは勝手だが、自分の名前を出してほしくない。

ここは消えておくのが正解だろう。



戦士達の集まる応接室には、まるで英雄達には関わりのない者のように、微動だにせず静かに英雄達を眺めるだけのハルがいた。




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ヤンデレ夫にオトボケ妻って良い組み合わせな気がする~ ヤンデレだけど平和だ*´ㅅ`)"
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