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呼ばれた私と国宝級美貌の戦士達  作者: 白井夢子
第二章 その後に続く日常
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62.主張されるハッピーエンド


気がついたらログハウス前にハルはシアンと並んで立っていた。



「帰ってきたみたいだね。シアンさん、とりあえずお風呂入ってご飯食べて休んだ方がいいよ。シアンさんはもう五日くらいの時間が経ってるんでしょう?」


「お風呂と衣服の洗濯代わりの浄化魔法道具使ってましたが、臭いましたか?」


シアンがスッとハルから距離を取り、袖の匂いをかいでいる。




さすがは国宝級美貌の英雄だ。

浄化魔法道具で、地獄の中でも清潔なイケメンが保たれていたらしい。


「全然臭くなんてないよ。シアンさんいつもなんか良い匂いしてるし。五日も地獄を彷徨った人には全然見えないけど、さすがにお腹も空いたし疲れたでしょう?」


「あの世界で渡してもらった食べ物を持っていたので助かりました。さすがは私達のお母さんですね。

タピオカドリンクも美味しかったですよ。ハルが好んでいたものを飲めて良かったです」



どうやらこのハイスペックなイケメンは、地獄でタピオカドリンクの美味しさを堪能する余裕もあったらしい。

きっと地獄でチュロスやホットドッグなども美味しく食べてくれただろう。


「そっか。エコバッグをシアンさんに持っててもらって良かったよ。

シアンさんはすごいね、どこにいても余裕じゃん。一日も経ってない私の方がヤバいくらいだと思うよ」


「私達のお母さん」という違和感しかない言葉は流す事にして、ハルもシアンにつられたように、クンクンと袖の匂いをかいでみる。





「ハルもいつもと変わらずお菓子の甘い匂いがしてますよ」

「ぎゃああ!」


いつの間にか近くに立ったシアンに匂いをかがれて、ハルは思わず叫んでしまう。

神様に神聖な聖力を何度もかけてもらったせいか、ハル自身はヤバい匂いを感じなかったが、遊園地で遊んだ後に匂いをかがれたらメンタルがやられてしまう。


「遊園地で遊んだ後なのに!」

「遊んだ後じゃなかったらいいのですか?」


はははと楽しそうに笑うイケメンが眩しい。


『こんな人だったっけ?』とハルがシアンを眺めていると、ログハウスの扉がバン!と開いて戦士達が飛び出てきた。






「「ハル!!」」

「あ、みんな。ただいま」


「ハル、大丈夫か?!今の悲鳴はなんだ?」

「ユニコーンにまた連れられてたんだろう?こんなに長くどこへ行ってたんだ?」

「怪我はしてませんか?」

「ちょっとハル、大丈夫なの?今叫んでたでしょう?」


戦士達がハルを囲んで、口々に質問を浴びせてくる。


背の高い戦士達に囲まれると圧迫感がある――というより、今さっきまで匂いの話をしていただけに、匂いが気になるからあまり近づかないでほしい。


ハルはとりあえず正面にいるフレイムをぐいぐいと押してどけようとするけど、さすがは赤い英雄だ。

ピクリとも動かない。


『赤い奴はダメだ』と、中でも動かしやすそうなマゼンタを選んでぐいぐいと押す。

『桃色の奴もダメだ』と、次はフォレストを押そうとして、シアンに腕を掴まれて引っ張り出された。





「私の妻に近づかないでもらえますか」


ハルの腕を掴んだまま、冷たくみんなに言い放つこの青い男を誰か止めてほしい。


「は?お前、何言ってんだ?」

「シアン、気でも狂ったのか?頭を打ったのか?」

「マゼンタ、この男を治せそうですか?」

「どこに行ったらそんなにおかしくなれるのよ」


――戦士達がザワつき出す。


確かに「妻」発言はハルもおかしいと思う。


「シアンさん、妻はちょっとおかしくない?」

「おかしくないですよ。結婚してますから」

「え!結婚してたっけ?」


確かに神様にカップル認定されたけど、そんな話をしていただろうか。


「ご両親にも挨拶して生涯の仲を認めてもらえましたし、神にも祝福されて揃いの指輪を贈られたでしょう?」

「……あれ?そう言われると、なんか本当に結婚したみたいになってるね」

「結婚してますからね」



ハルの左手の薬指にはめられているのは、神から贈られた、繊細な光に包まれている美しい指輪だ。

主に地獄滅亡阻止目的の指輪だと思っていたが、これは結婚指輪だったのだろうか。




「今回の神託の討伐が終わったら、改めて式を挙げましょう」


爽やかに笑うイケメンの情報が遅れている。


「シアンさん、今回の討伐はもう終わってるんだよ」

「え?そうなんですか」

「うん。討伐が終わったから、神様に呼ばれたんだよ。ほら、一昨日のユニコちゃんとケルベロちゃんと私で、すごい攻撃してたでしょう?あの時ラスボスも消し去られちゃったんだって。昨日の大量の魔獣は、次の討伐分みたいだよ」


「次の?……よく分かりませんが、ハルは元の世界に行く前も神に会っていたのですね」

「うん。そういえば私の話全然してなかったよね」


「そうですね。私の話ばかりで―」

「待てよ」




ハルとシアンの会話に固まっていたフレイムが言葉を挟んだ。


「なんでお前らの話も噛み合ってねえんだよ。聞きたい事は色々あるが、ハルは元の世界に行ってたのか?

ハルにとっては、ここを出たのは昨夜の話なんだな?

ミルキーに神託が下ったから、俺らも討伐が終わった事は知ってたが、なんでシアンは何も知らねえんだよ。一緒にいたんじゃねえのか?」


「あ、うん。ずっと一緒ってわけじゃなかったんだ。元の世界で家族と友達といた時に、シアンさんが地獄経由で迎えに来てくれたんだよ。挨拶してすぐ帰ったし、あの世界で一緒にいた時間って30分くらいかな?」

「そのくらいでしょうね」


「……そんな時間で、なんでハルの両親に結婚の挨拶なんて事になんだよ」

「シアンさんを旅仲間だってみんなに紹介したら、お父さんが「結婚前の男女が一緒に旅するなんて、責任は取ってくれるのか」って言い出してさ。シアンさんが適当に話を合わせてくれたんだよ」


「適当じゃないですよ」

すかさずシアンが断りを入れた。


どうやら適当な話ではなかったようだ。

あのタイミングでの適当じゃない挨拶はおかしい気はするが、「あ、うん」とハルは適当に頷いておく。





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― 新着の感想 ―
潔癖だけど、他にはなびかないシアンさんが相手になって良かった。 ピンク腐れチン野郎には、痛い目を見て欲しい。
シアンの愛が重くて気持ち悪い、最高です。 カップルリングくらいに思ってたら読者も気づかないうちに結婚していた。 シアンの言葉が嘘はないけど本当でもない。立派な詐欺師のなれますね。 シアンと同じく常識…
グイグイぐいぐいくる〜シアンさん 笑 ハルの適当にながす癖を逆手にとって既成事実をつくりあげていってますね。
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